2020.06.17 ■生保協会 定例会見、コロナ対応で未納保険料に追加措置[2020年6月12日]

 生保協会の清水博協会長は6月12日、同協会会議室で協会長として最後の定例会見を行った。直近の課題となっている新型コロナウイルス感染症に関する同協会の取り組みを説明し、新型コロナウイルス感染症の影響で保険料の払い込みが困難な顧客に対する保険料払い込み猶予期間の延長を実施したことや、ホテルや自宅等で療養を受けた人々に対して入院給付金を支払うためのガイドラインを作成したことなどを紹介した。また、延長後猶予期間の末日までに猶予期間分の保険料全額の払い込みが困難な顧客のために、さらに払込期間を延長する追加措置を実施したことを報告。協会長としての1年を振り返った清水協会長は、「顧客本位の業務運営を進めることに徹底して、かつ全力で取り組んだ1年だった」と総括した。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、生保協会では協会対策本部を立ち上げ、対策を実施してきた。主な取り組みとしては、①保険料払い込みの猶予期間を原則9月末まで延長する特別取扱い②新型コロナウイルスに感染した人のうち、医療機関ではなく、ホテルや自宅などで療養を受けた人に対して入院給付金を支払うためのガイドラインの作成③医療従事者の事務負担軽減を目的とした業界統一の簡易な証明書様式の作成―の3点がある。
 こうした業界の取り組みに加えて、会員各社では、新規の契約者貸付に関する利息の免除や、新型コロナウイルスにより死亡した場合、災害死亡保険金等の支払い対象とすること、医療機関への通院に代えて自宅等で医師による電話診療やオンライン診療を受けた場合でも通院給付金の支払い対象とする、といった取り組みがみられた。
 各種取り組みの活用状況について報告した清水協会長は、保険料払い込み猶予期間の延長について、生保業界全体で、現在までに約17万件、新規の契約者貸付については取り組みを実施している26社について、約70万件、約4060億円を新たに貸し出していると説明。
 日本生命では、保険料払い込み猶予期間の延長に関して5月末時点で1万5000件の申し込みがあり、このペースで申し込みが増えた場合、東日本大震災のときの3万6000件と同程度の件数になるとの見込みを示した。新規の契約者貸付についても、5月末時点で16万件の申し込みがあったことを明かし、すでに東日本大震災のときの2万件の8倍に達していると述べ、「新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が幅広く及んでいることをあらためて認識した」と語った。
 こうした状況を踏まえ、同協会では、未納の保険料について、9月末までに払い込みができない場合、2021年4月末まで7カ月間延長し、分割払い等の方法で払い込める追加措置を開始することを表明した。
 この他、同協会では、医療従事者への支援として、日本医師会、日本看護協会、その他感染拡大防止に取り組む団体等に助成を行うクラウドファンディングに過去最高額の総額10億円の寄付を行ったことも明らかにした。
 続いて、この1年間の協会独自の取り組みを振り返った清水協会長は、人生100年時代における生命保険業界の役割に係る報告書と、保険教育の推進に向けた小学生向けまんがコンテンツを作成したことを報告。
 まんがコンテンツについては、全国の小学校に約2万2000部、公立図書館に約3200部配布した他、デジタル版も公開している。
 記者から、この1年間の振り返りと根岸秋男次期協会長に継続的に進めてほしい取り組みについて問われた際には「この1年間、協会長を務める中で、生命保険協会に対する視線は実際に大変厳しいものであったとあらためて感じている」と述べ、この間の出来事として、外貨建て保険の苦情の増加について国民生活センターから2回目の指摘を受けたことや、業界内で金融庁から不適正な募集行為等について行政処分を受けた会社があったことなどを挙げた。
 こうした課題について、同協会では、19年9月に顧客本位の業務運営に向けた会員各社の体制や取り組みについてアンケートを実施し、アンケートから得られた気付きなどを取りまとめ、会員各社にフィードバックすることで会員各社の顧客本位の業務運営の一層の高度化を推進。外貨建て保険の苦情削減に向けては、金融機関によるアフターフォローの強化や、適合性確認の強化に向けて、銀行業界にベストプラクティスの提供を実施した。この他にも、4月にはガイドラインの改正を行い、募集人教育の向上のため、外貨建て保険に関する教育の標準化を図るとともに、外貨建て保険販売資格試験を導入した。
 代理店手数料に関しては、代理店手数料の評価基準に業務品質を加える取り組みを会員各社で進める中、代理店の業務品質のあり方についてより調査研究するため、4月に協会内にスタディーグループを立ち上げ、検討を進める体制を整えた。
 清水協会長は、「顧客本位の業務運営を進めることに徹底して、かつ全力で取り組んだ1年だった」と総括した上で、外貨建て保険の苦情についてはいまだに減少が見られないことを「大変残念に感じている」と述べ、「根岸次期協会長には顧客本位の業務運営をさらに進めていただきたい」と望みを託した。