2019.10.08 主要損保各社 火災保険の商品改定 特約の新設等補償を充実 10月1日以降の始期日から適用開始

 主要損保各社は火災保険の商品を改定し、10月1日以降の始期日となる契約から適用を開始した。損保料率機構は2018年6月15日に、火災保険の保険料を設定する時の基準となる参考純率を住宅総合保険で平均5・5%引き上げたことを発表しており、主要損保各社はこれに対応したもの。近年は自然災害が増加している他、顧客ニーズも変化していることから、主要損保各社は新たに特約を新設するなど補償を充実させている。

 損害保険の保険料率は、事故が生じた場合に保険会社が支払う保険金に充てられる「純保険料率」と、保険会社が保険事業を営むために必要な経費などに充てられる「付加保険料率」からなっている。このうち純保険料率は損保料率機構が算出しており、参考純率として保険会社に提供している(会員会社はこの参考純率を参考にした上で修正、もしくは参考純率を用いず自社純率を算出することができる)。
 火災保険の参考純率は14年7月以来4年ぶりの改定で、関東甲信に被害をもたらした13年度の大規模な雪災や、九州が被害を受けた15年度の台風15号などの自然災害により、保険金の支払いが増加したことを受けたもの。冬季の凍結や老朽化などで水道管などに生じた事故による水濡れ損害での支払い増加も改定の要因となった。
 主要損保各社はこれを受け、個人用火災総合保険や分譲マンションの共有部分を対象とするマンション総合保険の保険料を見直し、建物の所在地や補償内容によっては保険料が引き上げ(一部引き下げ)となる。一方で、特約を新設するなど補償を充実させている。
 東京海上日動は「トータルアシスト住まいの保険」に「ホームサイバーリスク費用補償特約」「特定設備水災補償特約(浸水条件なし)(業界初)」「弁護士費用特約(日常生活・自動車事故型)」を新設する。「ホームサイバーリスク費用補償特約」は、不正アクセスなどのサイバー攻撃を受け、パソコンやIoT機器などが損傷した場合の修理費用や、これらの機器に保存されているデータが消失した場合の復旧費用などを補償する。また、同特約の付帯サービスとして「住まいのサイバーアシスト」が利用可能になる。
 「特定設備水災補償特約」は、従来水災による損害の程度が一定の条件に該当しない場合、保険金の支払い対象にならなかった自宅の空調・冷暖房設備や、充電・発電・蓄電設備(エネファーム、太陽光発電システムなど)、給湯設備(エコキュートなど)の特定の機械設備について、支払限度額(50万円、100万円、150万円から選択)を上限に、床下浸水による損害などを補償する。
 「弁護士費用特約」は、被害事故に遭い、相手方に法律上の損害賠償請求をする場合の弁護士費用または法律相談費用を補償する。
 同社は新設した特約のチラシを制作するとともに、代理店向けの研修・勉強会などを通じて開発の背景や内容を案内していく予定だ。
 損保ジャパン日本興亜はマンション共用部分を補償の対象とする「マンション総合保険」に「管理組合役員対応費用補償特約」を新設した。同特約では、役員が管理規約などに規定する業務に起因して法律上の損害賠償責任を負担した場合に、1事故につき500万円を限度に「管理組合役員賠償保険金」を支払う他、マンション管理組合または役員などに損害賠償請求がなされる恐れがあり、その解決のために費用を負担した場合に「初期解決費用保険金」を支払う。
 また、情報漏えい事故を発生させ、情報漏えい対応費用を負担した場合に「情報漏えい対応費用保険金」、区分所有者との管理規約などに関するトラブル・紛争でマンション管理組合が弁護士等費用を負担した場合に「弁護士等費用保険金(業界初)」を支払う。
 マンションは規模や戸数によって損害の程度が異なることから、規模に応じた優良物件割引も適用する。
