2021.09.27 生保協会 定例会見、新型コロナの取組報告書作成へ 支払保険金・給付金は累計1千億円に

生命保険協会の高田幸徳協会長は9月17日、東京都千代田区の同協会会議室で定例会見を開いた。会見では主に、21年度に取り組みを進める①新型コロナウイルス感染症への生保業界の取り組みに係る報告書の作成②保険教育動画コンテンツの作成③SDGsシンポジウムの開催―の三つについて説明した。この他、新型コロナウイルス感染症に関する業界全体の特別取り扱いの申し込みや保険金の支払い状況などについて報告した。

 会見の冒頭、高田協会長は、直近の新型コロナウイルス感染症に関する業界全体の特別取り扱いの申し込みや保険金等の支払い状況について報告。それによると、2020年3月~21年8月時点で、保険料猶予期間の延長は約36万4000件、新規の契約者貸付に対する利息減免は約97万6000件、貸付金額は約6252億円となった。
 また、同じく死亡保険金は1万2159件で約745億3000万円、入院給付金は30万1850件で約303億8000万円の支払いがあったと報告した上で、「感染者増加に伴い、死亡保険金と入院給付金額は増加傾向だが、生保会社の収支に与える影響は限定的であるため、保険金等の支払いに関する問題は発生しない」とした。
 この点について、新型コロナウイルスを直接の原因とする21年4~8月までの入院給付金と死亡保険金額の合計は、業界全体で約567億円となっており、20年3月~21年3月の約480億円を上回っているものの、20年度の業界全体の保険金・給付金の合計額は約8.6兆円であることから、生保会社の財務や支払いへの影響は軽微なものとの見解を示した。
 高田協会長は「引き続き感染拡大は予断を許さない状況であるため、動向は注視していく。今後も罹患(りかん)したお客さまに対して迅速かつ適切に支払いを行うことで、生保会社の使命を果たしていきたい」と述べた。
 引き続き、21年度の主な取り組みについて説明。一つ目の新型コロナウイルス感染症に対する業界取り組みをまとめた報告書の作成については、これまでの協会と会員各社の取り組みを集約し、各社のさらなるサービス改善に向けたヒントとして活用する他、将来のパンデミック発生時の参考になる内容にしていくとした。
 二つ目の保険教育用のアニメーション作成については、これまで協会が作成したコンテンツを踏まえ、中学生ぐらいの年代にも分かりやすい内容にすることに加え、作成したアニメーションは協会のユーチューブチャンネルなどを通じて、幅広い層に発信していく考えを示した。
 三つ目のSDGsシンポジウムの開催については、「健康寿命延伸・高齢社会への対応」と「サスティナブルファイナンス/ESG投融資」をテーマに、オンラインも活用しながら実施していくとした。
 この他にも、気候変動に関するシナリオ分析ハンドブックを作成し、気候変動リスクと機会に関するシナリオ分析を行う際の手引きの提供を目指す他、保険金等の支払い時に家族や大切な人を亡くし深い悲しみを抱えている顧客に対する、心情に寄り添った対応やマナーを解説するグリーフケアに関するハンドブックを作成し、業界全体でサービスのさらなる向上につながる情報提供を促進していくとした。
 質疑応答では、記者からの「22年4月の成年年齢引き下げに伴う協会としてのガイドライン改正や金融リテラシー教育などの対応について聞きたい」という質問に対して、「成年年齢の引き下げに伴い、18歳が契約する場合の親権者の同意が不要になる。本件に関する実務的な対応は各社が適切に対応を進めるものであり、協会としてのガイドライン策定などの予定はない」と回答。
 協会としては、若年層の金融リテラシーや生命保険への理解を高めていくことが重要との考えから、これまでも協会として継続的に取り組みを進めており、20年度には高校生を対象とした保険教育コンテンツを作成して、授業などで活用されているとした。
 今年度は対象をさらに幅広くし、中学生ぐらいの年代にも理解できるアニメーション動画を作成することをあらためて強調し、「こうした取り組みを通じて、社会保障について理解してもらい、生命保険の必要性や生活設計の重要性などを浸透させていきたい」と考えを示した。