2023.02.21 東京海上HD 22年度第3四半期決算、修正純利益3278億円計上 為替影響縮小、海外は主要拠点が好調

東京海上ホールディングスが2月14日に発表した2022年度第3四半期決算によると、連結経常収益は前年同期比19.2%増の5兆2120億円、連結経常利益は同30.6%減の3462億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同27.4%減の2714億円となった。修正純利益はコロナ関連や自然災害の発生保険金の増加を主因に前年同期比で1451億円減益の3278億円で、昨年11月公表の通期予想に対して82%の進捗率(過去5カ年平均は75.7%)。通期の業績予想についてはいずれも11月予想から変更なしとしている。

グループ修正純利益の11月予想4000億円については、国内は円高進行に伴い為替のマイナス影響が縮小したことを主因に11月予想を上回って進捗しているほか、台湾コロナ(▲150億円)や北米寒波Elliottを主因とした海外自然災害(▲60億円)などの主に一過性の要因によるマイナスを先進国を中心とした好調な海外事業別利益の上振れ等が打ち返すことを見込み、修正しない考えを示した。一過性の影響を控除したベースでの通期修正純利益は5800億円程度を見込み、世界トップクラスのEPS Growthの実現に向けた足元の基調は引き続き堅調に推移しているとした。
第3四半期末のグループ連結の正味収入保険料は順調に推移し、前年同期比9.6%増(除く為替)の3兆5096億円となった。このうち国内は料率改定に伴う火災の増収を主因に1兆9254億円(同4.1%増、除く為替)。海外はハードマーケット環境を生かし、引き続き厳格な引受規律を維持したレートアップや引受拡大等により1兆5844億円(同17.0%増、除く為替)となった。
また、グループの生命保険料は、国内は事業保険の解約増加により同8.2%減(除く為替)の3744億円、海外はTokio Marine HCC(TMHCC)のメディカルストップロス保険やデルファイの就業不能保障保険を中心としたレートアップや引受拡大等により15.8%増(除く為替)の4585億円となり、全体では同3.6%増(除く為替)の8324億円だった。
東京海上日動の保険引受利益は前年同期比1040億円減益の443億円となった。11月公表の通期予想830億円に対する進捗率は53.4%。自然災害や各種準備金等の影響を控除した保険引受利益は1280億円で、11月公表の通期予想1631億円に対する進捗率は78.5%だった。
正味収入保険料は同4.6%増の1兆7921億円。家計地震・自賠責を除く民保合計では同5.7%増の1兆6334億円だった。種目別に見ると、火災は料率改定効果に加え、22年10月商品改定前の契約増等により同20.1%増の3202億円。通期予想を上回る高い増収率となっているが、第4四半期には保険期間短縮に伴うマイナス影響の発現を予定しているという。海上は物流基調(物価上昇)等により、同15.4%増の618億円。傷害はコロナ影響の反動等による旅行保険の増収等により同10.7%増の1437億円。自動車は22年1月の料率改定(▲2%)による単価の減少を補償拡充等で一定打ち返し、同0.3%減の8334億円となった。自賠責は21年4月の料率引き下げ(▲6.7%)と半導体不足による新車販売減の影響により同5.8%減の1584億円。増収率は第4四半期にかけて車販の回復により増加を見込む。その他新種は費用利益保険・賠償責任保険を中心とした増収により同5.5%増の2743億円で、第4四半期には一定の増収を見込んでいるとした。
発生保険金は、円高に伴う外貨建支払備金積増の減少や想定を下回る国内自然災害・コロナ保険金により11月予想(1兆4342億円、20.1%増)を下回って進捗。前年同期から1984億円(22.9%)増加し1億649億円となっており、その要因は、国内自然災害の増加・外貨建支払備金積増の他、コロナ保険金の増加(約250億円)、南アフリカ洪水(約50億円)、自動車保険のコロナ反動、大口事故の増加など。民保E/Iベースの正味損害率は円高に伴う外貨建支払備金積増の減少等により11月予想を若干下回るペースで進捗し、前年同期から10.3ポイント上昇して66.7%。事業費率は同0.2ポイント低下し31.6%で、コンバインド・レシオ(民保E/Iベース)は同10.1ポイント上昇して98.2%となった。
資産運用等損益は、前年同期から374億円増益の2067億円。このうち、ネット利息及び配当金収入は海外子会社配当金や政策株式配当金が増加したことにより同467億円増収の1753億円、売却損益等計(キャピタル)は11月予想時点から円高が進行したことに伴う為替関連デリバティブの金融派生商品費用の減少と有価証券売却損益の上振れ等により652億円と11月予想(579億円)を上回って進捗。前年同期比では、円安や内外金利差拡大等により為替差益が増加したものの、為替関連デリバティブによる金融派生商品費用(含むヘッジコスト)の増加がこれを上回ったことを主因として38億円の減益だった。
なお、政策株式売却額は1020億円(前年同期比+110億円)、売却益は830億円(同+100億円)だった。
以上の結果、東京海上日動の経常利益は同688億円減益の2523億円、当期純利益は同1067億円減益の1397億円となった。単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比4.5ポイント低下し、838.8%。
日新火災の保険引受利益は前年同期比70億円減益の69億円。正味収入保険料は同7億円増収の1106億円だった。経常利益は同104億円減益の74億円、四半期純利益は同52億円減益の59億円だった。
東京海上日動あんしん生命の新契約年換算保険料は前年同期比2.6%増の383億円となった。保有契約年換算保険料は前年度末比1.2%減の8011億円。基礎利益は同58.3%減の166億円だった。当期純利益は同52.2%減の146億円。修正純利益は153億円で11月予想(270億円)対比の進捗率は57.0%。修正純利益は、コロナ保険金が上期に集中していること、デルファイへの運用委託に係る分配金が第4四半期に計上されることを考慮すると、11月予想に対してインラインで進捗しているとした。単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比55.9ポイント低下し1072.6%となっている。
海外保険事業については、正味収入保険料は各拠点における成長施策の実行(レートアップや引受拡大等)等により、合計で前年同期比14.1%(除く為替)増の2兆1065億円と、TMHCCなど北米拠点を中心に11月予想対比で順調に進捗している。北米の正味収入保険料は同10.8%(除く為替)増の1兆4819億円となった。
事業別利益は、台湾コロナの影響(▲742億円)を主要拠点での好調な業績や円安進行(+526億円)が打ち返し、合計は為替影響を含むベースで0.4%増の1873億円。除く為替では26.5%減となる。ハリケーンイアン、台湾コロナの影響があったものの、11月予想(2500億円)対比の進捗率は74.9%とインラインで進捗しているとした。通期では、11月予想対比で、北米寒波Elliottの影響(税前約▲150億円)や台湾コロナの損失拡大(税前▲150億円)、円安進行の縮小があるものの、主要拠点等の好調な業績がこれらを一定程度打ち返す見込みとしている。フィラデルフィアはハリケーンイアンの影響があったもののコンバインド・レシオは92.3%と堅調、デルファイは好調な保険引受と資産運用が継続、TMHCCはコンバインド・レシオを87.9%と良好な水準に保ちつつ着実に増収を実現しているとした。