2021.08.03 損保協会 令和4年度税制改正要望を決定、重点要望項目に「異常危険準備金制度充実」
損保協会は7月15日、「令和4年度税制改正に関する要望」を発表した。要望項目は全8項目で、重点要望項目として「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」を挙げた。同協会は今回の重点要望項目で、自然災害の激甚化・頻発化の中において、風水災などによる被害を補償する火災保険事業の持続可能性を守るため、火災保険等に係る異常危険準備金制度について、①積立率を現行の6%から10%に引き上げること②洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引き上げ)―を求めた。
要望の中で損保協会は前年に引き続き、自然災害の激甚化・頻発化により国民生活が大きく脅かされていることや、2年続けて支払保険金合計が1兆円超に上ることなどを挙げ、保険金支払が増加したことで火災保険の収支は大幅な赤字が常態化し、巨大災害発生時のための備えである異常危険準備金残高も枯渇した状態となっていると指摘。火災保険事業の持続可能性を守るためには、収支の見直しに加え、同事業の安定的な運営を支える異常危険準備金残高の早期回復が必要不可欠だと強調した。
異常危険準備金の積立率については、少しずつ引き上げられ現在は6%(うち4%は経過措置)となっているが、激甚化・頻発化する自然災害に対応するためには、令和3年度で期限切れとなる経過措置部分を含んだ現行の6%では十分な残高が確保できない状況であり、火災保険事業の持続可能性を守るためにも、積立率を10%に引き上げることを要望するとした。
また、残高の上限となる洗替保証率についても、巨大自然災害が連続して発生するリスクの現実性に鑑みて、十分な備えを維持する観点からは、現行の30%(業界全体で約6000億円水準)では十分とはいえない状況にあるとし、40%への引き上げが必要だとした。積立率に関して、残高率が30%を超える場合には本則積立率(2%)が適用されることとなっているが、これについても同様に40%への引き上げを要望する。
今回の税制改正各要望項目の内容は次の通り。
1.火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実
①積立率を現行の6%から10%に引き上げること(経過措置は令和3年度で期限切れ)
②洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引上げ)
2.国際課税ルールの改定における対応
国際課税ルールの見直しが行われる場合には、損害保険ビジネスの特性を踏まえ、正当な経済活動を阻害することがないよう、十分に留意すること
3.損害保険に係る消費税制上の課題解決に向けて
税率の引上げに伴って拡大する、損害保険に係る消費税制上の課題(「税の累積」・「税の中立性の阻害」)を解消する抜本的な対策を検討すること
4.確定拠出年金に係る税制上の措置
確定拠出年金制度について、個人型年金および企業型年金の積立金を対象とした特別法人税を撤廃すること
5.地震保険料控除制度の充実
地震保険の更なる普及のため、保険料控除制度の充実策について検討すること
6.完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止
完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収を廃止すること
7.受取配当等の二重課税の排除
受取配当等益金不算入制度について、「二重課税の排除」の観点から議論を行うこと
8.損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続
既に収入金額を課税標準(100%外形標準課税)としている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続すること