2020.06.16 ■6月12日公布、1年半以内施行 法案成立「金融サービス仲介業」創設へ[2020年6月12日]

 「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会で成立し、12日に公布された。3月6日、第201回国会に法案が提出され、5月28日に衆議院通過、6月5日に参議院本会議で原案通り可決・成立したもの。このうちいわゆる金融サービス仲介法制については公布から1年6カ月以内の施行となる。国会では衆議院財務金融委員会で17本、参議院財政金融委員会で19本の付帯決議が採択された。

 「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」は、金融サービスの利用者の利便の向上と保護を図るため、金融サービス仲介業の創設、第一種資金移動業等の種別を設ける等の資金移動業に関する規制の整備等の措置を講ずるもの。いわゆる金融サービス仲介法制として、「金融商品の販売等に関する法律の一部改正」で、①金融商品の販売等に関する法律の題名を「金融サービスの提供に関する法律」に改める②金融サービス仲介業を、預金等媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務又は貸金業貸付媒介業務のいずれかを業として行うこととし、それぞれの業務について、顧客に対し高度に専門的な説明を必要とする金融サービスの取扱いを含めないこととする③金融サービス仲介業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行ってはならないこととする―と改正した。
 また、いわゆる決済法制として、「資金決済に関する法律の一部改正」で、①金銭債権を有する受取人からの委託により、債務者から弁済として資金を受け入れ、受取人に当該資金を移動させる行為等であって、受取人が個人であること等の一定の要件を満たすものは、為替取引に該当するものとする②資金移動業に、第一種資金移動業、第二種資金移動業及び第三種資金移動業の種別を設ける③資金移動業者は、第一種資金移動業を営もうとするときは、業務実施計画を定め、認可を受けなければならないこととする―と改正した。
 その他「金融商品取引法の一部改正」で、金融商品取引業者等による店頭デリバティブ取引情報の報告について、取引情報蓄積機関に当該情報を提供する形に一本化する―とする改正も行った。
 金融サービス仲介法制は、情報通信技術の発展により、オンラインでの金融サービスの提供が可能になり、就労や世帯の状況が多様化する中、利用者が、さまざまなサービスの中から自身に適したものを選択しやすくすることが重要となってきた一方、現在、銀行・証券・保険すべてのサービスをワンストップで利用者に提供する仲介業者は5者のみ(2019年12月末)というところから、あらためて「金融サービス仲介業」を創設することになったもの。
 金融商品販売法を金融サービスの提供に関する法律に改称し、「金融サービス仲介業」を創設し、業態ごとの縦割りだった既存の仲介業と異なり、一つの登録で銀行・証券・保険すべての分野のサービスを仲介可能とするなど、ワンストップ提供に最適化する。
 利用者保護のための主な規制としては、さまざまなサービスを取り扱えるよう、金融サービス仲介業には、特定の金融機関への所属を求めない代わりに、取扱可能なサービスの制限や利用者財産(サービス購入代金など)の受入禁止、保証金の供託義務により利用者保護を図る。また、利用者保護等の規制は、銀行分野・証券分野・保険分野で異なることがあるため、取り扱うサービスの分野に応じ、必要な規制を過不足なく適用するとされ、保険分野では、①自己契約の禁止②告知の妨害の禁止③不適切な乗換募集の禁止―などがある。