2023.09.27 損保協会 定例会見 保険金不正請求の再発防止策示す、会員各社の顧客対応情報の集約・掲載等実施 他団体と連携した国民の金融知識向上図る取組も

損保協会は9月22日、業界紙向けの定例記者会見を行い、前日に行われた新納啓介協会長(あいおいニッセイ同和損保社長)の会見の内容を報告した。新納協会長ははじめに、ビッグモーター社(以下、BM社)による保険金不正請求問題、損保大手4社が企業向けの保険料を事前調整していた問題について謝罪し、これらの問題に関する再発防止策を示した。また、今後の同協会の活動として、国民の金融リテラシー向上を目指して他団体と連携強化を図る他、11月に開催予定のIAIS年次総会で、本邦損保業界の取り組みを国際的に発信する意向であることを発表した。(本日付2~3面に新納協会長ステートメント全文を掲載)

冒頭、新納協会長はBM社による保険金不正請求問題、および損保大手4社による保険料調整行為について「お客さま、ならびに関係者の皆さまにご迷惑とご心配をお掛けしていることを心よりお詫び申し上げる」と謝罪した。
続けて、会員各社においては、被害に遭った顧客はもちろん、本件をきっかけに過去の修理内容に不安を持つ顧客への対応に全力を尽くすとともに、原因分析・再発防止などの取り組みを進めているとした。
BM社による保険金不正請求に対する再発防止策等については、①損保協会特設ページを開設し、会員各社が公表した顧客への連絡事項、対応の集約・掲載を行う②顧客が円滑に等級の訂正手続きを行えるよう、複数の保険会社をまたいで等級訂正を行う必要がある場合の対応に関する整理・検討を行う③これまでの不正請求対策の点検・総括およびレベルアップ④「損害保険の保険金支払に関するガイドライン」の改定―の4点を推進すると報告した。
また、保険料調整行為に対する再発防止策については、今後「損害保険会社の独占禁止法遵守のための指針」の改定などを行い、信頼回復に努めると説明した。
次に、同協会における重点取り組みの進捗状況を報告。自然災害対応に向けた啓発については、今年が関東大震災から100年であることを機に、8月に同協会の地震保険特設サイト内で新納協会長と谷公一防災担当大臣との対談動画を公開したと述べた。
また、地域での啓発活動として、8月2日に行われた鹿児島損保会・南日本新聞社共催の「8.6水害から30年、改めて備えについて考える」、8月26日に催された東京都主催の「関東大震災100年イベント」、9月6日に開かれた岡山損保会・山陽新聞社共催の「西日本豪雨から5年、これからの防災まちづくりを考える」などの各種防災イベントに新納協会長が参加し、日ごろの備えの重要性について訴えたことなどを紹介した。
今後の取り組みとしては、国民の金融リテラシー向上を目指し、協力体制の強化のため、同協会と生命保険協会、生命保険文化センターとの保険教育に関する包括連携協定の締結を予定している他、11月に開催予定のIAIS年次総会において、金融庁主催の「気候変動・サステナビリティ」をテーマとするサイドイベントに登壇し、「自然災害における補償ギャップ縮小」に向けた本邦損保業界の貢献について、国際的に発信する意向を示した。
最後に、あらためてBM社による保険金不正請求、および損保大手4社による保険料調整行為について、「これらが大きな社会問題となり、損保業界に対する信頼が揺らいでいることは誠に遺憾」と述べた上で、「当業界に対する信頼回復に向け、これらの問題で被害を受けられた方を中心としたお客さまへの対応を最重要事項と位置付け、対応を進めていく」と強調した。
その後は、前日の会見の質疑応答で新納協会長が記者からの質問に回答した内容が発表された。
「BM社による保険金不正請求に関する協会としての再発防止策をもう少し具体的に教えてほしい」との質問には、保険金支払いに関するガイドラインにおいて、事故車の画像による損害調査についての留意点や、修理工場を紹介する際に考慮すべき点などを検討し、盛り込んでいきたいとした。
また、保険料調整行為に関する対策については、「独占禁止法遵守のための指針」で共同保険における留意事項を設けるといった改定を行い、会員会社の行動変容を促していくと回答した。
「顧客本位の業務運営という観点から見て、入庫誘導は適切なのか」との質問に対しては、「その行為が自賠責営業に結び付いているのであるならば、行き過ぎた行為であると認識するが、本来的にお客さまが事故に遭われて車を修理したいときに、お客さま自身がどこに整備をお願いすればよいのか分からないというケースは多い。そうした場合に優良な整備工場を紹介すること自体は、お客さまに寄り添ったサービスだと考えている」との見解を示した。
「顧客にとって利益相反になるような兼業代理店の経営についてどう思うか」という質問については、「日本においては自動車産業や不動産業界などで非常に兼業が多いのが実態だ」と述べた上で、「車や住宅を買う、その過程で保険に加入できるメリットは大きい」との見解を示し、そこで利益相反が起こらないよう、代理店との対話を通じて、顧客の利益を第一に考えたチェック機能を入れるなどの対策を講じていきたいとした。