2023.01.18 生保協会 スチュワードシップ活動協働エンゲージメント実施、対象の151社に連名の書簡送付 気候変動の情報開示の働き掛けを強化

生命保険協会は12月9日、東京都千代田区の同協会大会議室で、「スチュワードシップ活動ワーキング・グループの参加会社による協働エンゲージメント実施」についての記者説明会を開催した。本協働エンゲージメントは2017年度から継続している取り組みで、本年度も昨年度と同じく「株主還元の充実」「ESG情報の開示充実」「気候変動の情報開示充実」の3テーマを継続し、上場企業151社(述べ156社)を対象に実施する。対象企業に対しては、課題意識を伝える書簡(同ワーキング・グループに参加する生保11社の連名)を送付した上で、対話や電話等でのフォローアップを通じて協働エンゲージメントの実効性向上を図っていくとした。

記者説明会では、生保協会スチュワードシップ活動ワーキング・グループ座長の石井智親氏(日本生命株式部スチュワードシップ推進室長)と、生保協会ESG投融資推進ワーキング・グループ座長代理の池田慧氏(日本生命財務企画部ESG投融資推進室ESG投融資推進専門部長)が取り組みについて解説した。
「株主還元の充実」では、長期間(10年間)配当性向が30%未満で、自己資本比率が高く、投資実績に乏しい企業57社に対して、株主還元の向上(配当性向30%)を要望している。この取り組みは17年度から実施しており、21年度は約2割の企業が配当性向30%の基準をクリアした他、送付先の6割の企業が増配しており、全体の8割の企業で改善が見られているという。
「ESG情報の開示充実」については、18年度から実施しており、時価総額上位300社のうち、ESG情報を含む統合的な開示(統合報告書等)が無い企業47社に対して、ESG情報を含む統合的な開示を要望。21年度は送付先の約3割が新たにESG情報を含む統合的な開示を実施するなどの成果が出ているとした。
他の2項目が昨年度からの「継続」という位置付けであるのに対して、「気候変動の情報開示充実」に関しては、「強化」としており、温室効果ガス排出量上位52社に対して①気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定量・定性分析と開示②2050年ネットゼロに向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップの策定・開示の2点を要望し、脱炭素に向けた一層の取り組みと情報開示を後押しする方針だ。①と②をすでに開示している企業に対しても、①については定期的な分析の見直し・高度化、②については必要に応じて開示の充実を後押しする。
21年度書簡送付先については、①は全社が開示しており、定量分析の開示は20年度には約1割だったが、21年度は約4割が開示。②については、8割超の企業が開示しているものの、さらなる内容の充実が必要と思われる企業もあるとしている。
記者から、協働エンゲージメントに対して反応の薄い企業に関する質問が寄せられると、「複数年書簡を送っていても応じない企業というのが10社程度は出てくるが、そういった企業は重点フォロー先としてWG内で方針をまとめた上で働き掛けを行っており、そこでは一定の効果が確認されている。送り続けることが重要だと思う」と応じた。
同ワーキング・グループに参加する生保11社は、朝日生命、かんぽ生命、ジブラルタ生命、住友生命、第一生命、大樹生命、大同生命、太陽生命、日本生命、富国生命、明治安田生命(50音順)―となる。