2020.08.21 ■東京海上HD 20年度第1四半期決算 正味収保は0.7%の増収を確保[2020年8月7日]

 東京海上ホールディングスが8月7日に発表した2020年度第1四半期決算によると、連結経常収益は前年同期比1・4%増の1兆4138億円となった。正味収入保険料は、新型コロナウイルスの影響を受けたものの、国内外での着実な成長やレートアップ等により、同0・7%増(為替影響を除くと同8・3%増)の9117億円となり増収を確保した。連結経常利益は同6・9%減の1397億円。親会社株主に帰属する四半期純利益は134億円減益の992億円となったが、新型コロナウイルスの影響を除くと、海外保険で年初から見込んでいた資産運用損益の減少があるものの、東京海上日動の大口・中規模事故の減少等により、同159億円の増益となる。修正純利益も同66億円減益の1410億円だったが、やはり新型コロナウイルスの影響を除くと同222億円の増益となる。

 グループの正味収入保険料は、国内損保は新型コロナウイルスの影響や自賠責保険の減収があったものの、自動車・火災保険の料率改定効果や補償拡充、新種保険の拡大等でカバーし増収。海外保険は円高進行や収益性を重視した引き受けによる減収を、各事業における成長施策の実行やレートアップ等でカバーし増収となった。生命保険料は、国内での新型コロナウイルス感染防止の観点での対面販売自粛の影響等により同5・1%減(為替影響を除くと3・8%減)の減収だった。
 東京海上日動の保険引受利益は前年同期比で459億円増加し746億円だった。料率改定効果で自動車・火災保険を中心に正味収入保険料が増収したほか、事故頻度低下により自動車保険を中心に発生保険金が減少した。
 正味収入保険料は、同0・3%増の5709億円と前年同期実績を上回った。家計地震・自賠責を除いた民保合計では同1・1%増の5097億円。種目別では、火災は自然災害発生に備えた補償拡充・加入ニーズの高まりや19年10月の料率改定効果等により家計・企業分野ともに増収し同3・7%増の745億円、海上は船舶、貨物ともに増収し同8・3%増の181億円、傷害は新型コロナウイルスに伴う旅行保険の減収により同8・4%減の541億円、自動車は新型コロナウイルスの影響で新車販売台数が減少したものの、20年1月の料率改定効果等により増収し同1・5%増の2765億円、自賠責は満期到来台数の減少により同5・7%減の609億円、その他は賠償責任保険等における大口契約等により同3・0%増の864億円だった。
 発生保険金(民保ベース、損害調査費含む)は新型コロナウイルスの影響による減少を主因として同13・5%減の2232億円。E/I損害率は同8・5ポイント低下の46・2%。事業費率は手数料率が上昇した一方、社費率は低下したため、前年同期比横ばいの31・4%。コンバインド・レシオ(民保E/Iベース)は同8・5ポイント低下し77・5%となった。
 資産運用等損益は、新型コロナウイルスの影響による政策株式の配当金の減少を主因に、同13億円減益の684億円。

 経常利益は同451億円増の1457億円、四半期純利益は同308億円増の1100億円、単体ソルベンシー・マージン比率は前年度末比41・0ポイント上昇し856・2%となった。
 日新火災の保険引受利益は、前年同期比で29億円増益の46億円だった。火災保険で新規契約の減少と出再保険料の増加があったものの、新型コロナウイルスに伴う外出自粛による自動車事故頻度の減少により発生保険金が減少したほか、火災保険のW/P損害率上昇による異常危険準備金の取り崩しの発生により増益となった。
 資産運用等損益は、政策株式の売却額の増加による有価証券売却益の増加を主因に、同4億円増益の6億円。経常利益は同35億円増益の47億円、四半期純利益は同24億円増益の33億円となった。
 東京海上日動あんしん生命の新契約年換算保険料は、新型コロナウイルス感染防止の対面販売自粛の影響により、前年同期比21・5%減の66億円となった。保有契約年換算保険料は、事業保険で新契約による増加が解約等の減少を下回った結果、同2・4%減の8289億円となった。四半期純利益は、前年同期のシステム開発費増加の反動等による事業費の減少や為替ヘッジコストの減少等によるキャピタル損益の改善により、同47億円増益の84億円。経常利益は、同79億円増益の119億円となった。基礎利益は、同66億円増益の142億円となった。単体ソルベンシー・マージン比率は、前年度末比68・4ポイント上昇し、1584・7%となった。
 海外保険事業の正味収入保険料は、前年同期比3・9%減の4226億円だった。為替の影響を除くと同1・6%の増収となっている。このうち北米は同3・0%増の2907億円、欧州・中東・アフリカは同17・4%減の354億円、中南米は同20・6%減の272億円、アジア・オセアニアは同3・0%減の457億円だった。
 事業別利益は、新型コロナウイルスの影響(▲418億円)を主因として、83・5%減益の90億円となった。コロナの影響▲418億円のうち、保険引受にかかる影響は▲50億円、資産運用にかかる影響は▲367億円だった。
 このうち北米は、自然災害に係る発生保険金の減少があった一方で、新型コロナウイルスの影響(▲300億円)や年初から見込んでいた資産運用損益の減少(▲39億円)を主因として減益。欧州・中東・アフリカは、欧州で為替換算損益の改善があった一方で、新型コロナウイルスの影響(▲33億円)により減益。中南米は、ブラジルで好調だった前年同期対比で損害率が上昇したことを主因として減益。アジア・オセアニアは、タイでの自動車保険の収益改善等により増益だった。生保は新型コロナウイルスの影響による経済環境変動(▲73億円) を主因として減益。Pureは新規連結(期中連結のため対象期間分を算入)により増益となった。
 20年度のグループの通期業績予想については、修正純利益は、新型コロナウイルスの影響を除いた実力ベースで4100億円のところ、同ウイルスの影響を▲1000億円と見積もり、結果として前期比8%(233億円)増益の3100億円と予想した。修正ROEは同1・2ポイント増の9・4%を見込む。事業別利益は、国内損保事業が1350億円(19年度実績259億円)、国内生保事業が1640億円(同▲703億円)、海外保険事業が670億円(同1795億円)、金融・一般事業が50億円(同53億円)と予想した。
 なお、東京海上ホールディングスは同日、20年3月期決算発表時に新型コロナウイルスの影響を合理的に算定することが困難なことを理由に未定としていた21年3月期の連結業績予想について公表し、経常利益2650億円(19年度実績3639億円)、親会社株主に帰属する当期純利益1750億円(同2597億円)、1株当たり当期純利益250円69銭(同369円74銭)との予想を示した。