2021.03.09 あいおいニッセイ同和損保・Finatext 次世代型保険販売システム、「デジタル募集基盤」を開発[2021年]

 あいおいニッセイ同和損保とFinatextは、デジタル時代に即した新たな顧客体験を創出する次世代型保険販売システム「デジタル募集基盤」を開発した。同システムは、プラットフォーマーが提供するサービスとマッチした保険商品をアプリやウェブ上で販売するもの。Finatextの保険クラウドシステム「Inspire(インスパイア)」を活用することで、低コストでの提供を可能にした。同システムの提供を通じて、シームレスな保険契約締結を実現させ、顧客の利便性向上を目指す考えだ。
 近年、デジタル・トランスフォーメーション(DX)の進展により、SNSやEコマースなど、ウェブやアプリを用いたデジタルサービスの利便性が高まっている。また、ウィズコロナ時代の到来により顧客の消費行動が変化する中で、金融業界におけるDXも加速しており、顧客にとって利便性の高い手続きやサービス提供が課題になっている。
 あいおいニッセイ同和損保では、こうした時流を踏まえ、顧客の購買行動に即した保険商品の提供に向け、Finatextと共同で「デジタル募集基盤」を開発した。開発背景について同社では、対面を軸とする既存のビジネスモデルとは異なるデジタル上で手続きが完結する新たな保険販売の仕組みの構築が必要だったと説明する。
 同システムは、Finatextが開発した保険クラウドシステム「インスパイア」の俊敏性や適応能力、拡張性などを生かし、第1弾として、旅行業などのサービス提供者向けに傷害保険を提供する。今後は、非対面販売が可能である簡易な保険商品を軸に開発を進める予定だ。
 同社経営企画部プロジェクト推進グループ課長補佐の安仲直紀氏は、「デジタルを活用した保険商品は、良質なUIを作るだけでは売れない。UIやUXの改善を続けながら、PDCAを回す必要がある」と語る。
 Finatextは、同システムについて、運用コストを下げる工夫をしたことで、高額な投資が難しい企業や、ロングテールを軸にする規模が小さい企業などに手軽に導入してもらうことが開発の狙いだという。システムが普及することで、顧客の消費行動や生活に寄り添ったサービス提供者との連携につなげたい考えだ。
 同社は、同システムの開発を進める上で、今までの既成概念や既存のオペレーションシステムに準じたアイデアでは、既存のシステムを使うことにつながり、膨大なコストが発生してしまうため、あいおいニッセイ同和損保の既成概念を改善する役割に徹した。
 また、IT分野の専門家同士の話し合いではなかったため、知識の差がある中で、要望や方向性などを伝えるコミュニケーションが課題だったが、あいおいニッセイ同和損保は社内での各部署との連携の徹底を図り、Finatextでは担当者がエンジニアとの間に立ち意見の調整などを行った。
 Finatextの保険事業責任者の河端一寛氏は、あいおいニッセイ同和損保について、「チャレンジングな社風や中小企業に寄り添う理念、ベンチャー企業とのネットワーク構築という姿勢などが連携に至ったポイントだ」と述べる。
 今後は、ますます多くの非金融事業者による金融事業への参入が加速していくことが見込まれる。両社は、非金融事業者への同システムを活用したあいおいニッセイ同和損保の商品の提供に加え、共同で出資するスマートプラス少額短期保険での新たな保険商品開発・提供を通じて非金融事業者の金融事業への参入を後押していく。
 あいおいニッセイ同和損保は今後、社内で開発を進めた商品・サービスのみではなく、非金融事業者やその先の顧客のニーズを追求した商品開発を進めていく。安仲氏は、「時流に合わせた新しい商品を開発し提供していきたい」と意気込みを語る。
 両社の今後の協業テーマは、既存の保険代理店モデルに加え、新種保険領域を中心にした次世代型のビジネスオペレーションの構築で、この取り組みを進めることで、両社を含め保険業界にも良い流れをつくっていきたいとしている。河端氏は、「今回のデジタル募集基盤は、その取り組みの第一歩になる」と語る。
 現在の産業構造は、プラットフォーマーがトップにいて、その下にサービス提供者、さらに下にメーカーがいる。そうした点から、あいおいニッセイ同和損保は、生活に寄り添ったサービス提供者やプラットフォーマーと提携し、新しい価値感を持つジェネレーションXYと呼ばれる若い世代にも支持される保険の提供も拡大したい考えだ。