2020.06.22 ■財務省・関東財務局 “代理店ヒアリング”実施結果を公表、体制整備の改善・未改善事例紹介[2020年6月19日]]

 財務省・関東財務局は6月19日、保険代理店における新たな保険募集ルールの定着状況等を確認するために昨年10月から行ってきた保険代理店へのアンケート調査とヒアリング(対話)の実施結果を公表した。自らの規模や業務特性に応じた体制を整備し、継続的に改善している保険代理店が一定数認められた一方で、法令施行時に一度整備した体制について、その後の経営環境や顧客ニーズの変化などに応じた改善や見直しが十分に行われていないケースがあるとし、改善・未改善それぞれの事例を多数紹介した。改善が不十分な要因として、法令等に基づく保険募集ルールの本質をしっかりと理解していない点などを指摘した。

 代理店ヒアリングの実施結果は、「保険代理店との対話を通じて『見て、聞いて、感じた』こと。」と題した18ページにわたる文書で公表された。
 冒頭に保険代理店との対話の目的と意義が記されており、2016年3月に施行された改正保険業法から3年以上が経過し、新たな保険募集ルールが募集現場でどの程度定着しているのか、保険代理店が整備した体制の実効性は保たれているのか、また、どのような「顧客本位の業務運営」が行われているのかなどを確認するために実施したと説明。とりわけ体制整備については、必要に応じて改善に向けた態勢を整備するために、まずは保険代理店自らが実効性を確認しているか、また、保険会社等が行う監査・点検を態勢の見直しに活用できているかなどに主眼を置いたとした。
 加えて、関東財務局ではこれまで、保険募集の現場に出向いて、直接、保険募集人(代理店)と対話する機会が法令等に基づく立ち入り検査以外になかったことから、今回、保険代理店との間で新たな対話の機会をつくり、保険代理店における保険募集の実態や体制整備の状況等に関する対話を通じて相互理解を深める意図があったことも明らかにした。
 アンケート調査・ヒアリングは、関東財務局の理財部金融監督第4課、理財部金融証券検査官、財務事務所担当課が実施主体となった(ヒアリングについては一部、金融庁と合同で実施)。アンケートの対象は、関東財務局管内(東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木、茨城、新潟、山梨、長野の1都9県)に所在する社員数10人以上300人未満の119代理店(生保系79店、損保系40店)で、都県による偏りがないように代理店を選出した。また、ヒアリングについては、アンケート調査の回答を基に61代理店(生保系39店、損保系22店)を選び、昨年10月から2月末まで実施した。
 全体的な総括としては、「自らの規模や特性に応じた体制を整備している保険代理店が一定認められた。一方で、改正保険業法の施行から3年が経過する中で、法令施行時に一度整備した体制について、その後の経営環境や顧客ニーズの変化などに応じた改善や見直しが、必ずしも十分に行われていない事例も見受けられた」と説明。その要因として、顧客のための保険募集を実現するために、常に「お客さまのためにできること、必要なことは何なのか」といった顧客本位の視点を持つことを意味する“法令等に基づく保険募集のルールの本質”をしっかり理解していないことから、その後の環境変化に対応した改善等が図られていないと指摘した。
 また、ルールの本質に対する十分な理解の有無について、「時間」「立場」「特性」といったポイントに基づいて説明し、体制整備を継続的に改善している保険代理店の事例と、改善が不十分な保険代理店の事例をそれぞれ紹介した。
 「時間」では、改正保険業法の施行により新たに創設されたルールを踏まえた対応が定着している一方、必ずしも時間の経過や環境変化等に見合った体制の継続的な見直しが図られておらず、適切な業務運営が担保されていないケースが見受けられたとし、営業基盤を安定させるための業容拡大に合わせた体制整備が伴っていない事例や、自らの課題を認識しているが、体制整備に向けた具体的な取り組みが実行できていない事例などを挙げた。一方で、実効性のある取り組みや顧客の声を業務改善に生かしている事例なども紹介した。
 「立場」については、保険会社と保険代理店、本社と営業拠点(支店・支社)、営業推進部門とコンプライアンス部門といった立場の違いによって、ルールの本質に係る解釈や考え方に相違が生じていることなどから、適切な意思疎通が行われていない事例がある半面、保険代理店が保険会社との適切な意思疎通の下、自らの考えで特性に応じた体制整備を行っているケースがあるとした。
 また、「特性」では、保険代理店の規模や特性に応じて行われるものである体制整備義務の考え方に沿って、地域性や事業・業務特性(専業/兼業、訪問販売/保険ショップ)などに応じて事業・業務を展開・運営しているいくつかの保険代理店の事例を紹介した。
 この他、「品質」を重視してPDCAサイクルを活用した体制整備を図っている保険代理店のケース、昨秋の台風15号・19号での顧客対応を通じて保険募集の現場で働く人たちのプロフェッショナルな姿勢に気付きを得たエピソード、また、「顧客本位の業務運営」に関するヒアリングで、顧客と向き合い、寄り添う姿勢を感じることができた事例なども紹介した。
 最後に保険代理店に対して、「常に『お客さまのためにできること、必要なことは何なのか』という顧客本位の観点から、真剣に考えて、業務品質を高めることで、顧客に対して、より品質の高い保険サービスを提供できるよう、一層の体制整備を図っていただけることを期待している」とする一方で、今回のアンケートと対話を通じて、「行政として、顧客本位・国民のために何をなすべきかをあらためて考えさせていただく良い機会になった。それら全ての声をしっかり受け止め、今後の行政の運営に生かしていきたい」との考えを示した。