2021.12.15 生保協会 スチュワードシップ活動協働エンゲージメント実施へ、気候変動の情報開示を促進

生保協会は11月26日、東京都千代田区の同協会大会議室で、「スチュワードシップ活動ワーキング・グループの参加会社による協働エンゲージメント実施」についての記者説明会を開催した。本協働エンゲージメントは2017年度から継続している取り組みで、本年度も昨年度と同じく「気候変動の情報開示充実」「ESG情報の開示充実」「株主還元の充実」の3テーマで実施する。同協会は、同日に株式投資先に当たる上場企業170社(延べ174社)を対象に、課題意識を伝える書簡(同ワーキング・グループに参加する生保11社の連名)を送付したことを報告するとともに、今後、対話や電話等でのフォローアップを通じて協働エンゲージメントの実効性向上を図っていくとした。

 記者説明会では、生保協会スチュワードシップ活動ワーキング・グループ座長兼ESG投融資推進ワーキング・グループ座長の本多勇一氏(第一生命責任投資推進部責任投資企画室長)が取り組みについて解説した。
 始めに本多氏は、本年度の協働エンゲージメントで特に注力するテーマとして、「気候変動の情報開示充実」を挙げ、日本政府から「2050年カーボンニュートラル」が公表されたことを踏まえ、温室効果ガス排出量上位52社に対して、①気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定量・定性分析と開示②2050年ネットゼロに向けた温室効果ガス排出量削減のロードマップの策定・開示―の二つを要望。既に対応している企業にも取り組み・開示のさらなる充実や高度化を促すとした。
 これにより、脱炭素に向けた一層の取り組みと情報開示を後押しするととともに、投資家のリスク把握や投資・ビジネス機会の獲得を目指すと述べ、「19年度から実施しているが、書簡送付先のうち、約9割が気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定性分析結果を開示した。加えて、ほぼ全ての企業が、温室効果ガス削減に向けた定量的な目標を策定したことを確認している」と報告した。
 「ESG情報の開示充実」に関しては、時価総額上位300社のうち、統合報告書(財務情報と非財務情報を合わせたもの)の開示がない59社に対して開示を要望する働き掛けを実施し、投資家と上場企業とのコミュニケーションを活性化すると述べた。
 本テーマは18年度から実施しており、20年度は送付先の約2割が統合報告書を新たに開示するとともに、約2割が統合報告書の開示はないもののESG情報の開示を拡充していると説明。残りの約6割のうち、3分の2は統合報告書の作成に前向きな姿勢を確認しているとした。
 「株主還元の充実」については、①財務内容が健全②営業キャッシュフローに対する投資キャッシュフローの比率が低い③長期にわたり配当性向が30%未満―の三つの条件を満たすキャッシュリッチな63社に対し、株主還元の向上(配当性30%)を求めることで中長期的な株主還元の拡大を図ると説明した。
 これについては、17年度から4年連続で実施しており、20年度はコロナ禍にもかかわらず、昨年度を上回る約3割の企業が配当性向30%の基準をクリアした他、基準未達先の約6割が増配したと付け加えた。
 最後に記者から、協働でエンゲージメントを行うことのメリットについて質問された本多氏は「書簡送付後は、投資先の上場企業1社に対して複数の生保からのアプローチも想定している。同じテーマに関して、複数の生保が時間差で働き掛けることは、ある程度メリットといえるのではないか。また、当ワーキング・グループでは法律の関係で、投資判断は生保各社に任せているが、投資先企業の反応等については情報共有している」と回答した。
 同ワーキング・グループに参加する生保11社は、朝日生命、かんぽ生命、ジブラルタ生命、住友生命、第一生命、大樹生命、大同生命、太陽生命、日本生命、富国生命、明治安田生命(50音順)―となる。