2020.06.25 ■第一生命HD 第10期定時株主総会、QОL向上への貢献目指す[2020年6月22日]
第一生命ホールディングスは6月22日、東京都港区のThe Okura Tоkyо オークラプレステージタワーで「第10期定時株主総会」を開催した。総会では、2019年度事業報告などの報告事項の他、決議事項として余剰金の処分、取締役11人選任の件などの4議案を審議し承認された。稲垣精二社長は、新型コロナウイルスへの対応状況や成長戦略について説明した上で、「新たな価値創造として、顧客のQОL向上へ貢献していく。人にしかできない高品質なコンサルティングと柔軟な対応力と、デジタルとの融合による直接の対面にこだわらない価値提供を行い、『一生涯のパートナー』を目指す」との方針を示した。
稲垣社長は、2010年4月の株式会社化と上場の目的について触れ、最も支持される生命保険会社の実現には、持続的な成長が不可欠なことから、より柔軟な経営戦略を取ることができる株式会社に変更することで、透明性の高い経営を行うことが必要だったと振り返った。
その際、同社に関わるさまざまな「人」のことを真剣に考えるという思いを込め、グループビジョンとして、「いちばん、人を考える会社になる」を宣言。現在では、日本を含め9カ国で事業展開し、14社7万人の生命保険グループに成長したと説明した。
引き続き、上場以降の10年間の業績推移と19年の計数目標の達成状況について説明した。株主還元の原資となるグループ修正利益は、前年度比16・2%増の2745億円となったものの、3月の急激な金融市場変動に伴う第一生命の金融派生商品損益の一時的な上振れを控除した2500億円程度が実質的な利益水準だとした。
一方で、親会社株主に帰属する連結当期純利益は、主に市場環境の変化によって、同85・6%減の324億円と大幅減益となった。国内外の金利低下による第一フロンティア生命における責任準備金の繰入負担拡大やジャナス・ヘンダーソングループの株価下落を受けたのれんの償却を反映したことが要因とした。
新契約の成立時点の価値を表すグループ新契約価値は、第一フロンティア生命における新契約価値の計算に金利低下が過度に反映されたことを要因に、同23・9%減の1503億円で、約470億円減少した。
保険会社の企業価値を表すグループEEVは、第一生命の有価証券含み益の減少等により、同5・3%減の5兆6219億円となったが、上場時点に比べて2倍以上に増加した。また、グループEEVの成長率を示すROEVの平均は8・9%となった。
財務健全性を表す経済価値ベースの資本充足率(ESR)は178%で、国際的な資本基準を参考にした新基準でも195%となり、共に中長期的に目指す水準を維持していると説明した。今後の金利・株式リスク量については、23年度末までに19年度末比20%程度削減する取り組みを強化することにより、金融市場変動の影響をさらに受けにくい財務基盤の確立を目指すとした。
総還元性向40%をめどとする19年度の総還元額は、約1000億円を想定しており、1株当たりの株主配当金額は、前期比で4円増配の62円とし、約700億円の株主配当を実施するとした。
稲垣社長は、生命寿命が延伸する中でのQOL向上の実現には、お金・健康・つながりの三つの人生資産をバランスよく、充実させる必要があるとの考えを示した。
世帯金融残高の上昇や、健康状態が良いこと、頼れる人数の多寡が満足度向上につながるとし、「こうした生活の満足度に結び付く人生資産を豊かにする価値の提供を事業を通じて行うことで、QOL向上への貢献を目指す」と語った。
その具体的な取り組みとして、①中心となる提供価値である保障の提供②貯蓄性商品による資産形成機能の提供③保険・サービスによる健康増進機能の提供④全国展開のネットワークや提携パートナーによる「つながり・絆」の創出―の四つを挙げた。
①では、幅広い世代の多様なニーズに応える商品を展開し、高齢層向けに認知症保険を、若年層向けに就業不能保険を販売し、それぞれ累計販売件数は20万件を超えた。また、ビッグデータを活用し引受範囲を拡大したことで、累計9・4万件の顧客への保障提供を可能にした。②では、資産寿命の延伸に貢献する貯蓄型商品を拡大し、貯蓄性保険の保有件数は160・7万件となった。③では、健康診断割引による健康増進と重症化予防への貢献に取り組み、健康診断割引付加契約件数は累計97・4万件となった。④については、全国展開の強みを生かして、都道府県とパートナーシップを結び、地域ごとの課題解決に向けた取り組みを実施し、自治体などと連携した健康セミナーの参加者は、延べ3万5000人に達した。
稲垣社長は、「ライフスタイルの多様化や人生100年時代といった環境下で、四つの価値の提供を通じて社会課題解決に貢献し、持続的な成長につなげていく」と強調した。一方で、多様化する四つの価値への対応には、高品質なコンサルティングが必要だとし、生涯設計デザイナーや代理店といった「人」が担うさまざまなチャネルによって、パーソナルな提案ができることが同社の強みだとした。
また、デジタルチャネルを通じて非対面のコミュニケーションの定着が進んでいることから、リアルをデジタルで補強することも重要だとし、同社では、リアルチャネルを通じたAIによる助言をベースにした最適な提案を行う取り組みを進めているとした。
さらに、デジタル化が進展しても、「人」にしかできない高品質なコンサルティングや柔軟な対応の価値は変わらず、価値観や生き方の多様化によって、より「人」の力が求められるとの見解を示し、「デジタルとの融合を最大限に生かし、直接の対面にこだわることなく、人にしかできない価値を提供していく」との考えを示した。
最後に、「こうしたことを踏まえ、万一の時だけに頼られる保険会社ではなく、常に顧客と伴走する存在となる『一生涯のパートナー』を実現していく」とした。