2022.06.15 生保協会 定例会見 生命保険事業役割強く意識、コロナ禍後は脱炭素に向け取組強化

 生保協会の高田幸徳協会長は6月10日、同協会会議室で協会長として最後の定例会見を行った。会見では、同日開催された理事会で副会長、各委員会委員長が内定したこと、生保協会の活動をより多くの顧客に理解してもらうことを目的にした「SR報告書2022」を作成・発行したことを報告した他、高田協会長が1年間の取り組みを振り、「コロナ禍が継続したことで、生命保険事業に求められる社会的役割を強く意識し、その役割を発揮するために諸課題に全力で取り組んできた。コロナ禍では、協会運営においても判断が難しい場面もあったが、あらためて協会のあり方や、生命保険事業の必要性を認識できた。今後、取り組んできた諸施策やデジタル化の取り組みがさらに進むことを期待している」と総括した。

 高田協会長は21年度の取り組みについて、業界の長期的かつ継続的課題となる「人生100年時代の到来」に向けた取り組みに加え、「新型コロナ感染拡大」や「気候変動・SDGs」、「顧客本位」を重点課題に位置付けて、取り組みを進めてきたと振り返った。
 新型コロナの対応については、パンデミックに関する危機対応のレガシー化を意図として新型コロナに対する取り組みをまとめた報告書を作成すると同時にデジタル化の好事例を紹介した他、主要国のコロナ対応も掲載するなど情報連携を行った。
 気候変動については、特に難易度の高い、シナリオ分析について解説した各社向けのハンドブックを作成。ハンドブックは基本となるポイントをまとめていることから、業界全体の底上げにつなげるとした。
 また、気候変動と人生100年時代への対応として、SDGsシンポジウムを開催し、「健康寿命の延伸」と「サスティナブルファイナンス」に関連する有識者の講演会やパネルディスカッションを実施することで、業界内の知見を高めると同時に、多くの人に業界の取り組みを周知してもらうようにYouTubeでのライブ配信を行った。
 保険教育について21年度は、中学生ぐらいの年齢層に将来や金融・保険について考えるきっかけを提供できるようにアニメーションによる分かりやすい解説動画を作成し、YouTubeチャンネルに公開した。これに合わせて首都圏の中学校で動画を使ったモデル授業を行った。
 顧客本位の取り組みについては、保険金等支払時の「グリーフケアに関するハンドブック」を作成して各社に提供したことに加え、各社の担当者向けの勉強会も開催したことを報告し、「顧客本位の業務運営のさらなる推進の一環として各社のサービス向上の一助にしてほしい」との考えを示した。
 また、営業職員管理態勢の高度化に向けたフォローアップアンケートを実施して、報告書をまとめた。こうした結果を踏まえて会員各社による営業職員チャネルのコンプライアンス・リスク管理態勢のさらなる高度化や、実効性向上に向けた新たな方策について検討していくとした。
 新型コロナウイルス感染症への対応については、特別取扱いの申し込み状況は4月末累計で、保険料払込猶予期間の延長が40万364件、新規契約者貸付に対する利息減免が97万9349件となった。同じく4月末の保険金等の支払状況については、死亡保険金が2万1532件の約1312億円、入院給付金が169万3788件の約1658億円で、このうち、「みなし入院」の割合は約9割だったと報告した(別表参照)。
 高田協会長は、「顧客の状況はさまざまだが、業界として国民の生活を支える上で一定の役割を果たせたと思う。足元では、感染状況は落ち着いてきてはいるものの、予断を持たず引き続き状況を注視していく」と述べた。
 業界の今後については、30年、50年に向けたカーボンニュートラルといった長期的な課題に対して目線が移っていくとの見解を示し、「生命保険事業は息の長いビジネスモデルであり、長期の視点を持って取り組む必要があり、グローバルの課題解決に向けて、しっかりとプレゼンスを発揮していかなければならない」と語った。
 バトンを引き継ぐ稲垣精二次期協会長に対しては、「グローバルな視点を持っており、30年、50年に向けて注目が集まっているSDGs等の課題の解決や持続可能な社会の実現に向けて、業界をけん引していただき、DX促進という点でも、個社社長としても先進的に取り組んでいることから、業界の発展や顧客からの信頼のさらなる向上に向けた取り組みを期待している」とエールを送った。