202.07.30 ■損保協会 21年度税制改正要望を決定、火災保険の異常危険準備金制度の充実など[2020年7月16日]

 損保協会は7月16日、「令和3年度税制改正に関する要望」を発表した。全9項目にわたり、そのうち火災保険の異常危険準備金制度の充実など8項目は前年度と同様のもの。また、破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置の適用期限が切れるところから恒久化の要望が盛り込まれた。

 「要望」では、地球規模での異常気象による自然災害が世界各地で頻発、日本でも自然災害の激甚化により国民生活が大きく脅かされ、一昨年の台風21号、24号および平成30年7月豪雨による支払保険金合計が1兆5000億円を超え、昨年も、台風15号、台風19号による支払保険金合計が1兆円超に上ったことを指摘、生活再建の一助となる損害保険の重要性がますます高まっている一方で、損保会社が平時に積み立ててきた異常危険準備金が大幅に取り崩され残高がすでに枯渇した状態となっていることを訴え、「今後も損害保険会社が、巨大自然災害にあっても確実に保険金をお支払いするという社会的使命を全うするためには、異常危険準備金の残高を早期に回復させていく必要があると考えている」としている。
 また、日本の損保会社が、リスクの地理的分散、事業の多角化を目的としてグローバルな事業展開を進めている中で、経済協力開発機構(OECD)による「BEPS(税源浸食と利益移転)報告書」に基づき国際的な租税回避を防止するための法整備が進められ、平成31年度税制改正で過大支払利子税制の新たな枠組みが定められたが、「制度の詳細については、経済実態を踏まえた十分な議論を行い、所要の手当てが行われるべきと考えている」としている。
 また、昨年10月の消費税率10%への引き上げに関し、「保険料が非課税である損害保険では、『税の累積』や『税の中立性の阻害』等の課題が、税率引上げに伴って拡大していくことが懸念される。これらの課題を解消する対策の検討を進めていくことも必要であると考える」としている。
 今回の税制改正各要望項目の内容は次の通り。
 ①火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実:火災保険等に係る異常危険準備金制度について、洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引き上げ)
 ②国際課税ルールの改定における対応:国際課税ルールの改定においては、損害保険ビジネスの実態を踏まえた手当てを行うこと
 ▽過大支払利子税制における保険負債利子の取り扱いについて、過度な事務負担とならないよう所要の手当てを行うこと
 ▽その他の国際課税ルールの見直しが行われる場合には、損害保険ビジネスの特性を踏まえ、正当な経済活動を阻害することがないよう、十分に留意すること
 ③損害保険に係る消費税制上の課題解決に向けて:税率の引き上げに伴って拡大する、損害保険に係る消費税制上の課題(「税の累積」「税の中立性の阻害」)を解消する抜本的な対策を検討すること
 ④破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置の恒久化:契約者保護の観点から、破綻処理の一環である協定銀行制度が機能するよう、破綻保険会社から協定銀行への資産移転に係る不動産取得税の非課税措置を恒久化すること(非課税措置は2020年度で期限切れとなる)
 ⑤確定拠出年金に係る税制上の措置:確定拠出年金制度について、個人型年金および企業型年金の積立金を対象とした特別法人税を撤廃すること
 ⑥地震保険料控除制度の充実:地震保険のさらなる普及のため、保険料控除制度の充実策について検討すること
 ⑦完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収の廃止:完全支配関係のある会社への配当金に対する源泉徴収を廃止すること
 ⑧受取配当等の二重課税の排除:受取配当等益金不算入制度について、「二重課税の排除」の観点から議論を行うこと
 ⑨損害保険業に係る法人事業税の現行課税方式の継続:既に収入金額を課税標準(100%外形標準課税)としている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続すること