2021.12.23 損保協会定例会見 22年度税制改正要望の結果報告、異常危険準備金積立率引上げ
損保協会は12月17日、業界紙向けの定例記者会見を行い、2022年度税制改正要望の結果を報告した。要望した全9項目のうち、「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」の積立率を現行の6%から10%に引き上げることと、「完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止」「損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続」が実現した。一方、その他の6項目は見送られた。また、前日に日銀記者クラブで行われた舩曵真一郎協会長の会見内容を報告した。
22年度税制改正要望における、「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」では、自然災害の激甚化・頻発化の中において、風水災等による被害を補償する火災保険事業の持続可能性を守るため、火災保険等に係る異常危険準備金制度について、積立率を現行の6%から10%に引き上げること、「完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止」では、完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収を廃止すること、「損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続」では、既に収入金額を課税標準にしている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続することを要望していた。
これを受けて、12月10日に公表された与党税制改正大綱では、「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」に関しては、自然災害が多発傾向にあることも踏まえ、保険会社等の異常危険準備金制度について、火災保険および風水害保険に係る特例積立率を10%に引き上げるとした。また、特例積立率の対象となる保険種目の見直しを行い、火災と風水害が10%、貨物・運送・動産総合・建設工事は6%、賠償責任は2%の積立率になった。
「完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止」では、一定の内国法人が支払いを受ける配当等で、①完全子法人株式等(株式等保有割合100%)に該当する株式等に係る配当等②配当等の支払いに係る基準日において、当該内国法人が直接に保有する他の内国法人の株式等(当該内国法人が名義人として保有するものに限る。以下同じ)の発行済株式等の総数等に占める割合が、3分の1超である場合における、当該他の内国法人の株式等に係る配当等―の二つについては、所得税を課さないとし、その配当等に係る所得税の源泉徴収を行わないとした。また、これに伴う所要の措置を講ずるとした。
この他に要望していた「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」で洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引き上げ)、「国際課税ルールの改定における対応」「損害保険に係る消費税制上の課題解決に向けて」「確定拠出年金に係る税制上の措置」「地震保険料控除制度の充実」「受取配当等の二重課税の排除」の6項目は見送られた。
日銀記者クラブでの舩曵協会長の会見内容報告では、21年12月16日時点での自然災害における保険金の支払い状況として、「令和3年7月1日からの大雨」においては、事故受付件数が約9900件、支払保険金が約101億円、「令和3年8月11日からの大雨」は、事故受付件数が約2万8000件、支払保険金が約365億円になったとした。
会見ではこの他、「ぼうさいこくたい2021」への参画、高等学校での「生活におけるリスク」および損害保険の教育に関する調査結果、ぼうさい探検隊マップコンクール入選作品決定、高校生向け動画教材「明るい未来へTRY!~リスクと備え~」の授業展開例動画の公開、「中小企業に必要な保険」特設サイトの公開、2021年度ISJ一般コースの開催―について報告した。