2021.10.14 東京海上HD 新・本店ビルコンセプト、洗練された気品あるデザインに

東京海上ホールディングスと東京海上日動は、3月25日に発表した現在の東京海上日動ビル本館と新館を一体で建て替えて建設する新・本店ビル計画について、9月30日にその計画コンセプトを明らかにした。東京海上グループのサステナビリティ戦略にのっとってまとめられたものだが、建築家のレンゾ・ピアノ氏の設計によりビジネス・歴史・文化が共存する街―丸の内の美しい街並みに調和し日本の玄関口である東京駅と緑豊かな皇居外苑を結ぶシンボリックな場所にふさわしい洗練された気品のあるデザインを目指す。機能・性能面では、最高レベルの災害対応力と、新しい働き方や多様なニーズに対応できる柔軟性を備えるとともに、国産木材の積極的な利用や最高レベルの環境性能の追求など、時代を先取した取り組みを通じて、安心・安全でサステナブルな社会の実現や地域社会の発展への貢献を目指すとしている。

 計画では、新・本店ビルの敷地面積は約1万147平方メートル、延床面積は約12万5000平方メートル、地下3階、地上19階建てで、建物高さは約100メートル。2022年10月の解体着工、28年度の竣工を目指す。
 建て替えのコンセプトとしては、①最高レベルの災害対応力②国産木材の積極的な利用③最高レベルの環境性能の追求④新しい働き方や多様なニーズに対応できる柔軟性―の4点を掲げている。
 ①では、免震構造の採用、浸水対策、非常用発電機の設置など、さまざまな災害対策を講じることでより高い事業継続性を実現し、顧客や地域社会の“いざ”に備える設計としている。エントランスホールなど、災害時でも安全に帰宅困難者を収容可能な屋内スペースを広く設け、地域防災に貢献する。
 ②では、木材は二酸化炭素の貯蔵機能を持ち再生可能であることなど、脱炭素社会に適した「地球環境にやさしい」建築資材であることから、新・本店ビルの計画に当たっては、当初から木材の積極的な利用を検討。柱や床などの構造材を含め、これまで他に例のないレベルで国産木材を利用し、世界最大規模の木造ハイブリッド構造による超高層オフィスビルを目指す。木材には、戦後植林され利用期を迎えた国産木材を用いることで、造林、伐採、利用、再造林のサイクルを需要者として支え、山林の保全や水源の涵養、地方経済の活性化など、循環型社会の実現に貢献する。
 ③では、木材の利用により建築時の二酸化炭素排出量を削減することに加え、高効率の設備や地域冷暖房を導入することによって、省エネルギーの推進と、ビル使用に伴う二酸化炭素排出量の抑制に取り組む。電力については100%再生可能エネルギーの導入を目指す。屋上などを大規模に緑化し、生物多様性の保全とヒートアイランド現象の緩和を図る。また、1階フロアなどに地域の人の憩いの場となるパブリックスペースを設け、都市空間の環境改善を図る。その他、雨水の雑用水利用や水の循環システムの導入などを通じて水資源の保全を図る他、国際的なグリーンビルディングの認証プログラムであるLEEDにおいて最高レベルであるPlatinumの取得を目指す。
 ④では、現在の本館と新館を一体で建て替えることにより、フレキシビリティに富んだ広いフロア面積を確保し、多様な働き方を選択できるオフィス空間の実現を目指す。各フロアを内階段でつなぐことで、多様な組織の垣根を超えたコミュニケーションを活発化させ、顧客への付加価値提供を図る。吹抜けの設置による自然採光への配慮、屋内の緑化、医療施設等の設置を検討し、従業員が健康で高いパフォーマンスを発揮できる環境を実現し、健康経営のさらなる推進につなげる。障がいの有無等にかかわらず多様な人々が利用しやすいユニバーサルデザインの考え方を反映するよう取り組む。
 設計については、1998年にプリツカー賞を受賞した世界的な建築家であるレンゾ・ピアノ氏が主宰するRenzo Piano Building Workshop SAS(注1)、および三菱地所設計(注2)に委託しており、両社の協力を得て、国産木材の利用を含む多くのチャレンジングな取り組みを推進している。
 現在の本店である東京海上日動ビル本館(1974年竣工、設計者=前川國男建築設計事務所)については、その歴史的価値を明らかにし後世に伝えるために、有識者の協力を得ながら、記録調査と継承方法の検討を行うとしている。
 (注1)ピアノ氏が1981年に設立し、イタリア、フランスにオフィスを構える建築設計事務所。ロンドンのザ・シャードやニューヨークのニューヨーク・タイムズ・ビル、ホイットニー美術館など、これまで世界中で140以上のプロジェクトを手掛けており、日本でも関西国際空港ターミナルビルなどの実績がある。
 (注2)1890年に三菱社が設置した丸ノ内建築所をルーツとする三菱地所グループの建築設計事務所。丸の内ビルディングなど、丸の内エリアの物件を数多く手掛けている。