2021.06.15 金融庁がパブコメ結果を公表 金融サービス仲介業11月に開始

 金融庁は6月2日、2月22日に公表し3月24日までパブリックコメントに付していた令和2年金融商品販売法等改正に係る政令・内閣府令案等や「金融サービス仲介業者向けの総合的な監督指針」について、パブリックコメントの結果を公表した。これらの内閣府令等及び告示は6月2日付で公布され、監督指針と併せて、11月1日から施行・適用されることが決まった。新しい金融サービス仲介業が11月からスタートする。

 金融庁では、2020年6月5日に成立した「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下、金サ法)の施行に伴い、金融サービス仲介業に係る制度を整備するため、関係政令・内閣府令等の規定の改正等を行った。
 ▽金融サービス仲介業としての仲介の対象に含まれない金融サービス(顧客に対し高度に専門的な説明を必要とする金融サービス)を定める▽金融サービス仲介業に係る登録手続を整備する▽金融サービス仲介業者が供託等をしなければならない保証金の額を定めるほか、保証金に係る権利の実行の手続を整備する▽金融サービス仲介業者の顧客に対する情報提供等、利用者保護のためのルールを整備する▽金融サービス仲介業者の監督上の評価項目等を体系的に整理した「金融サービス仲介業者向けの総合的な監督指針」を策定する―が主な内容。
 同庁によると、パブリックコメントは64の個人および団体から延べ395件寄せられた。公表された「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」は、法令関係が192件、監督指針関係が174件の合計366件となっている。
 金サ法上の金融サービス仲介業としての仲介の対象に含まれない金融サービス(顧客に対し高度に専門的な説明を必要とする金融サービス)は、「金融サービスの提供に関する法律施行令」「金融サービス仲介業者等に関する内閣府令」で、預金等媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務、貸金業貸付媒介業務についてそれぞれ具体的に定められている。
 保険媒介業務における金融サービス仲介業の対象とならない「顧客に対し高度に専門的な説明を必要とするもの」としては、▽特定保険契約(変額保険、解約返戻金変動型保険及び外貨建保険に係る保険契約)▽火災保険(家財保険を除く)に係る保険契約▽再保険契約▽法人その他の団体等を保険契約者とする保険契約▽団体保険に係る保険契約(被保険者に対する行事の実施等に付随して引き受けられる当該行事の実施等と関連性を有する保険契約を除く)▽ 転換契約▽基礎率変更権付の第三分野保険▽生命保険で1000万円、第三分野保険で600万円、損害保険で2000万円を超える保険金の支払又は損害のてん補を約する保険契約(ただし、年間保険料が5000円以下のものを除く)▽終身保険に係る保険契約―とされた。
 取扱商品・サービスの範囲に関するパブコメは、預金等媒介業務が10件、有価証券等仲介業務が17件であったのに対し、保険媒介業務は30件と最も多かった。コメントの内容は確認的なものが多かったが、同庁は「金融庁の考え方」で、「…なお、保険媒介業務の対象となる保険契約の範囲については、商品設計の複雑さや日常生活への定着度合い等に加え、「高額・長期の保険契約の締結の仲介に当たっては、一般に、個々のリスクと顧客意向の見極めや商品内容等の顧客への説明を一層丁寧に行うことが重要となる」との指摘があることも踏まえ、保険金額の総額や保険期間にも着目した上で、顧客に対し高度に専門的な説明を必要とするものと認められるかどうかの観点から定めています」と説明している。
 金融サービス仲介業者が供託しなければならない保証金は、「金融サービスの提供に関する法律施行令」で、最初の事業年度は1000万円、それ以降は1000万円に前事業年度の年間受領手数料(金融サービス仲介業務に関して受領した手数料、報酬その他の対価を合計した金額)の5%(10万円以下切り捨て)を加えた額とされた。一定の要件で金融サービス仲介業者賠償責任保険契約を締結することも認められている。保証金の供託に関しては7件のコメントが寄せられたが、同庁は「金融庁の考え方」で「保証金の額は、▽金融サービス仲介業者については仲介に係る損害賠償責任を相手方金融機関が負う仕組み(いわゆる所属制)が採用されていないこと▽顧客保護等の観点から既存の仲介事業者に求められる保証金等の水準▽金融サービス仲介業の対象となる商品・サービスの範囲が限定されていること▽金融サービス仲介業への事業者の参入を通じたイノベーションの促進や利用者利便の向上の重要性▽一つの登録で複数の分野の商品・サービスを取扱可能とした制度趣旨等を総合的に勘案して設定しています」と説明している。
 金融サービス仲介業に係る行為規制では、誠実公正義務、情報の提供、手数料等の開示、社内規則の整備等、業務が運営されるための十分な体制の整備、個人顧客情報の安全管理措置、返済能力情報の取扱い、特別の非公開情報の取扱い、電子計算機を利用する場合の相手方金融機関との誤認防止、委託業務の適確な遂行を確保するための措置―が規定されている。行為規制(共通)に関するパブコメは26件あった。
 「金融サービス仲介業者向けの総合的な監督指針」に関するパブコメでは、保険業法における保険募集人・保険仲立人規制との比較によるコメントが多く寄せられた。コメントの指摘に従って、文言の修正が行われた箇所も数カ所に上る。