2022.10.27 三井住友海上 打上げから着陸までシームレスに補償 民間月面探査プログラム、「月保険」初の引受けへ ispaceと共同開発
三井住友海上は10月7日、㈱ispace(袴田武史代表取締役)と、今後拡大が予想される月面ビジネスで発生するリスクを補償するため、打ち上げから月面着陸までを補償する世界初(同社による)の「月保険」を共同開発したと発表した。最短で今年11月(10月時点計画)に打ち上げを予定しているispaceのミッション1で同社に生じる損害を補償する他、今後はispaceを含む月面開発を企図する他の事業者へも同保険を提供し、月面市場のビジネス創出を後押しする。また、宇宙旅行や民間宇宙ステーション(ポストISS)などの新たな宇宙領域で生じるリスクを軽減するソリューションを提供することで、宇宙産業のさらなる発展に貢献していく。
アルテミス計画に代表されるように、宇宙開発では月に注目が集まっており、その後、火星や地球から200万キロメートル以上離れた深宇宙へと人類の活動領域は拡大していくことが想定される。そうした中、三井住友海上は2019年2月に民間月面探査プログラム「HAKUTO―R」のコーポレートパートナーに就任し、人類にとってまだ未知の領域である月面や月までの航路といった新たな挑戦に対して全力で立ち向かえるよう「月保険」開発に関する協業を発表した。
同社はこれまでispaceとの協業を通じて、月への航路や着陸の際に起こり得るリスクなどを分析し、ロケット打ち上げから月遷移軌道上でランダー(月着陸船)が切り離され、月までの長期間に及ぶ航行期間や月面着陸時に発生する損害について協議を重ねてきており、今回、新たな宇宙保険のラインアップの一つとして、打ち上げから月面着陸までをシームレスに補償する「月保険」を共同開発するに至った。
地上では損害箇所を目視できるが、宇宙・月面では損害を目視することができない。そこで月保険では、ランダー(月着陸船)から発信されるさまざまなデータを地上で受信し、ランダーの状態を確認。データが受信できない場合やデータに異常値が見られた場合など、予定していた月面航行や着陸が達成できない場合などに保険金を支払う。
ispaceの計画する民間月面探査プログラム「HAKUTO―R」では、独自のランダーとローバー(月面探査車)を開発し、月面着陸と月面探査の2回のミッションを行うことを予定している。SpaceXのFalcon9を使用し、それぞれ今年に月面着陸ミッション、24年に月面探査ミッションの打ち上げを行うことを予定(10月時点計画)している。同プログラムでは、月面データの取得サービスと高頻度の地球―月輸送サービスの構築に向けた技術検証を行う。ミッション1の打ち上げ時期は、現時点で最短で今年11月を予定。ミッション1で使用予定のランダーのフライトモデルは、最終的な機能試験を行い、打ち上げ予定地であるフロリダへ輸送を行う準備を進めているという。
ispaceのFounder,Representative Director&CEOの袴田武史氏は今回の「月保険」の共同開発を受けて、「産業が発展する上で、保険は必要不可欠な要素。月・地球間のエコシステム実現の旗振り役であるispaceとしては、世界初の月保険を共同開発させていただき大変光栄に思う。この月保険により、さまざまな事業者が今後月面開発に参加し、繰り返し月に行くことで、新たな産業が創出されることになるだろう」とコメントした。