2021.01.20 ■金融庁 第59回金融トラブル連絡調整協議会、苦情処理受付件数11%減少[2021年1月7日]

 金融庁は1月7日、東京都千代田区の中央合同庁舎で「第59回金融トラブル連絡調整協議会」を開催し、各指定紛争解決機関の2020年度上半期(4月1日~9月30日)の業務実施状況などを報告した。生保協会、損保協会、保険オンブズマン、日本少額短期保険協会(少短協会)、全国銀行協会、信託協会、日本貸金業協会など8機関の苦情処理手続き受付件数の合計は、前年同期比11%減の3189件、紛争解決手続受付件数は、同20%減の580件となった。この他、「金融ADR連絡協議会(第22~25回)」の概要や「金融サービス利用者相談室」における相談等の受付状況などの報告を行った。
 20年度上半期の8機関の苦情処理手続き受付件数は合計で3189件となり前年同期比11%減少した。保険業界で見ると、生保協会が同2%減の510件、損保協会が同5%減の1761件と減少した一方で、少短協会は44%増の39件となった。この他、保険オンブズマンは33%減の56件となった。
 苦情処理手続の終了事由別の内訳件数(当期の既済事件)を見ると、合計は3273件で、そのうち解決が2556件、移行が469件、不調が173件、その他が74件だった。
 苦情処理手続(不応諾および移送を除く)の所要期間(当期の既済事件)は、1カ月未満が1096件、1カ月以上3カ月未満が1080件、3カ月以上6カ月未満が619件、6カ月以上は478件で、全体の約8割が3カ月未満で終結している。
 紛争解決手続き受付件数は合計580件で、前年期比20%減少した。生保協会は同11%増の177件、損保協会は同6%減の204件、少短協会が150%増の15件、保険オンブズマンは13件で増減なしとなった。
 紛争解決手続の終了事由別の内訳件数(当期の既済事件)を見ると、和解成立では、生保協会が19件、損保協会が77件、保険オンブズマンが4件だった。特別調停成立では、生保協会が25件、少短協会が5件となった。全機関合計の成立(和解と特別調停の計)は232件、成立以外は295件で、全機関の合計が、527件、和解割合は44%となった。
 機関別の和解割合は、生保協会は147件の終結のうち44件が和解で30%、損保協会は185件の終結のうち77件が和解、割合は42%だった。保険オンブズマンは11件の終結のうち4件が和解、割合は36%、少短協会は、13件の終結のうち5件が和解、割合が65%だった。
 紛争解決手続(不応諾および移送を除く)の所要期間(当期の既済事件)は1カ月未満は8件、1カ月以上3カ月未満が82件、3カ月以上6カ月未満が235件、6カ月以上は202件となった。生保協会、損保協会とも3カ月以上6カ月未満が最も多い区分だった。
 「金融サービス利用者相談室」に寄せられた相談等の受付状況については、20年7月1日から9月30日までの受付件数は1万925件で、前期(20年4月1日~6月30日)の1万7361件に比べて6436件減と大幅に減少した。
 分野別では、預金・融資等に関する相談が4098件、保険商品に関する相談が1825件、投資商品に関する相談が2292件、貸金に関する相談が1287件、暗号資産(仮想通貨)に関する相談が480件、金融行政一般・その他が943件だった。
 この他、「相談・苦情等への的確な対応・手続に向けた取り組み」に関して8機関が報告した。 生保協会は、利用者や外部有識者の意見等を踏まえ利用者の立場に立った丁寧な対応を行うため「相談・苦情対応基準書」のさらなる整備を行う他、研修や日々のフィードバックを通じた取り組みを継続し、地方連絡所相談員への業務対応上必要な情報提供の一層の充実を図るとした。
 損保協会は、“お客さま”対応マニュアルなどの各種資料の適切な見直しと周知を通じて適正な対応が可能になるように努めている他、年度ごとに研修計画を定め相談対応の対応力向上を主眼に知識等の向上に取り組んでいる。また、スーパーバイザー(主任相談員)による事案ごとの指導や当センター本部の管理部門による日常的な指導を実施しているとした。
 保険オンブズマンは、保険種別約款解釈の文献や法律などを随時参照しながら、個別案件を受け付けた時点で事業者発行の約款や商品内容(パンフレット・重要事項説明書等)を把握・確認して、あらためて利用者の立場に立った分かりやすい説明を行う取り組みを進めているとした。
 少短協会は、常に利用者の置かれた状況や要望、心情を聞くなど聞き取りを行うことで、相談・苦情の原因や背景、経緯を正確に把握し、その上で解決に向けてのアドバイスを行うなど慎重な対応態勢を心掛けている。また、相談員によって対応にムラが出ないように、相談員同士で事案や対応方針等の共有を定期的に行っていることなどを報告した。