2022.09.16 金融庁 22事務年度行政方針を策定 ①事業者支援取組み後押し②金融システム構築③金融行政進化、公的保険制度踏まえた募集の推進で対話
金融庁は8月31日、2022事務年度の金融行政における重点課題および金融行政に取り組む上での方針を「金融行政方針」として公表した。金融行政方針「本文」A4判31枚、同「コラム」同55枚、同「実績と作業計画」同96枚の分量。今事務年度の三つの重点課題の概要と保険会社関連のモニタリング方針・作業計画は以下の通りとなっている。
金融庁は22事務年度、①経済や国民生活の安定を支え、その後の成長へとつなぐ(新型コロナウイルス感染症にくわえ、ロシアのウクライナ侵略の影響により先行きが不透明となる中、金融面から経済や国民生活の安定を支え、その後の成長へとつなげていく。金融機関による事業者支援の取組みを後押しするとともに、金融機関に対して経営基盤の強化を促す)②社会課題解決による新たな成長が国民に還元される金融システムを構築する(気候変動問題への対応、デジタル社会の実現、スタートアップ支援等の社会課題解決を新たな成長へとつなげるために金融面での環境整備を行うとともに、「貯蓄から投資」へのシフトを進め、成長の果実が国民に広く還元される好循環を実現する)③金融行政をさらに進化させる(内外の環境が大きく変化する中、職員の能力・資質の向上を図り、データ等に基づく分析力を高めるとともに、国内外に対する政策発信力を強化する)―以上3点を重点課題として取り組む。
業態横断的なモニタリング方針の中の②「利用者目線に立った金融サービスの普及」では、以下の作業計画が示された。
▽外貨建保険の共通KPIについても、投資信託と同様に分析結果を公表する。また、外貨建保険の共通KPIの普及・浸透を図るとともに金融機関による公表を促す。
▽金融機関における取組方針等について、記載上の工夫が認められる事例などを収集し、公表する。
▽顧客本位の業務運営に関する金融機関の具体的な取組みが取組方針の中で明確化されているか、営業現場において定着しているかについてモニタリングを行う。
▽金融機関において顧客の資産形成に資する商品組成・販売・管理等を行う態勢が構築されているかについてモニタリングを行う。特に、仕組債を取り扱う金融機関に対しては、経営陣において、こうした点を踏まえた上で取扱いを継続すべきか否かを検討しているか、継続する場合にはどのような顧客を対象にどのような説明をすれば顧客の真のニーズを踏まえた販売となるのかを検討しているかといった点についてモニタリングを行う。
▽外貨建保険の販売等については、保険会社や金融機関代理店との対話やアンケートの実施等を通じて、募集管理やアフターフォロー等の取組みの浸透・定着状況のフォローアップを行う。
▽雑誌への寄稿や講演等を通じて、資産形成層に対し、「見える化」の施策の趣旨等を広く周知する。
▽「重要情報シート」を活用してわかりやすい情報提供が行われるよう業界と議論を継続していく。また、主要な金融事業者における「重要情報シート」の導入及び活用状況について、引き続きモニタリングを実施する。
また、業種別モニタリング方針の保険会社に関する作業計画は以下の通りとなっている。
1.保険業界における顧客本位の業務運営
▽昨年度に引き続き、公的保険制度を踏まえた保険募集の推進について、生保会社、損保会社及び少短業者との間で対話を行っていく。また、公的保険制度の解説を含めた保険リテラシーの向上のための施策に取り組んでいく。
▽行政対応を実施した保険会社に対しては、適切な募集管理態勢の確立(代理店に対する十分な牽制機能の構築を含む)や適切な商品開発管理態勢の確立など、再発防止に向けたガバナンス強化の進展についてフォローアップを実施する。また、節税(租税回避)を主たる目的とした保険商品の販売等、保険本来の趣旨を逸脱するような商品開発や募集活動を防止するため、国税庁との更なる連携強化等を通じ、実効性のある商品審査や保険募集に係るモニタリングを行い、各保険会社の適切な募集管理態勢等の整備を促していく。
