2021.06.17 損保協会定例記者会見 第9次中期基本計画始動、災害激甚化で気候変動対策さらに注力

 損保協会は6月11日、業界紙向けの定例記者会見を行い、前日に日銀記者クラブで行われた広瀬伸一協会長の会見内容を報告した。記者に1年間の振り返りを聞かれた広瀬協会長は、新型コロナウイルス感染症への同協会の対応や、20年度の重点取り組みとして①自然災害への対応力強化②金融・損害保険リテラシーの向上③業務の共通化と標準化の推進―に取り組んだことを挙げ、「損保業界全体としてコロナ禍でも重要業務の継続と感染拡大防止の両立に取り組んできた」と述べた。

 同協会の20年度の重点取り組みとしては、広瀬協会長が就任時の取り組みの柱として掲げた人工衛星を活用した損害調査により業界共同で浸水の深さと範囲を確認する仕組みを構築したことを挙げた。地震保険では、21年福島県沖・宮城県沖を震源とする地震への対応として、顧客が損害を申告する「自己申告方式」の採用も行ったとした。また、金融・損害保険リテラシーの向上に向けて、ぼうさい探検隊アプリの活用やハザードマップの普及促進も実施した。
 会員各社では、新型コロナウイルス感染症への対応として、テレワークによる感染拡大防止や顧客に対して継続契約手続き、保険料支払いの猶予などの特別措置を実施。商品開発や新たな補償の案内に取り組んだとした。
 同協会の21年度からの第9次中期基本計画では、「持続可能なビジネス環境の整備」「災害に強い社会の実現」「損害保険リテラシーの向上」を重点課題に挙げる。さらに業務の共通化・標準化で、21年度中に損害保険料控除証明書に関する共同システムの構築や、共同保険に関する会員会社間の情報交換のペーパーレス化などに取り組む。
 その後、記者から「1年間の振り返り」「火災保険の課題」について質問があった。広瀬協会長は1年間の振り返りとして、最も印象深かったこととして、「個社ではコロナ禍における平時の損害保険業務と大規模自然災害の発生時の有事の対応に苦心したこと」を挙げ、感染拡大によりさまざまな制約がある中、平時ではデジタル化やテレワークなどを積極的に活用して新しい働き方を取り入れたこと、また有事では感染拡大防止を図りながら迅速かつ適切に保険金支払いを実行したことなどを語った。
 損保業界全体では事故受付、保険金支払い、契約締結の三つを重要業務として遂行したとして、「会員各社が非対面・非接触やキャッシュレスなどを推進し、顧客対応の維持向上に務めたことで、損保業界全体のレベルアップにつながった」と述べた。
 火災保険の課題については、火災保険は個社商品と前置きしつつ、「過去10年にわたり恒常的な赤字が続いており、その要因として自然災害と建物の老朽化による水漏れ損害の増加が挙げられる。また、自然災害が多くなることで再保険手配のコストが増加し、異常危険準備金の残高も減っている」と話した。また、今後も地球温暖化などにより自然災害の多発化・激甚化の傾向は続くため、収支も厳しい状況が続くとの見通しを示し、さらに気候変動対策に注力する必要があるとした。
 会見ではこの他、20年度事業報告及び決算、役員の選任、定時社員総会の開催、定時社員総会を書面開催することを説明した。