2019.08.02 損保協会 業界紙向け記者会見、20年度税制改正要望など報告
損保協会は7月26日、損保会館会議室で業界紙向け記者会見を開催し、第45回理事会などについて報告した。同理事会については、2020年度税制改正要望や同協会の外国人向け取り組みなどの説明があった。また、中学・高校向けの新たなリスク教育副教材としてパワーポイント版の作成についても報告された。
前日に行われた同理事会では、20年度税制改正要望について審議が行われ、①火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実②国際課税ルールの改定における対応③損害保険に係る消費税制上の課題解決④確定拠出年金に係る税制上の措置⑤地震保険料控除制度の充実⑥完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止⑦受取配当等の二重課税の排除⑧損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続―の8項目が機関決定された。すでに火災保険等に係る異常危険準備金制度の積立率において、本則積立率2%に加え21年度までの経過措置4%が定められている他、国際課税ルールの改定における対応など、ここ数年重要視していた各項目が一定程度手当てされたことから、20年度については特に重点項目を設けないとの方針に決まった。
報告事項では、「全米保険監督官協会(NAIC)国際保険フォーラムへの参加」「岡山県で開催した防災セミナー」「外国人向け取り組み」「理事会の開催日程」「委員会の正副委員長」について説明があった。外国人向け取り組みについては、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックの開催等に伴い、今後、訪日外国人が大幅に増加する見込みである一方、外国人が当事者となる交通事故の増加や、地震・風水害などの巨大災害が発生した場合に外国人の安全確保・情報提供態勢が不十分であるといった課題認識の下、同協会では第8次中期基本計画重点施策の一つである「その他環境変化に伴うさらなる役割発揮」の観点から、外国人向けホームページのリニューアルやHP周知ツールの作成、展開を進めていくとした。
この他、世代別の損害保険(リスク)・防災教育の取り組みについて報告された。同協会では、幼児から高齢者まで各発達段階に応じた身の回りのリスクや保険に関して身に付けてほしい知識・能力を3段階に分け、階層別に講演の実施や資料・ツールを用意している。このほど、中学・高校向けのリスク教育副教材について、実際に使用している教員の意見や、今後全面実施される予定の新学習指導要領のポイント「主体的・対話的で深い学び」およびICT教育への対応を踏まえ、パワーポイント版を作成し、同協会HPに掲載して無料でダウンロードできるようにした。
また、金融経済教育推進会議(金融広報中央委員会が事務局)で作成された金融リテラシー啓発用共通教材「コアコンテンツ」の講義用スライドを使って、同協会職員が大学でモデル講義を行ったことも併せて報告された。
なお、20年度税制改正要望8項目の内容は次の通り。
①火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実:火災保険等に係る異常危険準備金制度について、洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引き上げ)
②国際課税ルールの改定における対応:国際課税ルールの改定においては、損害保険ビジネスの実態を踏まえた手当てを行うこと
▽過大支払利子税制における保険負債利子の取り扱いについて、過度な事務負担とならないよう所要の手当てを行うこと
▽その他の国際課税ルールの見直しが行われる場合には、損害保険ビジネスの特性を踏まえ、正当な経済活動を阻害することがないよう、十分に留意すること
③損害保険に係る消費税制上の課題解決に向けて:税率の引き上げに伴って拡大する、損害保険に係る消費税制上の課題(「税の累積」「税の中立性の阻害」)を解消する抜本的な対策を検討すること
④確定拠出年金に係る税制上の措置:確定拠出年金制度について、個人型年金および企業型年金の積立金を対象とした特別法人税を撤廃すること
⑤地震保険料控除制度の充実:地震保険のさらなる普及のため、保険料控除制度の充実策について検討すること
⑥完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止:完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収を廃止すること
⑦受取配当等の二重課税の排除:受取配当等益金不算入制度について、「二重課税の排除」の観点から議論を行うこと
⑧損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続:既に収入金額を課税標準(100%外形標準課税)としている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続すること