2020.11.23 ■JA共済連 自動車共済の仕組改訂へ、日常生活賠責特約など新設[2020年]
JA共済連は2021年1月1日から、自転車利用者に対する賠償責任保障への加入義務の動向に対応した日常生活賠償責任特約の新設や、認知症等により責任能力がない運転者が起こした事故の被害者への万全な保障提供を図ることを目的とした心神喪失等事故被害者保障特則の新設などを中心とした自動車共済の仕組改訂を実施する。
日常生活賠償責任特約は、日常生活に起因する事故(自転車事故等)や住宅に起因する事故により、被共済者が法律上の損害賠償責任を負担することで被る損害を保障するもの。自転車利用者に対する賠償責任保障への加入義務化が全国的に進展しているため、日常生活における賠償責任リスクが今まで以上に顕在化しているところから新設するもので、保障の対象となる事故例として、▽管理不備により、住宅のブロック塀が倒壊し、歩行者を負傷させた場合▽自転車で走行中に歩行者に衝突してしまい、負傷させた場合▽買い物中に誤って商品を壊してしまった場合▽線路内に侵入した認知症患者(被共済者)の身柄確保のために鉄道会社が電車を一時運休にした場合―などが示されている。被共済者の範囲は、①記名被共済者②配偶者③同居の親族④別居の未婚の子⑤監督義務者等―となる。共済掛金は共済期間1年、一時払の場合、1890円。
また、心神喪失等事故被害者保障特則は、認知症等により責任能力がない運転者が起こした事故の被害者に万全な保障提供を図ることを目的とするもの。高齢ドライバーの増加に伴って認知症や加齢により認知機能が低下している運転者が起こした事故について社会的関心が高まっているが、現行の自動車共済では、認知症等により責任能力がない運転者が起こした事故について、民法第713条に基づきその本人に法律上の損害賠償責任が生じない場合は、監督義務者に法律上の損害賠償責任がある場合を除き、被害者は誰からも保障を受けることができなかった。このため、責任能力がない運転者による自動車事故で救済できない被害者の発生防止を目的に、運転者が認知症等により責任能力がないと認められたために損害賠償責任を負わなかった場合に、被害者等に生じた損害に対し共済金を支払う心神喪失等事故被害者保障特則を新設するもの。これにより、被害者が誰にも損害賠償責任を問えない自動車事故についても、被害者の救済を図る。
今回の自動車共済の仕組改訂では、そのほか、自賠責適用除外車対人賠償特約の新設と人身傷害保障条項の損害額基準等の変更も実施する。
自賠責適用除外車対人賠償特約は、農業用自動車(農業用小型特殊自動車・農耕作業用大型特殊自動車)等を道路上で使用することがない構内専用車として使用する場合、構内専用車が自賠責共済契約等に未加入の場合であっても、自賠責共済契約等から支払われるべき金額を差し引かずに対人賠償責任条項により保障するもの。この特約を付加する場合、被共済自動車(構内専用車として使用している農業用自動車等)が自賠責共済契約等に未加入であっても自動車共済へ加入できるようになる。
人身傷害保障条項の損害額基準等の変更は、自動車損害賠償保障法に基づき定められる「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」が、物価水準の変動や近年の共済金等の支払実態等を反映し、20年4月に改正されたことを受け、人身傷害保障条項の損害額基準について、自賠責支払基準の改正の考え方に準じた見直しを行うもの。