2021.06.16 生保協会 生命保険契約照会制度7月1日開始、新たな日常でも「変わらぬ安心」届け続ける

 生保協会の根岸秋男協会長は6月11日、同協会会議室で協会長として最後の定例会見を行った。会見では、死亡時や認知判断能力低下時に生命保険契約の有無を協会を通じて全社に照会することができる「生命保険契約照会制度」の7月1日からの運用開始を発表した他、同日開催された理事会で、1年間の社会的責任活動を記載した「SR報告書2021」の取りまとめを行ったことなどを報告した。この1年を振り返った根岸協会長は「コロナ禍という不安な時代にあっても、変わらぬ安心をお届けするという生命保険の社会的使命を何としても果たさなければならないという強い決意を持って、この1年、協会運営に全力で取り組んできた。一方で、コロナ以外の課題についても大いに議論を行い、生命保険契約照会制度の創設といった成果に向けての歩みも着実に進めてきた。関係各位からお力添えを賜ったおかげで、何とか充実した協会運営を行うことができたと思う」と総括した。

 7月1日に運用が始まる「生命保険契約照会制度」は、人生100年時代の到来を踏まえた高齢社会対応の一環として進められてきたもので、特に認知症への取り組みを意識した施策となっている。
 これまで、契約者本人が死亡した場合や、認知症になった場合、生命保険の加入状況が分からず、家族が保険金を請求できないといったことが課題となっていた。そこで、東日本大震災の時に創設され、以後、災害時に活用されてきた契約照会制度を平時でも活用できる仕組みを検討し、「生命保険契約照会制度」を設立した。
 根岸協会長は「(制度はできたが)お客さまには、保険契約について日頃から家族間で情報を共有していただくことや、事前に代理手続きの登録をしてもらうことも大事。われわれとしてはそういったことを、契約者だけでなく、被保険者や受取人、あるいはその家族に対して周知活動を個別にしっかりやっていくということが重要だと考えている」との考えを示した。
 人生100年時代への対応としては、高校生に対する教育環境の整備に取り組み、教員向けにモデル授業の動画を公表したことも併せて紹介した。
 また、生命保険業界では、新型コロナウイルス感染症対策として、昨年3月以降、緊急事態宣言の発令といった状況変化を踏まえつつ、適宜、保険料払込猶予期間の延長や、コロナが原因で入院した場合のスピーディーな保険金の支払いに向けた必要書類の一部省略といった簡易な取り扱いを、それぞれ業界を挙げて実施してきた。
 この他、会員各社の経営判断により、新規契約者貸付に対する利息の減免やコロナへの災害割り増しの適用、自宅やホテルでの療養におけるみなし入院の取り扱いなども行ってきた。
 こうした特別取り扱いは、昨年3月以降の累計で、保険料払込猶予期間の延長が約32万1000件、新規契約者貸付の利息減免が約97万5000件、貸付金額が約6200億円となっている。
 また、死亡保険金や入院給付金として支払ったケースについては、累計で約15万3000件、金額は約560億円となった。こうした数字について根岸協会長は「この1年間、生命保険業界としては、お客さまのために精いっぱいの取り組みを行うことができたのではないかと感じている」と語った。
 コロナ禍への対応では、こうした特別取り扱い以外にも、エッセンシャルワーカーの一翼を担う者として、保険会社各社は顧客や従業員のコロナ感染の防止および日常業務の継続の両立という課題に注力してきた。
 また、新たな働き方、業務の進め方といった観点からは、テレワークや各種業務のデジタル化、いわゆるデジタル・トランスフォーメーションについても大きく進展した1年となった。
 同協会でも、会員各社から収集した好取り組み事例などを盛り込んだガイドラインの徹底に取り組んだ他、会員各社においてもリモート対応に関する顧客ニーズに対応するべく、非対面形式でのコミュニケーションを充実・強化するなど、さまざまな創意工夫を凝らしてきた。
 業界のさまざまなコロナ対策について語った根岸協会長は「最近では、わが国でもワクチン接種が進展するなど、徐々に明るい兆しが見えてきているが、引き続き業界を挙げて、コロナの時代における生命保険業界の役割発揮のあり方について、真摯(しんし)に模索し続けてまいりたい」とした。
 今後の生保業界の課題としては、コロナ禍への対応だけでなく、認知症への取り組みや保険教育といった人生100年時代への対応も待ったなしの状況が続いていると強調。少子高齢化のさらなる進展に伴って、これらの課題がますます顕在化し重要になってくると思われる以上、この分野についても中長期的な課題として、業界全体で腰を据えて取り組んでいかなければならない、との考えを示した。
 この他にも、SDGsやESGといった近年注目を集めている課題も含め、協会では顧客本位の業務運営の観点から、さまざまな取り組みを検討し、また実行しているが、今後も、各社経営の参考となる有益な情報を提供することなどを通じて、会員各社の取り組みの底上げを図るため、協会ならではの機能を果たしながら、業界に期待される社会的役割を果たしていく必要がある、とした。
 バトンを引き継ぐ高田幸徳次期協会長に対しては「いかなるときもお客さまに変わらぬ安心をお届けするとの生命保険業の社会的使命を果たすため、これまでの協会の取り組みをさらに力強く前進させていただきたい。新しい発想の下、リーダーシップを発揮いただきながら、生命保険業界の健全な発展に向けてご尽力をいただけるよう心より祈念している」とエールを送った。