2023.01.25 損保ジャパン 自動車事故、自然災害損害見積にAI活用、保険金サービス部門で新たなDX施策 AIが車両の損傷画像から全損判定
損保ジャパンは昨年12月21日、保険金サービス部門におけるAIを活用した新たなDX施策として、自動車事故で、①「AI見積チェック」②「SOMPOおくるまスマート判定(仮称)」、自然災害の建物損害で、③「SOMPOたてものスマート見積(仮称)」―の三つの施策を開始したと発表した。同社は中期経営計画(2021年度~23年度)の基本戦略の一つであるレジリエンスの向上に向けて、データに基づいて業務を変革し効率化を推し進める業務変革型DXに取り組んでおり、人とデジタルのハイブリッドで高品質なサービスの提供を目指していくとしている。
損保ジャパンは、損保会社として年間200万件以上の事故対応をしており、従来は専門スキルを持った「人」による対応をメーンとしてきた。しかし、時代の流れとともに多様化する顧客ニーズや進化を続ける自動車、高度化する修理技術と、それに合わせて変化する整備工場との関係構築、激甚化・頻発化する自然災害など、損害調査を取り巻く環境は大きく変わりつつある。
そこで、同社の高い専門性を有した人材による高品質な応対と21年7月にDXパートナーとして提携したTractable Ltd.(CEO:Alexandre Dalyac)の持つ最先端のAI技術を活用したソリューションにより、これまでにない人とデジタルのハイブリッドな革新的かつ高品質なサービスを提供し、エフォートレス(簡便で快適)な顧客体験を提供するとともにブランド力向上に向けた取り組みを加速している。
自動車事故におけるDX施策として開始した「AI見積チェック」は、AIが損傷画像と修理見積書から修理内容や金額の妥当性をチェックするソリューション。事故対応担当者は「人による精査が必要」とシステム判定された事案のみを精査・検証する。このAIは22年10月現在、1カ月当たり3.5万件の画像調査事案をチェックしており、22年11月には基幹システムとの連携が完了したことで、さらなる生産性向上を実現する。25年には車両損害約100万件のうち、40%をAIが自動チェックすることで、業務が大幅に効率化される見込みだという。新たに創出された時間と蓄積されたデータを活用し、事故対応担当者は整備工場に対するコンサルタント業務や不正請求撲滅に向けた仕組みづくりなど人にしかできない高い専門領域の業務にシフトしていく。
「SOMPOおくるまスマート判定」は、業界初(同社による)のAIが車両の損傷画像から全損の判定を行うソリューション。ウェブアプリで撮影した損傷箇所の画像から、AIが損害状況を確認し全損の判定をする。
従来、事故対応担当者が整備工場を訪問し損害調査を行っていたが、このソリューションでは、整備工場、保険代理店または顧客自身がスマートフォンで撮影した事故車両の画像から、AIが判定する。これにより全損に該当する場合は、同社の事故対応担当者による損害調査が不要となり、顧客へ最短で事故の受付当日に保険金の支払い手続きが可能となる。
自然災害におけるDX施策「SOMPOたてものスマート見積」は、建物損害の画像をAIが解析し、支払保険金の見積もりを行うソリューション。現在、本格導入に向けて準備を進めている。台風等の自然災害による建物損害で、顧客や保険代理店が建物の損害箇所をスマートフォンで撮影するだけでAIが損害額を自動で算出する。これにより、従来、事故の受付から受け取れる保険金の額が確定するまでに数週間を要していたところ、最短で事故の受付当日に金額が確定し、支払い手続きが可能となる。
22年9月に発生した台風14号から試行実施を開始しており、サービス利用後のアンケートでは多くの顧客や保険代理店から高い評価を得ているという。23年度には全国展開し、激甚化する自然災害への対応を強化するとともに自然災害以外の事案にも適用範囲を拡大することで、年間数万件の建物損害に活用することが可能となる予定だ。
同社は今後、人とデジタルのハイブリッドによる顧客対応で、エフォートレスな顧客体験を提供し、DXを通じたチャレンジを続ける。また「“安心・安全・健康のテーマパーク”により、あらゆる人が自分らしい人生を健康で豊かに楽しむことのできる社会を実現する」というSOMPOのパーパス実現に向けて、ブランドスローガン「Innovation for Wellbeing」を具現化する取り組みを通じてサステナブルな社会の実現に貢献するとしている。