 同社は代理店向けの研修会などを通じて内容を周知するとともに、個人用火災総合保険については家財保険の必要性が高まっている昨今の状況を踏まえ、家財保険や各種特約、「マンション総合保険」はマンションの規模に応じて割引を適用する優良物件割引などをセットで提案する「最適提案活動」を推進する。また、同社オリジナルのハザードマップ「THEすまいのハザードマップ」などを活用することで、顧客に納得感のある商品提案につなげていくとしている。
 三井住友海上は「GK すまいの保険」に「災害緊急費用特約」と「弁護士費用特約」を新設。「災害緊急費用特約」は損害保険金で支払われるべき場合に、保険対象の復旧のために負担した仮修理費用や仮すまい費用などを支払う(保険金額の10%または100万円のいずれか低い額)。
 「弁護士費用特約」は、日本国内で発生した被害事故によって死傷したり、財物に損害を受け、相手方に損害賠償請求する場合や法律相談する場合の費用を補償する。同特約は自動車保険で販売していたが、若者の車離れや高齢ドライバーによる事故の社会問題化を受け、自動車の保有や運転の有無に左右されない火災保険でも提供する。
 また、「日常生活賠償特約」を改定し、保険金額を1億円から3億円に引き上げる他、海外で起きた事故も補償する。一部の火災保険商品で販売していた「電車等運行不能賠償」は、商品問わず「日常生活賠償特約」で補償する。
 「GK すまいの保険 グランド」も加入しやすい水準に保険料を見直し、高齢者から需要のある「家具移動・電球交換サービス」を全契約に付帯(改定前は一部の特約をセットした場合のみ利用可)した。
 同社では、改定ガイドの配布や営業社員による研修などで代理店向けに周知し、改定説明資料や募集ツールなども充実させていく予定だ。また、家財補償の追加を提案するとともに、水災補償や地震補償などの必要性を案内する「水災・地震への備え提案」を継続する。
 あいおいニッセイ同和損保は、新商品として「タフ・すまいの保険」を発売し、これまでの商品(「タフ・住まいの保険」)の「災害緊急費用特約」、「個人賠償特約(改定後:日常生活賠償特約)、「携行品損害特約(改定後:自宅外家財特約)」の補償を拡充した。
 「災害緊急費用特約」は補償対象の事故を火災、落雷、破裂・爆発以外の事故に拡充する他、対象となる費用に点検調整費用や保険の対象以外の原状復旧費用を追加する。「日常生活賠償特約」は保険金額の設定上限を1億円から3億円に引き上げる他、一部の販売プランで補償していた「電車等運行不能賠償」を販売プラン問わず補償する。「自宅外家財特約」は、携行中の家財の損害に加えて別荘やトランクルームなどに収容される家財の損害も補償する他、保険金額の設定上限を50万円から100万円に引き上げるとともに、保険金支払い基準を時価から新価に変更する。
 同社では、改定ガイドブックや改定研修動画の活用、営業課支社による研修などで代理店向けに周知しており、今後は「(都道府県別)家財・地震訴求チラシ」を活用し、地震保険と家財補償のセット提案を進める。また、「ハザードマップwebアプリ」や、自然災害による被災建物棟数を予測するウェブサイト「cmap」を活用し、「水災・地震への備え提案運動」を継続して推進する。
 AIG損保は「ホームプロテクト総合保険」の「個人・受託品賠償責任補償特約」の補償内容を拡大した。従来は補償対象外だった財物損壊を伴わない電車などの運行不能による損害賠償も補償の対象になる。
 また、配偶者の定義を見直し、同性パートナーを被保険者に含めた他、「免責事由」の一部を改定し、建物の給排水設備に生じた凍結のみの損害について支払い対象を明確化した(給排水設備の損壊を伴う損害は補償の対象)。
 同社は従来と同様に代理店向け研修や代理店システムなどを通じて内容を周知し、顧客の理解を得ることに努めていく考えだ。また、今後も長期的に商品の品質を維持しつつ、顧客や代理店の意見を商品内容に積極的に反映させることにより、商品競争力と顧客満足度の向上を目指すとしている。