2023.05.19 かんぽ生命 22年度末決算 当期純利益は38%減、新契約保険料は42%増と緩やかに回復

かんぽ生命は5月15日、2022年度末(22年4月1日~23年3月31日)決算を発表した。連結業績では、新型コロナウイルス感染症に係る保険金支払いの増加に加え、有価証券の売却損の増加によりキャピタル損益が悪化し、経常利益は前年同期比67.0%減、親会社株主に帰属する当期純利益は同38.2%減となった。個人保険新契約年換算保険料は同42.7%増と緩やかな回復にとどまった。23年度の連結業績予想については、経常収益5兆8900億円(前期比7.7%減)、経常利益1400億円(同19.1%増)、当期純利益720億円(同26.2%減)、1株当たり当期純利益188円13銭と見込む。

かんぽ生命は4月28日に2月14日に開示した2023年3月期の連結業績予想の修正を発表し、経常収益6兆3200億円、経常利益800億円、親会社株主に帰属する当期純利益870億円、1株当たり当期純利益222円25銭としていたところ、経常収益6兆3700億円(+500億円)、経常利益1100億円(+300億円)、親会社株主に帰属する当期純利益970億円(+100億円)、1株当たり当期純利益247円91銭にそれぞれ予想を引き上げていた。連結業績予想策定時(22年12月末の経済前提を使用)と比較して、運用環境が好転したことにより資産運用収益が増加する見込みとなったことによる。
今回発表された連結主要業績では、経常収益は前年同期比746億円減の6兆3795億円で、そのうち保険料等収入は同2180億円減の2兆2009億円、資産運用収益は同98億円増の1兆1590億円、責任準備金戻入額は同1509億円増の3兆152億円だった。経常費用は同1638億円増の6兆2619億円で、このうち保険金等支払金が同613億円減の5兆4879億円、資産運用費用が同1766億円増の2464億円、事業費等が同407億円増の5197億円となった。以上の結果、経常利益は同2385億円減の1175億円で、親会社株主に帰属する当期純利益は同604億円減の976億円となった。総資産は前期末比6.7%減の62兆6873億円、純資産が同1.9%減の2兆3753億円。
かんぽ生命単体ベースでは、新型コロナウイルス感染症に係る保険金支払いの増加、保有契約の減少、および新しいかんぽ営業体制の構築に伴う事業費等の増加により保険関係損益が減少し、加えて順ざやが減少したことにより、基礎利益は前年同期比2374億円減の1923億円となった。経常利益は同2381億円減の1176億円。新型コロナウイルス感染症に係る保険金支払いの増加については危険準備金の超過繰入額を一部縮小。加えて、キャピタル損益の相当額等については従来通り価格変動準備金を取り崩し、当期純利益は同600億円減の977億円となった。
契約の状況では、新契約年換算保険料(個人保険)は658億円で前期比42.7%増。このうち第三分野は64億円で同196.3%増。保有契約年換算保険料(個人保険)は3兆2176億円で前期比9.1%減。第三分野は5930億円で同5.4%減とそれぞれ減少が続いている。
個人保険の新契約件数は前期比81.3%増の31万件。商品別では、養老保険が22万件(占率70.5%、前期比6.4ポイント低下)、終身保険が5万件(占率17.2%、同6.7ポイント上昇)、学資保険が2万件(占率8.0%、同3.7ポイント低下)だった。保有契約件数は、新旧区分合算で前期比8.0%減の2098万件。商品別では、養老保険が677万件(占率:32.3%、前期比2.1ポイント低下)、終身保険が1109万件(占率:52.9%、同2.2ポイント上昇)、学資保険が297万件(占率:14.2%、同0.1ポイント低下)だった。
資産運用については、株式、外国証券等の収益追求資産については、ヘッジコストの上昇から売却したこと等により残高は減少。国内の公社債については、安定的な収益が確保できる資産として長期債および超長期債を中心に運用を行ったが、償還等により残高は減少した。貸付金については、郵政管理・支援機構への貸付、シンジケート・ローン、地方公共団体貸付、保険約款貸付を実施しており、郵政管理・支援機構への貸付金の償還により残高は減少した。
連結の資産運用収益については、総資産残高の減少に伴い利息及び配当金等収入が減少したものの、金銭の信託運用益や有価証券売却益等が増加したことから、前記の通り1兆1590億円となった。資産運用費用については、有価証券売却損等の増加により、前記の通り2464億円。その結果、資産運用収支は、前期比1667億円減少し、9125億円となった。
順ざや・利回りの状況は、順ざやが940億円で、平均予定利率が前期比0.01ポイント低下し1.67%、利子利回りが同0.07ポイント低下の1.85%だった。また、キャピタル損益は638億円の損失(前期は56億円の黒字)となった。
連結ソルベンシー・マージン比率は、前期末から36.4ポイント低下し1009.1%。
24年3月期の連結業績予想については、経常利益は、①新型コロナウイルス感染症に係る損失影響の減少②事業費等の増加③保有契約量の減少④利息配当収入の減少および為替に係るヘッジコストの増加(順ざやの減少)⑤キャピタル損益の増加―の要因により1400億円、当期純利益は前記要因に加え、⑥価格変動準備金の戻入額の減少⑦法人税等の減少―の要因により720億円と予想。かんぽ生命単体については基礎利益2000億円程度と見込む。