2021.07.26 ユーラーヘルメス日本支店 取引信用保険「カバーワン」発売、3年間の不払リスク補償はアジア初
ユーラーヘルメス信用保険会社日本支店は、6月から新たに3年間の不払リスクを保全する取引信用保険「カバーワン(Cover One)」の提供を開始した。通常1年以内の短期支払いを対象とする標準的な取引信用保険とは異なり、最長3年間の一つの売買契約に基づく販売先1社(シングルバイヤー)の売掛金について、取引信用保険を通じた保全を提供するもので、最長3年間の補償期間を確保できる取引信用保険はアジア初となる。同社営業本部長のラール・ブリス氏は「カバーワンは特に2~3年の中期プロジェクトを扱う機械メーカーなどで大きなニーズがあると感じている。積極的に展開していきたい」と意欲を示す。
日本の民間信用保険市場では、通常、物品やサービスの取引を行う企業に対して最長12カ月の標準的な取引信用保証が提供されてきた。大規模な長期プロジェクト向けには、テーラーメードの複雑なストラクチャード・クレジット・ソリューションがあるものの、その中間ともいえる2~3年のプロジェクトをカバーする標準化されたパッケージは存在していなかった。
中期プロジェクトは特に機械製造セクターでのニーズが高く、世界的にも有力な機械メーカーの多い日本はアジアの中で最も商品に適した市場といえることから、同社は、欧州で先行して扱っていた「カバーワン」をアジアで初めて取り扱うことを決めたという。
「カバーワン」は、最長3年間、信用リスクヘッジが可能であることに加えて、通常の取引信用保険では保険期間中に発生する可能性のある信用限度額(リミット)の減額や取り消しが行われない(ノンキャンセル)という特徴がある。
また、販売された商品の売掛金だけでなく、製品の出荷前に、製造に着手した場合のいわゆる「仕掛品コスト」を付保の対象に含む点も大きなポイントだ。特に機械製造セクターでは買い手との契約が一つだけである場合が多く、受注日からプロジェクトが完了し、最終的に支払いを受けるまでに非常に長い時間がかかるため、この新商品は特に有用だという。
さらに、保険料が比較的手頃で、加入手続きもシンプルな点も魅力となっている。海外プロジェクトだけでなく、国内プロジェクトや、12カ月未満のプロジェクトであっても対応が可能なため、間口の広い商品となっている。
今後は主に既存顧客の機械メーカーでの横展開を図ると同時に、機械メーカーの協会を通じた周知活動も見込んでいる。同時に、パートナーである保険代理店や大手ブローカーチャネル経由での販売も推進していく方針だ。すでに代理店などからは多くの問い合わせが寄せられており、その期待の高さがうかがわれるという。ラール氏は「欧州や米国と比べて日本は取引信用保険の加入率が低いが、その理由の一つは認知度の低さにあると考えている。取引信用保険について分かりやすいかたちで情報提供を推進すると同時に、日本企業のニーズにマッチした商品を提供していきたい」と述べ、「昨年は世界各国で企業に対して行政による手厚い支援が行われたが、コロナ禍の終息が見えてきた今、行政の支援も減っていくことが予想される。その結果倒産する企業も増える可能性があるため、今こそ取引信用保険を活用していただくことが重要だと思う」と商品の有用性を強調した。