2024.04.02 金融庁 損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議 保険金不正請求・保険料調整問題受け開催 健全な競争環境実現へ制度・監督上の対応検討
金融庁が事務局を務める「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」の第1回会合が3月26日に行われた。損害保険業をめぐって、保険金不正請求問題や保険料調整行為問題が相次いで発生し、関係する保険会社や代理店に行政処分が下されたことを受け、顧客本位の業務運営の徹底や、健全な競争環境の実現の観点から、主に制度・監督上における必要な対応について検討する目的で開催された。メンバーに選任された学者や保険業に関連する実務家のほか、オブザーバーとして関係業界団体や関係省庁の担当者が出席した。初回は、事務局から主要論点が示されたほか、各メンバーが現時点での考えを述べた。
有識者会議のようすは、金融庁公式YouTubeチャンネルでライブ配信された。今回は、洲崎博史氏(同志社大学大学院司法研究科教授)を座長に、大村由紀子氏(三浦法律事務所弁護士)、金岡京子氏(東京海洋大学理事・副学長)、嶋寺基氏(大江橋法律事務所弁護士)、滝沢明子氏(デロイト・トーマツ・コンサルティング合同会社執行役員)、中出哲氏(早稲田大学商学学術院教授)、永沢裕美子氏(公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会代表理事副会長)、増山啓氏(三菱重工業㈱事業リスク総括部リスク管理室リスクマネージャー)、山下徹哉氏(京都大学大学院法学研究科教授)の8人がメンバーに名を連ねた。また、日本損害保険協会、外国損害保険協会、生命保険協会、日本損害保険代理業協会、消費者庁、経済産業省、国土交通省がオブザーバーとして加わった。
会議の冒頭、事務局から会議の趣旨と、保険金不正請求問題、保険料調整行為問題のそれぞれで、事案の概要や行政処分の内容、また、保険会社が提出した業務改善計画について報告された。その上で、論点として、保険金不正請求問題については、①大規模な乗合代理店に対する実効的な指導・監督をどのように確保していくべきか。また、損害保険代理店の従業員(使用人)の品質向上をどのように図っていくか②損害保険会社における支払管理態勢をどのように強化していくべきか③損害保険会社による代理店手数料ポイント制度などにおいて損害保険代理店の評価を適切に行うためには、どのような見直しが必要か④乗合代理店が適切な比較推奨を行い、消費者が適切な保険商品を選択するため、どのような見直しが必要か⑤損害保険代理店に対し、利益相反が生じる業務の兼業を禁止すべきか。または、兼業は認めつつも、利益相反を防止する措置を実施すべきか。後者の場合にはどのような措置が考えられるか―の5点が示された。
保険料調整行為問題も同様に、①共同保険について適正な競争環境を整備するためには、どのような対応が必要か②企業向け保険契約のシェアに影響を及ぼす場合があったとされる政策株式保有や本業支援などの慣行をどのように是正していくべきか③適切な契約内容の提案を含め、実効的な保険引受管理態勢をどのように確立するか④企業内代理店のあるべき姿をどのように考えるか⑤独占禁止法等を遵守するための適切な法令等遵守態勢をどのように確立するか―の5点が論点に挙げられた。
加えて、両問題に共通する論点として、①損害保険会社による代理店への本業支援(入庫紹介、物品・サービスの購入、社員の出向等)が、代理店による保険商品の比較推奨を歪ませ、その結果、保険契約者の適切な商品選択が歪められていたおそれもあるが、保険会社による代理店への本業支援のあり方をどのように考えるか②当局による保険会社および代理店への実効的な検査・監督をどのように確保するか―の2点が示された。
次に、損保協会から、両問題についての要因の分析や、同協会としての取り組みの全体像が報告された。取り組みでは、3月に会員会社・代理店の関係や商慣習の見直し、適正な競争環境などをより早期に整備する観点から、同協会内に「信頼回復に係るプロジェクトチーム」(業務抜本改革推進PT)が設置されたことなどが説明された。
会議後半に、メンバー8人が現時点でのそれぞれの考えを述べて、会議が終了した。今後、具体的な論点について月に数回程度会議が開かれ、6月末には中間報告書を取りまとめる予定。その後、法改正の必要性などが金融当局で検討され、その結果によって金融審議会の開催など必要な対応が行われる。