2021.06.30 損保料率機構 火災保険参考純率を改定、10%強引上げ、最長5年に

 損害保険料率算出機構(損保料率機構)は、「損害保険料率算出団体に関する法律」(料団法)に基づき、金融庁に対し火災保険参考純率の変更に関する届出を5月21日付で行い、6月16日に料団法の規定に適合している旨の通知を受領したと発表した。住宅総合保険の参考純率を全国平均で10.9%引き上げるとともに、適用期間を最長10年から5年に短縮した。背景として、自然災害リスクの高まりによる支払保険金の増加、長期的なリスク評価の困難性、築年数の古い住宅の割合の増加に伴うリスクの高まりを挙げた。

 損保料率機構では火災保険の参考純率について、これまでの保険統計等に基づき、将来の保険金支払いに充てるために必要な保険料(純保険料率)を算出している。
 同機構では2019年10月に、17年度から18年度に発生した大規模な自然災害の影響を踏まえ、18年度までの保険統計に基づき、参考純率水準の見直し(自然災害の増加などを理由に平均で4.9%の引き上げ)を実施した。しかし、その後の19年度から20年度においても同様に大規模な自然災害が発生しており、自然災害のリスクが一層高まっていることから、再び保険料(純保険料率)の引き上げが必要な状況となっている。自然災害リスクの増加については、損保協会の調査によると、主な風水災の支払保険金(火災保険)は、17年度(2件)計1378億円、18年度(3件)計1兆3578億円、19年度(3件)計9150億円、20年度(2件)計1780億円と連続して高水準で推移している。
 こうした自然災害のリスクは、世界の平均気温が上昇し、気候変動の影響のリスクが高くなってきているところから、将来にわたり大きく変化していくと見込まれており、長期的なリスク評価が難しくなっている。そこで、火災保険の参考純率が適用できる期間(現行:最長10年)についても、これを最長5年とするように見直した。
 また、築年数が古い住宅は築年数の浅い住宅に比べ、電気・給排水設備などの老朽化による影響で、火災・水濡れリスクや台風・大雪などによる損壊リスクなど火災保険におけるリスクが総じて高い実態にあるが、近年は、住宅の全体に占める築年数の古い住宅の割合が増加しており、今後もその増加が見込まれることから、このようなリスク傾向を参考純率に反映することにした。
 損保料率機構が示した、保険金額を建物2000万円、家財1000万円とした場合の改定率の例によると、改定率の最大は+36.6%(沖縄県、H構造、築10年以上)、最小は▲13.8%(山口県、H構造、築5年未満)となっている。保険料が大幅に上昇する契約に対しては、契約者の負担軽減の観点から保険料の引き上げ幅を抑制する措置を講じている。