2019.12.04 T&Dホールディングス クローズドブック事業に投資
T&Dホールディングスは11月26日、関係当局の承認を条件に、子会社のT&Dユナイテッドキャピタル(以下、TDUC)を通じ、米国のアメリカン・インターナショナル・グループ・インク(以下、AIG)からクローズドブック専業保険会社であるFortitude Group Holdings, LLC(以下、フォーティテュード)の持分25%を約637億円(1米ドル=108・69円換算)で取得することに合意したと発表した。米国のThe Carlyle Group L.P.(以下、カーライル・グループ)が新たに設立し運営する投資ファンドであるCarlyle FRL, L.P.(以下、カーライル・ファンド)と共に実施するもので、本取引完了により、フォーティテュードはT&Dホールディングスの持分法適用関連会社となる。
T&Dホールディングス、AIG、カーライル・グループの連名の発表によると、取引の全体像は、カーライル・ファンドとTDUCがフォーティテュードの76・6%の持分(総額約18億ドル)をAIGから取得するもの。現在はAIGが80・1%、カーライル・グループが19・9%(18年11月に同グループが取得)の持分となっている。取引完了後、カーライル・グループおよびその他投資ファンドの持分は71・5%となり、TDUCが25%、AIGが3・5%となる。2020年半ばの取引完了を予定しており、AIGは本件に際して5億ドルの特別配当を受け取る予定。
クローズドブックとは、新規引受を停止(ランオフ化)した保険商品の保有契約ブロックのこと。クローズドブック事業とは、他の保険会社が事業環境の変化等に応じて事業戦略・商品ポートフォリオを見直した結果として分離されるクローズドブックを取得・集約し、「バリューアップ」を通じて収益を実現する保険会社の事業形態・ビジネスモデル。
フォーティテュードは、英領バミューダ籍再保険会社であるFortitude Reinsurance Company,Ltd.(以下、フォーティテュード・リー)を傘下に置く持株会社で、フォーティテュード・リーは、18年にAIGにより同社の新規引受停止済みの保険契約(以下、クローズドブック)の一部を再保険引受(受再)する再保険子会社として設立された。
同社は、AIG由来の年金主体の長期・安定的な負債ポートフォリオを有し、バミューダ資本規制上の経済価値ベースの資本を十分確保し、再保険債務の責任を全うできる態勢を整えており、バミューダ有数の事業スケールを確保しているとされる。
また、カーライル・グループはワシントンDCを本社所在地としグローバルに展開するプライベート・キャピタル投資会社で、「コーポレート・プライベート・エクイティ」「リアル・アセット(実物資産)」「グローバル・クレジット」「インベストメント・ソリューションズ」の四つの分野で投資活動を展開している。19年9月30日時点の運用資産は2220億ドル以上で、現在、世界6大陸の33オフィスに1775人以上の社員を擁している。
今回の取引により、フォーティテュード・リーは新たに長期的株主を獲得し、かつ、再保険債務に対する強固な資本基盤を維持していくことになる。
AIGとカーライル・グループは、フォーティテュード・リーを独立企業として、グローバル保険業界の長期にわたる複雑な保険引受リスクに向けた遡及的再保険およびクローズドブックの主要なソリューション提供者としての地位の確立に努めていくとしている。本取引を通じて、カーライル・グループはフォーティテュード・リーの長期的な成長プランを支援し、また、フォーティテュード・リーはカーライル・グループが持つ多様な投資戦略を活用することにより、長期的な成長を追求していく。
T&Dホールディングスは、19~21年度中期経営計画「Try & Discover 2021~共有価値の創造~」において、「クローズドブック事業」を有力な新規事業領域の一つと位置付けており、今後、カーライル・グループおよびAIGと共に、戦略的パートナーとしてフォーティテュードに資本参画することで収益源泉の多様化を図っていく。また、本取引完了後、フォーティテュードへの取締役派遣を通じて同社経営に参画し、クローズドブック事業のノウハウを取得・蓄積していく。併せて、国内保険事業ポートフォリオとは異なるリスクの取り込みを通じたリスクプロファイルの多様化を追求していく。また、将来的な日本におけるクローズドブック事業の展開可能性についても追求していくとしている。