2019.10.11 東京海上HD 米Pureグループ買収 小宮社長が戦略的意義を説明

 東京海上ホールディングスは10月4日、東京海上日動ビル新館で記者会見を行い、グループ会社の「HCC Insurance Holdings」を通じて、米国の「Privilege Underwriters」社と傘下の子会社(以下、Pureグループ)を買収することで、同グループの株主と合意したと発表した。買収総額は31億米ドル(約3255億円)で、買収資金は東京海上グループ内の手元資金と外部(資本性劣後債の発行を検討)から調達し、2019年度第4四半期(20年1~3月)中に完了する見込み。小宮暁社長は、買収の戦略的意義を説明し、海外保険事業を規模・収益共に一層拡大し、より分散の効いたグローバルポートフォリオの構築を図るとした。

 Pureグループ(米国ニューヨーク州ホワイトプレーンズ市)は2006年の創業以来、米国富裕層(High Net Worth、以下、HNW)向けに特化し、住宅火災保険や自動車保険などの商品・サービスを提供している損害保険グループ。主要事業は、「レシプロカル」(注)から委任を受け、代理者として保険事業を運営するマネジメント事業であり、フィーとして取扱保険料の約20%を受け取る。グループ自体は保険を引き受けない。
 同グループは、過去5年間の取扱保険料が年平均で約30%拡大するなど急成長を遂げ、設立10年ほどで約10億米ドルの規模に達した。近年、発展著しい米国富裕層保険市場のシェアでは、Chubb、AIGに次ぐ3位で、米国損保業界でトップレベルの96%の契約更新率を誇る。
 小宮社長は、Pureグループが東京海上グループの買収基準(強固なビジネスモデル、高い収益性、価値観を共有する優秀な経営陣の存在)を満たしており、今度の買収は、海外保険市場でのコア事業としてフォーカスしている先進国でのスペシャルティ保険事業の拡大に資すると述べた。
 また、Pureグループの事業は保険料ではなく、フィー収入が主体で収益が安定しており、通常保険会社が用意する支払い準備のための高額な資本も不要と説明。既存の米国事業とのオーバーラップが限定的で補完性も高く、事業ポートフォリオの一層の分散が進み、グループ全体の資本効率の向上が図れるメリットを指摘した。
 加えて、Pureグループが強固な財務力を持つ東京海上グループに入ることで、信用力引き上げに伴う顧客基盤のさらなる拡大が可能だとし、既存米国法人のスペシャルティ保険商品をPureグループの顧客にクロスセルするなどの施策を行うとした。
 他に、Pureグループに業務運営を委任するレシプロカルから再保険を引き受けることで、キャパシティの提供と東京海上グループの収益拡大も見込めると述べた。
 続いて行われた記者との質疑応答で、近年のハリケーンなどで米国での自然災害リスクが高まっている点について小宮社長は、「Pureグループは、リスクに対するセレクション能力が高い。例えば、住宅であれば物件ごとにきめ細かいアンダーライティングを行っている。また、引き受けの過半を再保険で出再している他、一つの州で2割以上契約を持たないなど、リスク分散がしっかりとなされている。結果として近年、米国の他損保が山火事やハリケーンで大きなロスを出している中、損害率を低く抑えている」と回答した。
 (注)レシプロカル(Reciprocal Exchange)とは、日本の共済に類似した保険契約者同士の互助関係を基礎とする組織。米国では株式会社、相互会社と並び50以上の保険引受主体が損保事業を営んでおり、米国損保第7位のUSAAなどが挙げられる。