2019.11.21 かんぽ生命 20年3月期第2四半期決算、当期純利益は11%増に

かんぽ生命は11月14日、2020年3月期第2四半期決算を発表した。7月中旬以降の積極的な勧奨活動の停止等が影響し、新規・保有とも実績を下回ったが、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比11・0%増の763億円となった。キャピタル損失に対応した価格変動準備金の戻し入れを行った他、有配当契約の減少に伴う契約者配当準備金繰入額の減少等によるもの。経常利益、当期純利益等につき業績予想を上方修正し、親会社株主に帰属する当期純利益の修正後の業績予想に対する進捗率は56・9%となった。新契約年換算保険料は個人保険・第三分野ともに前年同期比で大きく減少した。個人保険の新契約年換算保険料は、前年同期比28・7%減の1316億円。そのうち第三分野の新契約年換算保険料は、同36・1%減の211億円。保有契約年換算保険料も、個人保険・第三分野ともに前期末比で減少した。個人保険の保有契約年換算保険料は、前期末比2・6%減の4兆5558億円。第三分野の保有契約年換算保険料は、同1・2%減の7443億円。収益追求資産(外国証券等)への投資残高は、前期末比1・0%減の10兆1191億円だったが、総資産に占める割合は13・9%までに拡大した。

個人保険の新契約件数は、前年同期比34・4%減の58万件に減少した。商品別では、普通養老が16万件(占率:27・5%、前年同期実績23万件)、特別養老が11万件(占率:18・9%、前年同期実績20万件)、普通終身(倍型)が9万件(占率:16・8%、前年同期実績21万件)、普通終身(引受基準緩和型)が6万件(占率:10・9%)、普通終身(定額型)が5万件(占率:10・0%、前年同期実績12万件)、学資保険が3万件(占率:6・3%、前年同期実績6万件)、普通養老(引受基準緩和型)が3万件(占率:5・5%)、特別終身が2万件(占率:4・1%、前年同期実績5万件)だった。
個人保険の保有契約件数は新旧区分合算で、前期末比2・7%減の2836万件だった。商品別の内訳は、養老保険が1114万件(占率:39・3%、前年度末実績1165万件)、終身保険が1292万件(占率:45・6%、前年度末実績1301万件)、学資保険が416万件(占率:14・7%、前年度末実績434万件)となった。
連結の経常収益は前年同期比2370億円減の3兆6613億円。保険料等収入は1兆8011億円で同2392億円減少した。保有契約の減少や7月中旬以降の積極的な勧奨活動の停止による新契約の減少などによる。資産運用収益は同439億円減の5740億円となった。総資産残高の減少に伴う利息及び配当金等収入の減少や金銭の信託運用益の減少などによる。責任準備金戻入額は同41億円減の1兆2093億円。経常利益は、基礎利益の微減に加え、金銭の信託運用益や金融派生商品費用等のキャピタル損益の減少等により、同200億円減の1415億円だった。修正後の業績予想に対する進捗率は52・4%。
経常費用は同2169億円減少して3兆5198億円となった。保険金等支払金は3兆1438億円で同2123億円減少した。満期保険金等の減少によるもの。資産運用費用は同16億円増の670億円だった。事業費は同35億円減の2535億円となった。このうち約7割を日本郵便へ支払う委託手数料および郵便貯金簡易生命保険管理・郵便局ネットワーク支援機構に支払う拠出金が占めている。今年度から導入された拠出金支払額は委託手数料に含めないことや、7月中旬からの積極的な勧奨活動の停止の影響から、第2四半期の委託手数料は前年同期比396億円減の1410億円となった。拠出金を含めた総額は、前年同期の委託手数料と比較し、108億円減の1698億円。これは、新契約の減少に伴う新契約手数料からの減少などによるもの。
総資産は前期末比1・2%減の73兆341億円、純資産は同4・9%増の2兆2401億円となった。
昨今の超低金利環境の継続を受け運用資産の多様化を進めてきた結果、株式、外国債券などの収益追求資産の残高は10兆1191億円、総資産比で13・9%となった。平均予定利率は1・69%。利子利回りは1・81%となり、385億円の順ざやを確保した。また、金銭の信託を通じて保有している国内株式の減損や価格変動リスクのヘッジに伴う金融派生商品費用が増加したことにより、キャピタル損益は574億円の損失となった。
連結ソルベンシー・マージン比率は1189・5%と引き続き高い健全性を維持している。
通期連結業績予想については、20年3月期第2四半期決算の結果を踏まえ、また、同第3四半期以降の業務運営の影響を勘案し、以下の通りとした。
▽経常収益:7兆1800億円(変更なし)
▽経常利益:2700億円(1900億円から上方修正)
▽当期純利益:1340億円(930億円から上方修正)
▽1株当たり当期純利益:237・79円(165・03円から上方修正)
19年7月中旬以降、顧客からの問い合わせ、訪問依頼に最優先で対応し、郵便局・かんぽ生命支店による積極的なかんぽ商品の提案を控えていることから、年度を通じた新契約は前期に比べて大きく減少するものと見込むとして、前回公表した業績予想からの主な変動要因を以下の通りとしている。
①保険料収入の減少②責任準備金積立負担の減少③資産運用収益の増加④お客さま対応に伴う費用の増加⑤新契約の減少に伴う販売費用の減少⑥契約者配当準備金繰入額の増加⑦法人税等支払の増加
【経常収益】「①保険料収入の減少」が見込まれるものの、それに伴う「②責任準備金積立負担の減少」が同時に見込まれること、加えて「③資産運用収益の増加」が見込まれることから、業績予想を据え置きとする。
【経常利益】「④お客さま対応に伴う費用の増加」が見込まれるものの、一方で「⑤新契約の減少に伴う販売費用の減少」および「③資産運用収益の増加」がそれを上回ることを踏まえ、業績予想を上方修正する。
【親会社株主に帰属する当期純利益】上記の理由による経常利益の上方修正に、「⑥契約者配当準備金繰入額の増加」および「⑦法人税等支払の増加」の影響を加味して、業績予想を上方修正する。
同社では、新契約の減少は、短期的には、保険料収入(予定新契約費)の減少を経費支出(新契約手数料)の減少が上回るため、業績にプラスの影響を及ぼすが、中長期的には、業績にマイナスの影響を及ぼすものであるため、顧客の信頼回復に全力で取り組み、企業価値の向上を目指すとしている。
今回の業績予想の修正理由による連結ソルベンシー・マージン比率への影響は軽微で、引き続き問題のない水準にあるとしている。
なお、株主還元方針は変更せず、1株当たり配当金を76円と予想している。