2022.02.25 生保協会 定例会見 代理店業務品質評価基準決定、9月から調査開始、結果公表へ 、新型コロナ関連支払い1700億円に

生命保険協会の高田幸徳協会長は2月18日、東京都千代田区の同協会会議室で定例会見を開いた。会見では①「はじめての気候変動シナリオ分析ハンドブック」の作成②中学生等向けの保険教育アニメーション動画の作成③乗合代理店の業務品質向上に向けた取り組み―の三つの取り組みについて説明した。この他、新型コロナに関わる業界全体の特別取り扱いの申込状況や保険金等の支払い状況を報告した上で、「生命保険業界を挙げて、お客さまに寄り添った対応に取り組むとともに、感染拡大防止に努めていく」と述べた。

 会見で高田協会長は「はじめての気候変動シナリオ分析ハンドブック」について、気候変動に関連した事業への影響や経営戦略への反映、情報公開など、さまざまな対応が求められている中で、特に複雑な手法が必要となる「シナリオ分析」に着目し、初歩的な分析手法から丁寧に解説することで、会員各社の取り組みの参考になる内容としたと説明。シナリオ分析については、基本的な事項を解説した同ハンドブックを通じて、まずは業界全体の底上げに貢献する考え。加えて、生命保険業界における取り組みを積極的に発信し、共有に向けて同協会ホームページでも公表するとした。
 また、3月4日にオンラインで「SDGsをテーマとしたシンポジウム」を開催することを報告。同シンポジウムは、SDGsで掲げられているテーマの中でも生命保険と特に関連の深い「健康寿命延伸・高齢社会」や「サステナブルファイナンス」をテーマに行う。
 ②の「中学生等向けの保険教育アニメーション動画の作成」については、中学生の年代層であっても理解しやすく、親しみやすいものを作成したことに加え、人生100年時代やSDGsなど、大きく変化する社会環境に触れながら、社会保障制度や民間保険の役割についてわかりやすく解説した内容になっているとした。
 また、一般の人も理解できる内容になっていることから、中学生に限らず、興味・関心のある人に幅広く見てもらうことがもう一つの狙いだとした。今後は、都内の中学校の協力を得て、動画を活用して社会保障制度や保険について考えるモデル授業を実施する予定だとした。その他、さまざまなPR活動を通じて、国民の金融リテラシーの向上の一助にしたい考えを示した。
 ③の「乗合代理店の業務品質向上に向けた取り組み」については、昨年11月の会見で業務品質評価運営の基本事項を決定したことが報告されたが、今回は、代理店や消費者の意見を踏まえた「代理店業務品質評価基準」、生命保険協会による「代理店業務品質評価運営」の詳細を決定したことが報告された。
 「代理店業務品質評価基準」(別表参照)では、消費者にとって理想的な代理店として求められる業務品質を四つの視点(「顧客対応」「アフターフォロー」「個人情報保護」「ガバナンス」)から「基本項目」「応用項目」に整理した。乗合代理店や生命保険会社の代理店業務品質向上に向けた取り組みの中で活用することで、代理店業務品質の向上に寄与できるものだとした。
 「代理店業務品質評価運営」は、「代理店業務品質評価基準」を活用する中で、「基本項目」の全てを充足していると宣言した乗合代理店を対象に22年9月ごろから同協会がオフサイト(書面)・オンサイト(訪問)両面からの調査を開始する。
 その調査結果については、外部の有識者で構成される審査会が確認を行い、同協会ホームページで代理店名や代理店の取り組みを公表し、消費者に代理店選定のための有用な情報提供を行うとした。
 高田協会長は、実際に取り組みを進めていく中で、より良いものにしていくためさまざまな検討が必要と考えられるが、運営を通じて、生命保険業界として乗合代理店の「顧客本位の業務運営」の一層の推進を後押ししたい、と述べた。
 新型コロナに関わる業界全体の特別取扱いの申込状況や保険金等の支払い状況(別表参照)については、20年3月~22年1月までの累計で、保険料払込猶予期間の延長は約39万3000件、新規の契約者貸付に対する利息減免は約97万9000件、貸付金額は約6305億円となった。
 同じく保険金等の支払い状況は、死亡保険金が1万6554件で約1056億2000万円、入院給付金が63万3697件で約643億9000万円(入院給付のうち、宿泊・自宅療養等のいわゆる「みなし入院」での支払いが50万652件、約487億1000万円)となり、合計で65万251件、約1700億円となったと報告した。
 高田協会長は「21年12月ごろから急増した感染者に対する支払い状況は、2月以降に判明する実績に現れてくることが想定されていることから、引き続き動向を注視していく」と述べた。
 質疑応答では、「節税保険は保険本来の趣旨を損なうと指摘されている点について見解を聞きたい」という記者からの質問に対して、「昨年の名義変更税制の見直しを受け、保険本来の目的に沿った適切な保険募集の徹底のためにさまざまな取り組みを進めてきており現在も途上だ。引き続き、会員各社に保険募集の適正化に向けた態勢整備を促していきたい」と回答した。