2019.12.27 ■生保協会 集団的エンゲージメント実施へ、気候変動の情報開示充実求める[2019年12月23日]
生命保険協会は12月23日、2017年度から実施している同協会のスチュワードシップ活動ワーキング・グループ参加会社11社(※)による集団的エンゲージメントを19年度も実施することを明らかにした。昨年度からの継続的な取り組みである「株主還元の充実」と「ESG情報の開示充実」に加えて、本年度は「気候変動の情報開示充実」を新たなテーマに、上場企業142社を対象に同日から書簡の送付を開始し、本年度末までに対面・電話によるフォローアップを行うこととしている(※朝日生命、かんぽ生命、ジブラルタ生命、住友生命、第一生命、大樹生命、大同生命、太陽生命、日本生命、富国生命、明治安田生命)。
同日、東京都千代田区の同協会会議室で行われた説明会に登壇したスチュワードシップ活動ワーキング・グループ座長の石井智親氏(日本生命株式部スチュワードシップ推進室長)は、今回新たに加わったテーマ「気候変動の情報開示充実」について、温室効果ガス排出量の多い上位50社のうち、TCFD提言に賛同していないことから気候変動に関する情報開示方針等の確認が必要な企業17社に対して、情報開示状況を確認し、必要に応じて情報開示の促進を要望する書簡を送付すると報告した。17社の内訳についての明言は避けたものの、化学や鉄鋼、エネルギー関連の企業が含まれていると説明した。
今回新たなテーマを加えた理由については、TCFD提言が、企業が自社のビジネス活動に影響を及ぼす気候変動の「リスク」と「機会」を把握し、それを財務情報として開示することを推奨していることを挙げ、「TCFD提言には、日本国内の212の企業団体が支持を表明している。企業にとってなじみのあるフレームワークを用いて、われわれも企業との間でリスクと機会を共有していきたいと考えた」とした。
17年度から継続するテーマである「株主還元の充実」については、長期間配当性向が30%未満、かつ自己資本比率が高く投資実績に乏しい企業67社に対して株主還元の向上を引き続き要望する。
これまでの活動実績としては、2年累計で約4割が配当性向30%の基準をクリアし、論点が解消しているほか、基準未達の大半が増配するといった成果が出ているという。
また、18年度から実施している「ESG情報の開示充実」に関しては、時価総額上位300社のうち、統合報告書の開示がない企業65社に対して統合報告書の開示を要望する。18年度の働き掛けに対して統合報告書を開示した先は1割未満と低位にとどまったことから、本年度は、原則対面対話でフォローアップを行う方針だ。
一方で、統合報告書の開示は無いものの、ESG情報の開示を拡充した企業も見られたほか、対面対話を行った先の多くは統合報告書の作成に前向きな姿勢を確認していることから、今後の実現が期待されるとした。