2021.05.24 第一生命HD 20年度末決算、連結純利益が大幅増3637億円

第一生命ホールディングスが5月14日に発表した2020年度末決算によると、連結経常収益は前年同期比10.0%増の7兆8278億円、連結経常利益は同153.2%増の5528億円となった。親会社株主に帰属する当期純利益は3637億円。21年度末の連結業績予想では、経常収益は15.1%減の6兆6430億円、経常利益は13.4%減の4790億円、親会社株主に帰属する当期純利益は23.3%減の2790億円と予想している。

 20年度末のグループの営業業績では、新契約年換算保険料は、第一生命における上期の営業自粛等の影響や豪TALの前期の大型団体保険の反動減等により年度累計で前年同期比31.9%減の2288億円となった。第一生命が本格的な営業活動を再開した下期は、国内合計で8.6%減の水準まで回復し、海外も豪TALの影響を除けば米プロテクティブ・第一生命ベトナムの伸展もありプラスを確保している。保有契約年換算保険料は、グループ全体で同2.1%増の4兆546億円(為替調整後1.0%減)となった。
 新契約価値は、第一生命における上期の営業自粛等の影響や豪TALの団体保険の反動減等の影響により同25%減の1126億円(EEV計測基準変更前)となった。なお、コロナ禍の特殊な状況に鑑み、生涯設計デザイナーの給与補償(約170億円)と営業関連固定費の一部(約400億円)を新契約価値計算上の費用に含めず、EEVの修正純資産より直接控除する取り扱いを実施した。
 グループ修正利益は、第一生命の基礎利益の増加や有価証券売却損益・為替差損等の改善が大きく寄与し、前期を83億円上回る2828億円を計上した。第一生命での前期末からの金融市場の急速な改善に伴う金融派生商品損益の悪化や戦略的な新規出再額の増加に伴う臨時損失、第一フロンティア生命や米プロテクティブの減益を補うことになった。本年2月公表の修正予想2100億円に対しても、一時的な要因も含め、第一生命・第一フロンティア生命における有価証券売却益が想定以上に増加したことなどから超過達成を果たした。
 連結純利益は、第一フロンティア生命におけるMVA関連損益が前期から大幅に改善したことやジャナス・ヘンダーソン株式の売却益等により、前期から3313億円と大幅増加の3637億円を計上した。
 グループ各社の業績を見ると、第一生命の営業成績は、個人保険・個人年金保険計の新契約年換算保険料が前年同期比31.3%減の616億円。このうち第三分野は33.0%減の367億円だった。保有契約年換算保険料は前年度末比1.6%減の2兆769億円だったが、このうち第三分野は同0.3%増の6968億円と微増になった。基礎利益は順ざやの増加を主因に前年同期比14%増の4805億円を計上した。
 経常収益は前年同期比1310億円(同4%増)の3兆8117億円で、このうち、保険料等収入は同3%減の2兆2854億円だったが、資産運用収益が同2827億円増の1兆3571億円を計上した。経常費用は同479億円増の3兆4379億円で、このうち保険金等支払金が同328億円減の2兆3646億円、資産運用費用が同986億円増の4081億円、事業費が同52億円増の4037億円だった。経常利益は同831億円増の3737億円、当期純利益は同674億円増の1960億円だった。修正利益は、基礎利益の増加と有価証券売却損益や為替差損益の改善などが金融派生商品損益の大幅な悪化と再保険関連収支を補い、同16%増の1744億円となった。第一生命単体のソルベンシーマージン比率は、前年度末から47.2ポイント下がり937.2%となったが、引き続き高い水準を維持している。
 第一フロンティア生命の営業成績は、個人保険・個人年金保険計の新契約年換算保険料が前年同期比35.3%減の775億円だった。保有契約年換算保険料が前年度末比6.6%増の8610億円。基礎利益は前年同期比44%増の585億円と増加に転じた。
 経常収益は前年同期比1520億円増の2兆2171億円となった。このうち保険料等収入は同1878億円(同14%減)の1兆1675億円だったが、資産運用収益が同8018億円増の1兆495億円を計上した。経常費用は同571億円減の2兆1023億円で、このうち保険金等支払金が同139億円増の1兆6142億円、資産運用費用が同4849億円減の19億円、事業費が同174億円減の439億円だった。経常利益は同2092億円増の1147億円。MVA(市場価格調整)関連損益の大幅な改善等により、当期純利益は同1864億円増の863億円となった。修正利益は、一時的な有価証券売却益の増加があったものの、運用期間満了を迎えた変額年金の危険準備金戻入の反動減の影響等により、同10%減の571億円だった。
 ネオファースト生命の個人保険の新契約年換算保険料は前年同期比10.2%増の120億円。個人保険・個人年金保険計の保有契約年換算保険料は前年度末比0.8%増の1405億円だった。新契約の拡大に伴い、保険料等収入(再保険収入を除く)は前年同期比3%増の1411億円となった。基礎利益は同20億円増の▲138億円。保険金等支払(主に解約返戻金)が増加したものの、責任準備金等の戻入が相殺した結果、当期純損失は前年同期比21億円改善し▲141億円となった。修正利益(損失)も同21億円改善し▲141億円だった。
 海外生命保険事業のうち、米プロテクティブは、買収事業で一時的に利益が発生したものの、リテール事業における保険金支払増加に伴う損益悪化により、営業利益は前年同期比5%減の5億2200万米ドルとなった。当期純利益は、金融市場変動に伴う債券評価損や商業モーゲージローンに対する貸倒引当金繰入等の負担増により、同22%減の3億6200万米ドルとなった。
 豪TALは、基礎的収益力は、団体保険の減益をアステロン・ライフや個人保険の貢献が補い、前年同期比16%増の2億1900万豪ドルとなった。団体保険での特定団体の保険金支払増加は、10月から料率改定(料率引き上げ)を実施し、損益が改善している。当期純利益は、金利変動による影響等が加わり同11%増の1億7100万豪ドルだった。
 海外生保事業の修正利益は、豪TALが為替要因もあり大きな増益となったものの、米プロテクティブの減益や設立間もない第一生命カンボジアや第一生命ミャンマーの費用負担等も影響し、全体では前年同期比14%減の602億円となった。