2019.01.21 損保料率機構 第7次中期経営計画発表 「改革と創造」重点的に

 損害保険料率算出機構(浦川道太郎理事長)は1月4日、「第7次中期経営計画」の内容を同機構ウェブサイトに公表した。損害保険業界を取り巻く環境は、気候変動に伴う自然災害の激甚化や、少子高齢化、急速に進展するAI等の技術革新など、大きく変化している。同機構でもその変化に対応し、的確・迅速に社会のニーズを満たすために、改革課題・創造課題の取り組みを進めるとともに、情報発信を強化していくとしている。

 損保料率機構は、長期ビジョンである「今後の10年ビジョン(2013~22年度)」として、「保険契約者の利益の保護および損害保険業の健全な発達を支えるための基盤として、広く社会から評価される存在」を“目指す姿”としている。その実現に向けた集大成として、19年度から「第7次中期経営計画(19~22年度)」を新たにスタートさせる。
 第7次中期経営計画では「組織基盤」の整備・強化を行うとともに、「改革と創造」をテーマに、改革課題と創造課題に重点的に取り組む。
 【改革課題】
 改革課題では、第6次中期業務計画から継続または発展させた課題を達成することで、現行業務モデルにおけるアドバンテージ(業務成果の強み)の最大化に向けた取り組みを推進していく考え。これを損保料率機構の3業務別に示すと以下の通りとなる。
 「料率業務」では、①マーケット環境・リスク環境の変化への対応として、▽ASV(先進安全自動車)技術の普及、軽乗用車の普及・多様化、債権法改正、高齢化、住宅老朽化の進展への対応▽風水雪災に関するリスク評価モデル、地震保険リスク評価モデルおよび料率制度・体系の改善、また、②規制環境の変化および料率算出の高度化への対応として、▽IFRS(国際財務報告基準)・ソルベンシー規制等の動向を踏まえた料率関連業務のあり方の整理、料率検証・算出手法のバリデーション手法の改善、料率検証・算出の所要期間の短縮化―に取り組む。
 「自賠責保険(共済)の損害調査業務」では、①業務品質の向上として、基本品質の確保・向上、顧客視点でのサービス向上②支払適正化として、不正請求防止対策、医療費・施術費の適正化③損害調査システム基盤の機能強化として、次期損害調査システムの開発―に取り組む。
 「データバンク」では、①アジア諸国に対する技術協力の実施および保険関連団体との交流②事故防止・損害軽減等に向けた情報発信の強化―に取り組む。
 【創造課題】
 次に創造課題では、中長期(今後10~15年)の各種技術革新、リスク環境・マーケット環境の変化を見据えた新たな業務モデルの構築に向けた取り組みに積極的にチャレンジしていく。
 技術革新に対しては、「料率業務」「データバンク」で、コネクテッドカー・自動運転車の普及を想定した対応として、コネクテッドカー・自動運転車の普及を見据えた自動車関連データのプラットフォーム構築、参考純率上の対応領域・内容の整理および情報発信に取り組む他、「自賠責保険(共済)の損害調査業務」で、環境変化への対応として、ペーパーレス・オペレーションの実施、ICT・AI等デジタル技術の活用、研究―に取り組む。
 また、地球温暖化に対しては、「料率業務」で、気候変動に関する影響分析およびリスク評価への反映として、近未来の気候変動予測を用いた風水災に関するリスク評価の水準検証への反映および料率制度・体系の改善に取り組むとしている。
 【組織基盤】
 これら改革課題と創造課題の取り組みを支える組織基盤の整備・強化としては、①働き方改革②人財確保・育成③ガバナンス機能の強化―に取り組む。①では、ICT環境の整備および業務プロセスの自動化・効率化、管理部門業務処理態勢の再構築、多様な働き方への対応、②では、高度な専門性を有する人財の確保・育成、持続可能な要員体制の構築、③では、理事会によるガバナンスの強化、システムガバナンスおよびセキュリティ対策の強化、内部規律態勢の強化―に取り組む計画としている。