2021.01.19 ■生保協会 20年度スチュワードシップ活動、気候変動の情報開示取組強化[2020年12月17日]

 生命保険協会は昨年12月17日、スチュワードシップ活動ワーキング・グループの協働エンゲージメントの実施を決定した。20年度の協働エンゲージメントは上場企業171社(延べ178社)を対象に、「株主還元の充実」「ESG情報の開示充実」「気候変動の情報開示充実」―の三つのテーマで実施する。「気候変動の情報開示充実」では、新たに温室効果ガス排出量上位50社全社に送付対象を拡大し、取り組みを強化する。
 協働エンゲージメントの取り組みは2017年度から実施しており、対象企業との対話等を通じ、課題意識を具体的に説明することで、生命保険会社のスチュワードシップ活動の実効性向上を図っている。対象企業に対しては、ワーキング・グループに参加する生保会社11社の連名で課題意識を伝える書簡を送付、対面または電話でフォローアップしていく。
 参加する生保会社は、朝日生命、かんぽ生命、ジブラルタ生命、住友生命、第一生命、大樹生命、大同生命、太陽生命、日本生命、富国生命、明治安田生命の11社。
 「持続可能な社会の実現」のための「気候変動の情報開示充実」では、温室効果ガス排出量上位50社全社に送付対象を拡大し、①気候変動に伴う経営上のリスクと機会の定量・定性分析と開示②温室効果ガス排出量の削減の方向性打ち出し―を促し、脱炭素に向けた一層の取り組みと情報開示を後押しする。すでに対応している企業にも取り組み・開示のさらなる充実や高度化を要望していく。
 19年度は温室効果ガス排出量上位50社のうち、気候変動に関する情報開示方針等の必要な17社に文書を送付。新たに気候変動に伴う経営上のリスクと機会を開示した先は全体の約5割で、非開示先も全社で今後の開示に前向きな姿勢を確認しているという。
 同じく「持続可能な社会の実現」のための「ESG情報の開示充実」では、時価総額上位300社のうち、財務情報と非財務情報の統合的な開示を行っていない企業に対して、統合報告書の開示を要望する。対象は64社となる。
 本項目は18年度から実施しており、19年度は送付先の約2割(前年の約3倍)が統合報告書を新たに開示した。送付先の約3割(前年の約2倍)は統合報告書の開示はないが、ESG情報の開示を拡充。開示内容に改善がない先でも、そのうちの3分の2は統合報告書の作成に前向きな姿勢であることを確認しているという。成果があったところから、本年度もこの取り組みを継続する。
 「株式市場の活性化」のための「株主還元の充実」では、財務内容が健全で営業CFに対する投資CFの比率が低く、長期にわたり配当性向が30%未満の企業に対して、株主還元の向上(配当性向30%)を要望する。64社が対象となる。
 17年度から3年連続で実施しており、19年度はコロナ禍にもかかわらず前年度と同程度の約2割の企業が配当性向30%の基準をクリア、基準未達先の6割超が増配した。成果があったところから、本年度もこの取り組みを継続する。