2023.12.18 東京海上日動 JAXAとパートナーシップ、宇宙リスクソリューション事業で共創 民間商業ステーション新規参入を後押し

東京海上日動と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(山川宏理事長、以下、JAXA)は、「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」の枠組みのもとで、「宇宙リスクソリューション事業」に関する共創活動を開始した。

「JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ」は、宇宙ビジネスを目指す民間事業者等とJAXAとの対話から始まり、事業化に向けた双方のコミットメントを得て、共同で事業コンセプト検討や出口志向の技術開発・実証等を行い、新しい事業を創出するプログラムのこと。2018年から始動し、これまでに40を超えるプロジェクト・活動を進めている。
両者の共創活動では、東京海上日動の宇宙保険分野での実績・ノウハウと、JAXAの宇宙ミッションでの技術的なリスクマネジメントのノウハウを組み合わせ、民間商業ステーション事業を第一段階のターゲットとして、宇宙産業に新規参入を検討する企業の後押しや事業継続を支える新たな事業を共創していく。
東京海上日動では、この共創活動の成果を利用し24年度以降段階的に、①民間商業ステーションの運用に関するリスクの定量評価②前記①に関するリスク低減コンサルティング、保険商品・付帯サービスの提供③宇宙スタートアップに対する包括的なリスクマネジメント手法の提供―といったサービス提供を開始していく予定。
政府が今年6月に決定した新たな「宇宙基本計画」では、宇宙安全保障の確保や産業の競争力強化のために、官民が連携して宇宙開発利用を推進していくことの必要性や、民間事業者のさらなる参画の重要性が言及されている。宇宙産業が成長する中で、▽宇宙空間で衛星の点検や修理、燃料補給、機器交換、スペースデブリの除去等を行う「軌道上サービス」▽30年に運用を終了する国際宇宙ステーション(ISS)後の民間商業ステーション事業の進展が予想される30年代以降の地球低軌道活動「ポストISS」を見据えた民間商業ステーション事業に対するリスク評価▽ミッションの成功確率を上げるためのリスク低減コンサルティング▽サステナブルな宇宙環境の実現に向けたスペースデブリ対策―などの重要性がますます高まっている。
一方で、軌道上サービス等の新規実証ミッションは過去の実績が少なく、軌道上におけるリスクの可視化・定量化が難しいことから、現状では適切な保険の手配が困難なケースなどがあり、企業の新規参入時の課題となっている。また、現状ではスペースデブリによるリスクを精緻に評価する手法が確立されていないため、対応策が求められているという。
東京海上日動は、グループのデータ中核機能を担う東京海上ディーアール㈱と連携し、これまでロケット打ち上げ事業者や衛星メーカー等向けの保険提案・リスクコンサルティングサービスを提供してきたが、今後、この共創活動を通じて、民間商業ステーション事業やスペースデブリ等周辺の宇宙環境に関するリスク評価手法の確立を目指す。これにより、新規参入事業者が保険を付保しやすい環境を整えるとともに、事業者と一体となってミッション成功率の向上を支援していく。
また、JAXAは、有人宇宙活動をはじめとするJAXAプロジェクトで活用されてきたリスク定量化手法やプロジェクトリスク評価手法を民間の宇宙関連事業に適用する際の有効性を検証し、技術的観点から当該事業のフィージビリティスタディを支援する。これにより、ポストISSや軌道上サービス等の新たな事業分野へ幅広いプレーヤーが参入しやすい環境を整え、成長著しい宇宙産業市場の拡大を後押しする。