2022.05.17 三井住友海上 年内打上予定の民間月着陸船に提供、ispaceと「月保険」で合意
三井住友海上は4月21日、同社が出資している宇宙スタートアップ企業㈱ispace(袴田武史代表取締役)と月面ビジネスにおいて発生するリスクを補償する新たな保険「月保険」の組成に関する覚書を締結したと発表した。ispaceが本年年末ごろに打ち上げを予定しているランダー(月着陸船)のミッションに向け、年内に条件を確定する予定。
ispaceは「Expand our planet. Expand our future.~人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ~」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業。日本、ルクセンブルク、米国の3拠点で活動し、170人以上のスタッフが在籍している。民間月面探査プログラム「HAKUTO―R」を発表し、月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供することを目的とした小型のランダー(月着陸船)と、月探査用のローバー(月面探査車)を開発、民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っている。
「HAKUTO―R」では、月面着陸と月面探査の2回のミッションを行い、月面データの取得サービスと高頻度の地球―月輸送サービス構築に向けた技術検証を行う。SpaceXのFalcon9を使用し、2022年に月面着陸ミッション(ミッション1)、24年に月面探査ミッション(ミッション2)の打ち上げを行う予定だ。
ミッション1では、22年4月現在で使用する予定のランダーのフライトモデルの組立・統合の最終段階を迎えている。推進系の取り付けや組立は完了し、電気的統合やペイロード、外部センサー等の統合が完了次第、6月上旬に最終試験をドイツのオットブルンで開始し、秋ごろには打ち上げ予定地であるフロリダへ輸送して打ち上げの準備を進める予定。
三井住友海上は19年2月に「HAKUTO―R」のコーポレートパートナーに就任した際、月保険の開発に関する協業を発表しており、ispaceは、スケジュールや月への航路、着陸の際に起こり得るリスクなどの情報を提供し、三井住友海上がこれらのリスクを分析してきた。両社では打ち上げ以降、月遷移軌道上でロケットからランダーが切り離され、月までの長期間の航行の期間や月面着陸するまでの間に発生する損害を補償する保険について引き続き協議を行い、打ち上げから月面着陸までをシームレスに補償する月保険を22年内に契約する予定としている。
ispaceの袴田代表取締役は「保険は月面開発にとっても重要な役割を持つ。どんな事業でもリスクを低減する仕組みが必要だが、月面事業にはまだその仕組みがない。打ち上げから着陸までの包括的な保険の実現は、シスルナ経済圏実現に向けた新たな一歩となる。三井住友海上と協業し、新しい挑戦を支える新しい保険を創出することで、新しい事業者がより参加しやすい環境、産業を作っていく」としている。