2020.11.27 ■生保協会 定例会見、「業界横断の契約照会制度」詳細決議[2020年11月20日]

 生保協会の根岸秋男協会長は11月20日、日銀記者クラブで定例会見を開き、同日付で開催された理事会で、以前から検討されていた「業界横断の契約照会制度」について、利用者負担額を含めた制度の詳細を決議したことを報告した。また、新型コロナウイルス感染症の対応についても報告し、10月末時点の合計で保険料払込猶予期間の延長を受け付けた契約が27万9000件、そのうち現在まで保険料の払い込みを猶予するといった特別取扱いを行っている契約が12万7000件に上ると説明。コロナ禍への対応として、同協会が実施する助成活動の拡充についても報告した。
 根岸協会長はまず、前回の理事会でも協議されていた「業界横断の契約照会制度」の詳細が承認されたことを報告した。
 同制度は、高齢化の進展によって、本人・家族等が保険契約を把握できない事案の増加が想定されることを踏まえて、災害時に限らず、平時においても確実に保険金請求が行われるための制度で、各種の要件・運用を平時利用と災害時利用で住み分ける形となっている。
 平時利用においては、契約者または被保険者が死亡しているケースと、認知判断能力が低下しているケースにおいて、家族等から生命保険契約の有無について照会を受け付ける方針で、照会者・協会・生保各社の連絡手段として、平時に利用できるインターネットサービスを利用した情報連携システム基盤の構築を予定している。
 2021年7月の制度運用開始を目標にしており、利用者負担については、証券保管振替機構の開示請求制度の手数料も参考にしつつ、新制度の利用件数想定年間約1万3000件をベースに、1件3000円程度に設定していく考えだ。
 続いて、新型コロナウイルス感染症の対応状況の直近の状況について説明し、10月末時点の合計で保険料払込猶予期間の延長を受け付けた契約が27万9000件、そのうち現在まで保険料の払い込みを猶予するといった特別取扱いを行っている契約が12万7000件、利息を減免した契約者貸付の契約が93万2000件、それに伴う貸付金額が5735億4000万円となったと説明。
 なお、保険金等の支払いについては、10月末時点の業界全体の合計で、死亡保険金が1308件で111億円、入院給付金は2万4304件で28億5000万円になったと報告した。
 月次で見ると、9月と10月の入院給付金が8月以前に比べて大幅に増加している点については、7月と8月に感染者数が増加し、この時期に入院した人への支払いが9月以降に行われたことが要因ではないか、との見方を示した。
 また、同協会では、新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえた社会貢献活動として、すでに昨事務年度中に3団体に対して合計10億円の寄付を行ったが、本事務年度においては例年実施している子育てと仕事の両立支援に関する助成活動の内容を拡充したことを報告した。
 具体的には、助成対象である保育所や放課後児童クラブなどで、新型コロナウイルス感染症の影響で衛生設備の購入や事業継続のための資金ニーズが想定されることから、助成金額を当初予定の2500万円から5000万円へと大幅な増額を決定した。
 本年度は過去最多となる全国212施設への助成を決定したと報告した根岸協会長は「昨事務年度が81施設1400万円の助成であったことに照らすと、本事務年度はこれまで以上にお役に立てたのではないかと思っている。引き続きお客さまと社会に寄り添った対応を継続できるよう努力してまいりたい」と語った。
 この他、新型コロナウイルス感染症については、足元の新規感染者数が顕著に増加していることから、あらためて感染防止に係る業界ガイドラインの順守をはじめとした感染防止策の徹底を業界全体で図る必要性を感じていると危機感をにじませ、同日開催された理事会の場でも注意喚起文書を会員各社に発信したことを明かした。
 最後に行われた質疑応答では、第一生命の元社員の金銭詐取問題について多くの質問が寄せられた。根岸協会長は個社の事案であることから協会長としてのコメントは差し控えるとした上で、営業職員の管理については、お客さま本位の業務運営の観点から取り組みを進めていくと強調した。