2021.09.24 損保協会定例会見 中小企業リスク実態調査結果を説明、27%の企業が被害経験

損保協会は9月17日、業界紙向けの定例記者会見を行い、同協会が実施した「中小企業のリスク意識・対策実態調査2021」の調査結果を説明した。現状では中小企業の約6割がリスクの増加を感じている一方、3割以上が未対策で、4社に1社は何らかのリスクにより被害の経験があることを報告した。また、9月16日に日銀記者クラブで行われた舩曵真一郎協会長の会見では、新型コロナウイルス感染症や自然災害対応、気候変動対応方針の策定などを報告したことも説明した。

 企業は、近年多発している異常気象による自然災害や新型コロナウイルス感染症の流行、サイバー攻撃などさまざまなリスクに晒されている。また、従業員による情報漏えいやパワハラ・セクハラといった企業の内部で発生する要因によって損害賠償請求を受けるなどのリスクも抱えている。
 こうした現状を踏まえて損保協会では、中小企業の経営者と従業員1031人を対象に、企業を取り巻くリスクに対する意識・対策調査を実施。企業を取り巻くリスクについて、約6割が「近年はリスクが増えていると思う」と回答した一方、3割以上が「特に対策/対処していない」と回答しており、また、「リスクが発生する可能性は低いと考えている」という回答も11%以上あったことから、リスクに対する意識の低さもうかがえたと指摘した。
 さらに、勤め先企業で「何らかのリスクによって被害を受けたことがあるか」との質問に対しては27.0%が「ある」と回答し、4社に1社は被害経験があること、その被害額が1億円以上に上るケースもあること、中小企業が損害保険で被害を軽減したいリスクは「自然災害」が最多で、次いで「売上の減少」「感染症」が多く挙げられたことなどを説明した。
 日銀記者クラブでの会見では、舩曵協会長が新型コロナウイルス感染症に対する取り組みについて、「新型コロナウイルス感染症対策に関する基本方針」を改定して変異株の広がりを想定した感染対策強化を打ち出したことや、会員各社では保険料払込猶予などの特別措置期間を10月末まで延長したことなどを報告した。
 また、「令和3年7月・8月大雨」の被害状況については、9月3日現在で事故受付件数が約3万1000件、支払保険金が約295億円に上っているとし、4月に稼働した損害査定の共同取り組みの枠組みの下、要請があった会員各社に被災地の衛星画像データや浸水深データを提供し、被害状況の早期確認と迅速な保険金支払いにつなげているとした。
 なお、自然災害に便乗した特定の住宅修理業者に関し、昨年度に消費生活センターに寄せられた相談件数が約5400件に上ったが、今年度はそれを上回る勢いで苦情が倍増していることを指摘。同協会では、被災地域の主要紙に掲載したお見舞い広告に注意喚起メッセージを載せるとともに、消費者庁・警察庁・国民生活センターの協力を得て新たな注意喚起チラシを83.5万部作成し、会員各社などを通じて顧客に配布しているとした。加えて、10月からは保険料控除証明書にも注意喚起情報につながるQRコードを掲載するという。
 気候変動対応に関しては、7月15日に方針を策定・公表したと説明、会員各社の取り組みを支援するため、社員向けの勉強会を実施しているとした。また、会員各社向けに気候変動対応に関するニュースレターの配信を開始するとともに、顧客向けには9月下旬に電子パンフレット「気候変動ハンドブック」を発刊することも明らかにした。
 また、非対面・非接触・ペーパーレスの推進に関して、保険料控除証明書の発行業務を共同化するシステムを10月にリリースし、マイナポータルとの連携も開始することを報告した。今後も、社会のデジタル化、ペーパーレス化が一段と進むことを見据えて、保険会社の生産性アップにもつながる事務の特定と見直しを進めることとし、協会に「事務検討PT」を9月に立ち上げ、会員各社とともに業務プロセスの効率化を加速していくとしている。
 定例会見ではこの他、ハザードマップの活用促進に向けた新たなツールとして、ハザードマップに関する「水災害編」「地震災害編」の2種類のPDFチラシを作成したことや、全国統一防火標語の募集を開始したこと、最新の「全国交通事故多発交差点マップ」を公表したことなどを報告した。