2022.09.20 東京海上日動 シミュレーションに景気循環サイクル導入、保証信用保険リスク評価で特許

東京海上日動は8月23日、保証信用保険の保険料算出および与信審査等に利用するリスク評価モデルに関して、シミュレーションに景気循環サイクルの概念を導入するロジックを発明し、6月10日付で特許権(特許番号:第7086450号)を取得したと発表した。発明の名称は「リスク評価装置、リスク評価方法及びプログラム」。

東京海上日動では、リスクベース経営(ERM)の高度化に取り組んでいる。企業活動のあらゆる側面において「リスク」「資本」「リターン」の関係を常に意識して経営を行うことで、リスク定量化ではリスクモデルを用いることが多い。
保証信用保険は、取引信用保険や公共工事履行保証保険等、契約上の債務が履行されない場合に、顧客(契約者・被保険者)等が被る損害を補償する保険だが、今回、顧客およびその取引先企業の履行能力(信用力)を評価し、その評価により引受額や保険料を決定するためのリスクモデルの高度化を検討、新たなモデルを自社開発した。顧客やその取引先企業について、20年以上の超長期間にわたる経済環境を考慮した複数の倒産確率を設定し、景気循環サイクルの概念を取り入れたシミュレーションによって、客観的かつ合理的なリスク量を計測することが可能となったという。
開発を行った同社企業商品業務部保証信用保険グループの兵頭由剛氏と大須賀茂雄氏は、「当社では200~300年に一度の巨大損失が発生したとしても、顧客に確実に保険金を支払えるように資本を配分している。ただし、200~300年に一度の巨大損失というのは、確率的に人生で一度遭遇するかしないかという極めて発生頻度が低いもので、その損失額を推計することは極めて困難だ。客観的かつ透明性が高いロジックでリスク量を計測することを念頭に検討を重ねた結果、シミュレーションに景気循環サイクルの概念を導入するという発想に至った。特に、保証信用保険リスクモデルの高度化を検討した背景には、保証信用保険は倒産等を補償しており、景気変動にその収益性は大きく左右される。100年に一度の危機と言われたリーマンショックから10年以上経過し、日本国内では企業の倒産件数が低下し続けており、2021年の倒産件数は1966年に次いで過去3番目に少ない56年ぶりの歴史的低水準であった。一方で、足元では新型コロナウイルス感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻の長期化等に伴う世界的な物価上昇が起きており、世界的なリセッション入りの懸念が高まっている。本年1~6月の国内企業の倒産件数は、対前年比で減少しているが、歴史的には数年から十数年おきに、バブル崩壊やリーマンショック等の大規模な経済イベントが発生しており、国内企業の倒産件数が大幅な増加に転じるシナリオも想定される。このような難局を適切に評価できるリスクモデルを持つことが、リスクベース経営(ERM)の高度化につながると考えた」としている。
同社では、このリスクモデルを保証提供が可能な引受額(与信枠)の審査や保険料の算出にも利用していく予定であり、安定した引受額(与信枠)および保険料で長期的に引受けられる保証信用保険の提供に一層取り組むとしている。