2021.02.16 日本代協 ゆうちょ銀の損保募集に反対意見、郵政民営化委で金子会長が意見陳述[2021年]
日本損害保険代理業協会(日本代協)では、ゆうちょ銀行による新規事業の認可申請のうち、損害保険募集業務の認可申請について郵政民営化委員会に対して反対趣旨の意見書を提出するとともに、2月4日に開催された第226回郵政民営化委員会に金子智明会長が出席し、同趣旨の意見陳述を行った。
ゆうちょ銀行は昨年12月23日、金融庁長官および総務大臣に対し、①ゆうちょ銀行の口座貸越による貸付業務に係る信用保証業務を行う子会社の保有②フラット35直接取扱等③損害保険募集業務―の3点にわたり認可申請を行った。
この中で損害保険募集業務については、「住宅の損害を補償する火災保険をはじめとした保険商品を取り扱うことにより、お客さまの安心な暮らしを支えることができるほか、お客さまが資金借入れにより建設又は購入した住宅が災害で損害を被った場合には、災害からの立ち直りを支援することができるため、損害保険代理店として保険募集業務を実施したい」とし、「フラット35直接取扱に係る住宅関連火災保険(付帯地震保険を含む)商品の手当てが新たに必要となり、当行でご加入を希望されるお客さまに対して、損害保険代理店として保険募集業務を実施したい」「損害保険代理店として、住宅関連火災保険(付帯地震保険を含む)の損害保険募集業務を所属損害保険会社との連携のもと行う予定」という趣旨で申請が行われた。
12月24日、金融庁長官と総務大臣は郵政民営化委員会に対して意見具申を求め、同委員会では、その調査審議の参考とするための意見募集を行っていた。
日本代協では、①官による民業圧迫で著しく公正性を欠く②代理業務が所属損保会社との連携のもとで行うことを前提とした二重構造―の2点を理由として反対表明し、認可された場合の予備的意見として2点の要望を加えている。
以下、日本代協の意見を掲載する。
1.意見
▽損害保険募集業務の認可申請に反対します。
〈上記理由〉
▽国が57%の株を保有する日本郵政が89%の株を保有する実質的な国策金融機関であるゆうちょ銀行が、国の資本力・信用力を武器に中小事業者が多くを占める損害保険代理店の収益の柱である主要な事業領域に参入することは、官による民業圧迫そのものであり、著しく公正性を欠くものであります。
従いまして、本件申請は、郵政民営化法第110条第5項にて認可の要件とされている「適正な競争関係」に反すると考えます。
弊会といたしましては、ゆうちょ銀行が民間事業者と同種の業務を行うのであれば、同行の日本郵政保有株を全株売却することが前提になると考えます。
▽認可申請の概要によれば、ゆうちょ銀行は損害保険代理店として顧客との間で行う代理業務を自己完結するわけではなく、所属損害保険会社との連携のもとで行うことを前提とした二重構造になっています。
一方で、認可申請理由には「お客さまの安心な暮らしを支える」、「災害からの立ち直りを支援する」とありますが、これは保険契約自体が有する経済的損失補てんという本来的価値を示しているだけであります。保険契約締結に際し、実際のお客さまニーズの丁寧なヒアリングや契約締結行為、契約後の内容変更等は、お客さまと保険会社との間で直接行われることを前提としており、さらには日頃のきめ細やかなお客さまへの対応や災害時の支援をゆうちょ銀行自体が行うわけでもなく、お客さま自身も必要があれば取引保険会社に直接連絡を取ることになるものと考えます。
このような中途半端な自己完結しないお客さま対応を前提としながら、本件申請を「安心な暮らしを支える」あるいは「災害からの立ち直りを支援する」と理由付けするのは極めて形式的であり、代理権を付与してまで行う必要性は乏しいと考えます。
また、こうしたいわば紹介人的な行為を前提としていながら、ゆうちょ銀行には代理店契約に基づく対価(代理店手数料)が支払われる一方、所属保険会社には本来代理店が自立して委託業務を行う場合は不要な社費が追加的に発生することになります。これは、火災保険料率算定の構成要素である付加率を上昇させる要因となり、最終的には保険料の引き上げにつながることで消費者利益を損なうため、本件認可申請の正当性を欠くものと考えます。
2.認可が強行された場合に対する予備的意見
▽監督当局において、以下2点の検証を行うよう要望いたします。
①上記記載の通り、火災保険料率算定上の健全性
に疑義がありますので、付加率(代理店手数料・社費)の妥当性の検証を要望します。 ②お客さまに提示される保険料の算出において、同一保険会社であっても既存の一般代理店では使用できない割引などを適用する等で、既存事業者との公平な競争環境を阻害することがないか検証を要望します。弊会としては、こうした割引の適用に反対します。