2019.01.17 郵政民営化委員会 郵政民営化の進捗状況検証で意見 生保協会等が見解表明 早期の「公正な競争条件」確保を
2018年12月26日に郵政民営化委員会が「郵政民営化の進捗状況についての総合的な検証に関する郵政民営化委員会の意見」を発表したが、これに対して、生保協会と生保労連が同日それぞれ見解を発表した。郵政民営化の進捗(しんちょく)状況についての総合的な検証は、郵政民営化法(平成17年法律第97号)第19条第1項第1号に基づき、3年ごとに実施している。今回の検証は、前回検証(15年4月)後の3年間を中心に行ったもので、郵政3社の株式上場(同年11月)後、初めての総合的検証となった。 今回、郵政民営化委員会が公表した「民営化推進に向けた日本郵政グループ各社等に係る状況」のうち、かんぽ生命関係の意見概要は次の通り。
【かんぽ生命保険の限度額】
▽限度額引上げ後の状況については、新契約の動向は保険料率の改定や商品改定に大きな影響を受けるため、現段階で、かんぽ生命保険の限度額改定の影響を見極めることは難しいと考えられ、引き続き、状況について注視。
【今後の課題と期待】
▽依然として保有契約の減少が続いており、その底打ち・反転が大きな課題。
▽人生100年時代を見据え、老後生活の長期化や医療・介護ニーズの変化への適切な対応が必要。また、高齢者のみならず、青壮年層のニーズに十分に応えられるよう、第三分野などの商品・サービスの充実を期待。
▽新中計に基づく具体的・戦略的な取組の適切な推進を期待。
生保協会は、限度額改定後の状況について、「通計部分引き上げにより、市場に一定の影響を及ぼしたものと認識している」として、さらなる限度額引き上げの検討には、前提として「『公正な競争条件の確保』が必要」との考えを示した。
「今後の課題と期待」に関しては、「以前から主張している通り、株式完全売却を通じた『公正な競争条件の確保』が実現しない中、市場に影響を及ぼす可能性のある業務範囲の拡大については到底容認できるものではない」としている。
今後のかんぽ生命の新規業務については、「郵政民営化委員会において、利用者利便の向上の観点と同様に、他の民間生命保険会社や市場に及ぼす影響についても慎重に調査審議をするとともに、引き続き、競争関係にある生命保険業界との十分な対話を行うことを要望する」とした。
また、18年12月25日にかんぽ生命の新規業務(引受基準緩和型保険、先進医療特約)が認可されたことを受け、申請に対して郵政民営化委員会でも言及された通り、業務内容に応じた「適切な態勢整備の確保」が重要であるとして、「調査審議段階からその態勢整備の状況を十分に確認し、引き続き、慎重な議論を行うことを要望する」とした。
生保労連は、「タイミングを見て金融2社の株式の保有割合が50%程度となるまではできるだけ早く売却」とするこれまでの日本郵政の主張に対し、今回、郵政民営化委員会として「当該株式処分を進めていくことが求められる」としたものの、売却時期等は日本郵政の経営判断に委ねられており、具体的なスケジュール等は一切示されていないことを指摘。仮に50%程度まで引き下げたとしても、かんぽ生命株式の多くを政府が実質的に保有しており、「民間会社との公平・公正な競争条件が確保されたとは到底言うことができない」としている。
また、限度額引き上げ後の状況については、生命保険では「ライフステージの変化に合わせて加入ニーズが顕在化することから、今後、その影響が大きくなっていく懸念がある点について留意が必要」とした他、今後の調査審議や具体的な検討に際し、「『公平・公正な競争条件の確保』等の観点から、日本郵政の保有するかんぽ生命の株式の完全売却への道筋を明確にすべきこと、その上で、慎重かつ十分な審議・検討が行われることをあらためて強く要望する」とした。
今回のかんぽ生命の新規業務認可に関しては、郵政民営化法に定める「他の生命保険会社との適正な競争条件を阻害するおそれがないと認められるとき」との条件に反しているとして、「新規業務等が認められることにより、組合員の雇用や生活に悪影響が及ぶことは、生保産業唯一の産業別労働組合として断固として認めることはできない」と主張。「郵政民営化法に則り、『他の生命保険会社との間の競争関係に影響を及ぼす事情』を考慮の上、適切な判断がなされるよう、あらためて要望する」とした。併せて、認可に際して郵政民営化委員会が指摘した事項に加え、「『適正な競争条件を阻害していないか』との視点から、十分なモニタリングを行うよう、強く要望する」としている。