2023.06.21 損保協会 定例会見 災害に便乗する悪質業者対応で効果、自賠責手続きで新たな共同システムも 主要課題の気候変動、DXへの対応報告

損保協会は6月16日、業界紙向けの定例記者会見を行い、前日に日銀記者クラブで行われた白川儀一協会長(損保ジャパン社長)の会見の内容を報告した。協会長として最後の会見に臨んだ白川協会長は、災害に便乗する悪質な業者への対策として、各支部で注意喚起チラシの作成・展開に加え、自治体・警察や関係団体と連携して関連情報の発信等を行ったことや、自賠責保険の損害調査業務において、保険会社間の調査・精算処理をペーパーレスで行うシステムの構築を決定したことなど、1年間の主要課題に関する取り組みについて説明した。(本日付4~5面に白川協会長ステートメント全文を掲載)

白川協会長ははじめに、5月に発生した石川県能登地方の地震、千葉県の地震による被害についてお見舞いの言葉を伝えるとともに、今後も被害状況の把握に努め、保険金の迅速な支払いに全力で取り組んでいくと述べた。また、昨年9月に発生した台風14号、15号による被害により、今年3月末時点で合計1578億円を超える保険金が支払われたことも併せて報告した。
新型コロナウイルス感染症については、5月8日に感染症法上の位置付けが「5類感染症」へと変更されるなど、平時への移行が慎重に進められていることに伴い、同協会としても、いわゆる「みなし入院」による入院給付金の取り扱いなどについて見直しを行う際には、保険契約者等に丁寧な説明を徹底するよう会員各社に周知したと説明した。
本年度の主要課題に関する具体的な取り組みについては、①気候変動、自然災害②デジタル・トランスフォーメーション(DX)―の2点への対応について報告した。
気候変動、自然災害への対応については、災害に便乗する悪質な業者への対策として、各支部で注意喚起チラシの作成・展開に加え、自治体・警察や関係団体と連携して関連情報の発信等を行った他、日本損害保険代理業協会(日本代協)、一般社団法人全国信用金庫協会(全信協)、および全国地方銀行協会(地銀協)とも連携し、機関誌やチラシ・レターを通じて注意喚起を実施したとした。
また、国土交通省の働き掛けで複数の登録住宅リフォーム事業者団体のホームページに、消費者に向けた注意喚起バナーを掲載してもらうなどの取り組みを行っていることも併せて報告し、こうした取り組みの効果もあり、国民生活センターによると、2022年度に全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数は約2100件と、前年度の約5000件から大幅に減少したことを明かにした。
防災・減災に向けた取り組みとしては、北海道支部・東北支部で水災に関する防災啓発セミナーをオンラインで開催するなど、各支部で地域のリスクに応じたハザードマップの普及活動を実施した他、国土交通省の水管理・国土保全局に対して、「災害に強く持続可能な社会基盤の維持・強化等に資する施策の推進」に関する要望書を提出するなどの活動を展開しており、今後も引き続き、「災害に強い社会の実現」に向けた防災・減災に関する取り組みを損保業界全体で推進するとした。
気候変動・サステナビリティ関連課題の対応としては、同協会が委託した研究調査の結果として、損保総研が「諸外国における自然災害による被害の縮小や保険普及に向けた取組の現状、課題、対策」を発刊し、国内外での損害保険の普及促進・官民連携の取り組みなどに生かされていることや、会員各社の気候変動やサステナビリティ関連課題への理解促進に向け、この1年で3回の会員向け気候変動勉強会をオンラインで開催したことなどを報告した。
加えて、昨今の企業に求められる人権尊重の責任のさらなる高まりによる会員各社の取り組み強化の必要性を踏まえて、同協会の行動規範を改定したことも併せて紹介した。
一方、DXへの対応については、顧客、代理店の利便性向上、事務手続きの簡素化に向けて標準化・共通化への各種取り組みを推進しているとし、保険料控除証明書のハガキ発行および電子データの提供を共同化するシステムである「保険料控除証明書発行サービス」は、会員会社11社が参加し、97%以上の地震保険契約が対象となるサービスになっていると紹介した。
また、交通事故・人損事案における自賠責保険の損害調査業務では、各社で自賠責保険の請求関係書類を同協会のデータベースを用いて共有し合い、保険会社間の調査・精算処理をペーパーレスで行うシステムの構築を決定したことや、住宅ローン等の融資に対する借入金の担保として、火災保険の保険金請求権等に対して質権を設定する際に使用する関係帳票について、保険会社および金融機関等の質権者の事務簡素化に資するよう共通で使用できる帳票フォーム、ならびに作成ツールを開発し、7月にリリースする予定であることを明かした。
サイバーリスク等のデジタル社会がもたらすエマージングリスクについては、特に中小企業への啓発活動に注力しているとし、チラシやテレビの他、事業者向け特設サイト「中小企業に必要な保険」を通じて啓発を行っていることや、各地方経済産業局等と連携し、「事業継続力強化計画」認定取得に関連したセミナーを開催したことなどを紹介した。
最後に白川協会長は、この1年間の周囲の支援、協力に感謝の意を示した後、同協会としては引き続き、会員会社や国、自治体、関係団体と連携し、本部・支部一体となって各種課題の解決に向けて取り組んでいくと述べ、会見を締めくくった。