2022.06.14 損保協会 定例会見 自賠責手続きのペーパーレス化推進、24年の運用開始目標に共同システム検討

 損保協会は6月10日、業界紙向けの定例記者会見を行い、前日に日銀記者クラブで行われた舩曵真一郎協会長の会見の内容を報告した。協会長として最後の会見に臨んだ舩曵協会長は、1年間の主な取り組みを振り返るとともに、主要課題の一つである非対面・非接触・ペーパーレス推進の取り組みに関して、2024年の運用開始を目標に、自賠責保険関連手続きのペーパーレス化や保険料払い込みのキャッシュレス化のための共同システムの具体的な検討を開始したと報告した(舩曵協会長のステートメント全文を2~3面で掲載)。会見ではこの他、公共工事履行保証の証券等の電子化についても報告した。

 舩曵協会長はまず、3月に発生した福島県沖を震源とする地震について、5月20日時点で、地震保険で約23万件、計1619億円の保険金を支払ったことを報告し、今後も迅速かつ丁寧な対応を通じて、最後まで損保業界としての使命と責任を果たしていく考えを示した。
 また、新型コロナウイルス感染症については、いわゆるwithコロナ局面が当面続くことを見据え、リモートワークや非対面・非接触・ペーパーレス手続きの拡大を通じた感染対策を緩めずに、顧客や社員の安全確保に当たるとした。
 ウクライナ情勢に関しては、特にサプライチェーンの分断が各国における物価高騰につながっていることを受け、物流等の見直しに関するリスク分析や保険カバーの提供が重要だと述べ、早期の平和回復に向けた国際社会のあらゆる努力と働き掛けを強く支持する姿勢を示した。
 今年度の主要課題に関する具体的な取り組みについては、①気候変動に関連する取り組み②非対面・非接触・ペーパーレスの推進③リスクへの備えの一段の強化④高校生を中心とした若者の損害保険リテラシー向上⑤その他各課題への取り組み―の5点について報告。
 自然災害後の円滑かつ迅速な保険金支払いに向けた業界共同取り組みでは、被災地の衛星画像データや浸水深測定データの各社への提供を開始したこと、質権付き火災保険契約に関して、一定の条件の下、顧客への保険金の直接支払いを金融機関が承認する包括承認を順次締結していること、ハザードマップの普及推進に向けて関連チラシを作成し、全国の高校約5000校に提供したことなどを紹介した。
 この他、3月に取りまとめられた金融庁の「火災保険水災料率に関する有識者懇談会」の報告書を受けて、今後、損保各社が各地のリスクに応じてこれまで全国一律だった水災料率を細分化する見通しであるとした。
 また、適正な保険金支払いに向けた取り組みでは、自然災害に便乗した悪質な住宅修理業者とのトラブルが依然多く報告されていることから、損保協会では関係各所と連携し、啓発チラシ等を活用した注意喚起に加えて、会員会社における請求受付時の対策強化に取り組んでいると説明した。
 特定している悪質な修理業者に関するデータベースの共有・活用の取り組みや、AIを活用した保険金請求関連書類から悪質な修理業者の関与を検知するツールの開発などを紹介し、こうした取り組みについては、次期協会長年度においても注力していくと明言した。
 非対面・非接触・ペーパーレスの推進では、21年10月から、保険料控除証明書を電子データで取得できるようになったうえに、マイナポータル連携も可能になったと報告。
 また、会員各社間で、2月から共同保険契約の契約情報を全て電子データでやり取りできるようになったと説明した。任意自動車保険のノンフリート等級の会社間の情報交換において残っている紙帳票ベースのやり取りについても7月から順次ペーパーレス化を進めると述べ、これらの取り組みによって年間100万枚以上の紙が削減できる見込みを示した。
 さらに、24年の運用開始を目標に、自賠責保険関連手続きのペーパーレス化や保険料払い込みのキャッシュレス化のための共同システムの具体的な検討を開始したことも明かした。
 最後に、舩曵協会長は「昨年6月の協会長就任時に、損保業界はその時々の社会課題と向き合いつつ、リスクのプロならではの解決策を提供していくことで、安心・安全な社会を支えるインフラの一つとして役割を果たしてきたと述べたが、その矜持は今も変わらない」と語り、「社会を取り巻く環境が激変している今こそ、そのことを肝に銘じて、お客さまに寄り添って、ともに課題解決に取り組んでいく存在でありたい」と思いを込めた。
 会見ではこの他、公共工事の履行保証証券(履行ボンド)および履行保証保険の証券等について、損保会社がPDFファイルで発行・送付する場合の標準的な取り扱い方法を取りまとめ、5月9日から運用を開始したことを報告した。