2022.10.28 東京海上日動 「観光風評被害保険」開発、観光協会の広告宣伝費用を補償

東京海上日動は10月4日、大規模な自然災害による風評被害を受けた観光地の観光協会等に対して、早期に平時通りの集客を実現するための広告宣伝費用等を補償する「観光風評被害保険」を国内で初めて(同社調べによる)開発したと発表した。

近年、台風や豪雨等の自然災害が頻発・激甚化しており、自然災害は観光地へも大きな被害をもたらしている。一方、直接被災がない観光地でも、被災状況の誤認等による「観光風評被害」によって、実際は施設も周辺交通機関も問題がなく平常時と変わらないにもかかわらず、観光客の旅行取りやめが相次ぎ、旅館・ホテル事業者の経営が深刻な打撃を受けるといった事象がたびたび発生している。こうした観光風評被害は、短期的な経営への打撃だけではなく、長期的な旅行客の観光地離れにつながる恐れもあり、観光協会としては「通常通りに宿泊・観光できること」を迅速に周知して被害を抑える必要がある。また、風評被害は数年以上続くこともあり、当該地域は経済的な損害を被るほか、風評被害を解消するために多大な労力を要することになるという。
このような背景を踏まえて、東京海上日動では、観光風評被害の影響を受けた旅館・ホテル事業者を守るため、㈱J&J事業創造(東京都港区、鈴木雅己代表取締役社長)の風評被害を定量化する技術を活用することで、安全性を周知するためにかかる費用を補償する新たな保険を開発するに至った。
J&J事業創造は、㈱JTB・㈱ジェーシービー合弁の事業開発会社で、観光地における風評被害の情報処理システム(特許番号6989720号)を開発。同システムでは、過去の自然災害の被災状況を踏まえ、携帯電話の基地局データによる人口分布統計を用いて、自然災害発生後の周辺地域の人口流出入を推定する。NTTコミュニケーションズから提供される「モバイル空間統計(R)」によって、該当エリアの宿泊者の減少度合を計測することが可能となったとのこと。
東京海上日動の観光風評被害保険は、観光地が大規模自然災害(風災・水災等を対象とし、地震・噴火・津波は対象外)による観光風評被害に遭った際に、観光協会等の加盟施設が被災していないことを周知するために、観光協会等が支出する広告宣伝費用等を実費で補償する。主な保険契約者は、各地の旅行連盟や観光協会など。テレビやインターネットによる広告宣伝やPRイベントの実施に係る費用等を補償することで、被災地域周辺の観光地において、早期に平時通りの集客実現を図る。
同社では、観光協会等の所轄エリアの宿泊事業者でのキャンセル状況や被災状況から観光風評被害への該当を判定し集客に関わる広告宣伝費用等を保険金として支払うが、契約者に対しては保険金請求の際、対象地が観光風評被害に被災したことを判定するために、J&J事業創造による風評被害を定量化するシステムの活用を推奨する。