2021.10.27 金融庁 保険会社向け監督指針改正案を公表、公的保険制度の情報提供を着眼点に
金融庁では10月15日、保険募集人による公的保険制度に関する情報提供を監督上の着眼点として明確化する「保険会社向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)を取りまとめ公表した。厚生労働省の年金の「見える化」の取り組みと連携することを予定しているもので、11月16日を締め切りとして意見を募集している。
金融庁では、「保険会社や保険募集人等が保険募集を行う際には、顧客の意向を把握し、意向に沿った保険契約の提案を行うことが重要」で、「今般、この点について、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑み、保険募集人等が公的保険制度について適切に理解をし、そのうえで、顧客に対して、公的保険制度等に関する適切な情報提供を行うことによって、顧客が自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を理解したうえでその意向に沿って保険契約の締結がなされることが図られているかという点などを監督上の着眼点として明確化する」としている。厚生労働省では、個々人の年金の「見える化」のための取り組みとして、公的年金の受取見込み額を簡易に試算できるウェブページについて2022年度の運用開始に向けて準備中で、「この監督指針改正案の趣旨を踏まえ、当庁としては同省との連携にも取り組んでいくことを予定しており、こうしたツールを活用することも考えられる」としている。
具体的な改正内容は、「保険会社向けの総合的な監督指針」については、「Ⅱ保険監督上の評価項目Ⅱ―4業務の適切性Ⅱ―4―2保険募集管理態勢Ⅱ―4―2―1適正な保険募集管理態勢の確立(4)特定保険募集人等(特定保険募集人及び損害保険会社の保険募集を専ら行う従業員をいう。)の教育・管理・指導」において、
「保険会社においては、保険募集に関する法令等の遵守、保険契約に関する知識、内部事務管理態勢の整備(顧客情報の適正な管理を含む。)等について、社内規則等に定めて、特定保険募集人の育成、資質の向上を図るための措置を講じるなど、適切な教育・管理・指導を行っているか。①特定保険募集人等の教育について―保険商品の特性に応じて、顧客が十分に理解できるよう、多様化した保険商品に関する十分な知識や保険契約に関する知識の付与及び適切な保険募集活動のための十分な教育を行っているか。」のあとに改行のうえ、
「また、公的保険を補完する民間保険の趣旨に鑑みて、公的保険制度に関する適切な理解を確保するための十分な教育を行っているか。」が新たに加えられた。
また、「Ⅱ―4―2―2保険契約の募集上の留意点(3)法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)①意向把握・確認の方法」において、
「意向把握・確認の方法については、顧客が、自らのライフプランや公的保険制度等を踏まえ、自らの抱えるリスクやそれに応じた保障の必要性を適切に理解しつつ、その意向に保険契約の内容が対応しているかどうかを判断したうえで保険契約を締結するよう図っているか。そのために、公的年金の受取試算額などの公的保険制度についての情報提供を適切に行うなど、取り扱う商品や募集形態を踏まえ、保険会社又は保険募集人の創意工夫による方法で行っているか。」と、傍線の部分が加えられている。
「少額短期保険業者向けの総合的な監督指針」の「Ⅱ少額短期保険業者の監督にあたっての評価項目Ⅱ―3業務の適切性Ⅱ―3―3保険募集管理態勢Ⅱ―3―3―1適正な保険募集管理態勢の確立(4)少額短期保険募集人の教育・管理・指導①少額短期保険募集人の教育について」と「Ⅱ―4―2―2保険契約の募集上の留意点(3)法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)①意向把握・確認の方法」および「金融サービス仲介業者向けの総合的な監督指針」の「Ⅵ監督上の評価項目と諸手続(保険媒介業務)Ⅵ―1業務の適切性Ⅵ―1―1保険媒介業務管理態勢Ⅵ―1―1―1適正な保険媒介業務管理態勢の確立(4)保険媒介人の教育・管理・指導①保険媒介人の教育について」と「Ⅵ―1―1―2保険契約の締結の媒介上の留意点(4)準用保険業法第294条の2関係(意向の把握・確認義務)① 意向把握・確認の方法」についても同様の改正案となっている。
■厚生労働省 年金の「見える化」ウェブサイト
昨年の通常国会で「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」(令和2年改正年金法)が成立した。この法律は、より多くの人がより長く多様な形で働く社会へと変化する中で、長期化する高齢期の経済基盤の充実を図るため、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大、在職中の年金受給の在り方の見直し、受給開始時期の選択肢の拡大などを行うもので、2022年4月以降、順次施行される予定となっている。
厚生労働省では、これらの改正内容は個人の年金受給の選択肢を拡大する内容であるため、国民に分かりやすい形で周知徹底することが重要であるとしており、具体的には、①短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大によってこれまで国民年金第1号被保険者であった人が厚生年金に加入する場合②受給開始時期について65歳から73歳に変更する場合―の受け取る年金額の変化を簡易にイメージできるようにする必要があるとしている。
また、従来、公的年金・私的年金を通じて、個々人の現在の状況と働き方・暮らし方の変化に伴う将来の見通しを全体として「見える化」し、老後の生活設計をより具体的にイメージできるようにするための仕組みを検討すべきとの指摘がなされてきたところから、①令和2年改正年金法を分かりやすく周知すること②働き方・暮らし方の変化に伴う年金額の変化を「見える化」すること―を目的として、「年金簡易試算Web(仮称)」(右上図参照)を開発し、22年4月に公開するとしている。
公開後は、「ねんきん定期便」や「社会保険適用拡大特設サイト」等と接続し、年金情報をわかりやすく発信する予定とのこと。