▽財務局との連携を一層強化しつつ、保険代理店の監督を行っていく。
▽生保協会が主体となり、乗合代理店の業務品質評価基準を踏まえた業務品質評価運営が22年度より開始されたところであり、金融庁としても、各生命保険会社において、当該業務品質制度及び評価基準が代理店への評価に関する参考として活用されるなど、代理店の業務品質評価に係る取組みが各生保会社に広がるよう促していく。
▽生保協会において、各生保会社の営業職員管理の参考となる考え方や留意点を改めて明確化するなど、管理態勢の高度化に向けた方策を検討していくとする報告書が公表されたが(22年4月)、金融庁としても、これを踏まえ、各社が営業現場に至るまで適切な管理態勢を整備・運用しているかなどについて、実効性のあるモニタリングを実施する。
2.ビジネスモデル
▽昨事務年度に確認した各保険会社の課題について十分な対応を行っているか必要に応じてモニタリングを実施するとともに、これまでビジネスモデル対話が未実施の先との対話も検討していく。特に、損保会社については、大手を中心に、トップラインだけでなくボトムライン(火災保険の収益改善等)の適正化に向けた取組み等をテーマとした対話を検討する。
▽保険代理店を含む保険業界との対話により、非対面営業を含めた諸手続きの電子化を促す。
3.グループガバナンス
▽グループガバナンスの高度化状況をフォローアップするとともに、海外事業に係る事業戦略や計画をモニタリングしていく。
▽IAIGs(Internationally Active Insurance Groups:日本においては、第一生命ホールディングス株式会社、東京海上ホールディングス株式会社、MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社、SOMPOホールディングス株式会社)については、毎年開催される監督カレッジにおける海外当局との情報共有も活用してモニタリングを実施する。
4.自然災害
▽自然災害に係る異常危険準備金の残高は回復傾向にあるものの、再保険料の高騰という厳しい環境は継続しており、今後の大規模自然災害発生に備え、各損保会社において、経営レベルでの議論に基づきどのようなリスク管理を行っているか引き続き確認する。
▽適正な保険金支払の実現に向けて、災害に便乗した悪質商法等の排除を進めるため、悪質性の高い事例に関する情報を交換する仕組み等について、損保協会や警察庁等関係省庁との協議を継続する。
▽水災リスクに応じた火災保険料率の細分化については、今後、損保料率機構及び損保会社の検討や取組みがより適切に行なわれるよう、火災保険水災料率に関する有識者懇談会報告書(22年3月21日)の内容を踏まえた上で、関係省庁とも連携しつつ対応する。
5.経済価値ベースのソルベンシー規制等
▽経済価値ベースのソルベンシー規制については、22年6月30日公表の「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する基本的な内容の暫定決定」に基づいて、保険会社を含む関係者と対話を行い、残された論点の検討を進める。その他、監督措置のあり方、第2の柱及び第3の柱の設計及び運用等に関する検討を行う。
▽引き続き、経済価値ベースのリスク管理との整合性や財務会計に関する見直しの動向等も踏まえ、監督会計のあり方について検討を行うほか、IFRS任意適用に関する必要な法令の整備やモニタリングの高度化を進める。
6.少短保険業者
▽適切な保険金等支払いや保険引受リスク管理等に問題が認められた少短業者の改善状況について、財務局と連携してフォローアップを行う。あわせて、財務局と連携し、少短業者に対するモニタリング手法を見直していく。
▽さらに、少短保険協会と連携して、少短業者の経営管理態勢の強化等の態勢整備を促す。
▽23年3月に経過措置の期限が到来することから、本則への着実な移行を一層促すために、対応計画に即した進捗となっているか随時確認するとともに、期限到来後に本則超過契約の引受を行うことがないよう必要な措置を求めていく。