2023.01.19 損保ジャパン 自然資本クレジットコンソーシアムに参画、自治体等の森林クレジットに補償提供 地方創生とカーボンクレジット市場活性化目指す

損保ジャパンは12月15日、国立大学法人九州大学都市研究センターの馬奈木俊介主幹教授が理事長を務める一般社団法人Natural Capitalが設立した地方創生とカーボンクレジット市場の活性化の両立を目指すコンソーシアム「ナチュラルキャピタルクレジットコンソーシアム(NCCC)」に参画するとともに、国内初(同社調べ)となる森林由来のカーボンクレジット(以下、森林クレジット)に関する補償の提供を開始すると発表した。同コンソーシアムには九州電力、ソフトバンク、東京ガス、日東電工など33社が参画、保険会社では第一生命も参画を表明している。

Natural Capitalは12月15日、カーボンクレジット市場の活性化を通じた脱炭素社会の実現を目的に、森林・農地・海洋資源など自然資本のポテンシャルによるCO2の吸収量をテクノロジーの利活用を通じて測定・評価、クレジット化することによりカーボンクレジット市場の活性化を目指すNCCCの設立を発表した。
損保ジャパンは自然資本を活用したCO2削減の拡大を目指し馬奈木教授とソリューションの検討を進めてきており、NCCCへの参画と併せて、そのソリューションの第1弾として、ボランタリークレジット(注1)市場で森林クレジットに関する補償の提供を開始する。
クレジット化に際するCO2吸収量の自然資本のフィールドは、参画自治体を対象とし、測定・評価したCO2吸収量のクレジットの販売は参画企業またはカーボンクレジット市場で行う。NCCCは、独自の測定・評価およびクレジットを創出するとともに、VCSやゴールドスタンダードなどの主要なボランタリークレジットの認証を取得する予定。
森林や農作地の維持は、少子高齢化にともなう労働力不足、防災・治水の観点からも重要な社会課題となっており、本取り組みによるクレジットの創出と活性化は、自治体や農林水産業従事者などの収入源になることで地方の経済面での活性化も期待されるという。
損保ジャパンによる補償の提供は、馬奈木教授のグローバルな活動で培った知見・ネットワークと同社のソリューション提供力・多様なリソースを生かし、クレジット創出者のリスク軽減を目的にするもので、クレジット創出者を契約者・被保険者とし、被保険者が所有する森林に火災・自然災害などの偶然な事由によって損害が発生し、クレジット購入者との間で取り決めたCO2吸収量に不足するクレジット相当額を被保険者が市場などから購入する費用を補償する。保険料は概算で1億円の支払限度に対し数百万円としている。
50年カーボンニュートラルの実現に向け、企業は自らCO2排出量を削減するだけでなく、カーボンクレジット市場での自主的な排出量取引を実行するなど、CO2削減に向けた取り組みが加速している。カーボンクレジットの中でも、森林クレジットは、適切な森林管理を行うことによるCO2吸収だけでなく、自然資本の保全・回復にも貢献し、今後クレジットの創出拡大が期待されている。
一方、森林クレジットは、クレジット創出者が所有する森林に損害が発生した場合、CO2吸収量が減少し想定したクレジットを得られない場合があるほか、現状J―クレジット制度(注2)における認証クレジットの方法のうち全体の1.5%と非常にマイナーで、国内でそのポテンシャルが十分活用されていないことなどが課題となっていた。
同社では今後、地方自治体を中心とした脱炭素の活動支援を通じてカーボンクレジットの普及を促進するとともに、日本の自然資本の回復・保全に向け積極的に取り組んでいくとしている。
(注1)企業が森林の保護や植林、省エネルギー機器導入等を行うことで生まれたCO2などの温室効果ガスの削減効果(削減量、吸収量)をクレジット(排出権)として発行し、他の企業等との間で取引できるようにする仕組みのこと。
(注2)CO2等の排出削減量、適切な森林管理によるCO2等の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度。